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史緒里の裏切り
史緒里は死に物狂いで走った。一つ目の角を右に曲がると、一目散に自宅に向かう。チラリと後ろを振り返ると追いかけて来る者はいない。史緒里は走るのを止めて、息を整えた。
「はあはあはあ・・・・。」
恐怖から解放されても暫くの間、心臓は早鐘を打つのを止めなかった。どうやら美波の言った通り、バラバラに逃げた事が功を奏した様だった。2人は大丈夫だろうか。美波は自分より先行して走っていた訳だから自分が逃げ切れたという事は、美波も大丈夫だという事だ。美月は?史緒里は逃げるのに必死で美月が自分らを逃がすために男達を牽制して捕まったなどと知る由もない。きっと上手く逃げたのだろうと楽観的に考えた。いや、考えたかった。
「おい。」
その時だ。背後から声を掛けられ、右肩をポンと叩かれたのは。
「きゃあ~~~~。」
史緒里は悲鳴を上げて、その場に蹲った。
「な、なんだ。どうした。」
恐る恐る振り返ると、そこに居たのは会社帰りの父親であった。
「お父さん・・・・脅かさないでよ・・・。」
「な、なんだ。それはこっちのセリフだ。何か遭ったのか?でかい声を出して。」
史緒里は暫し考え込んだ後に、言った。
「別に何もないよ。ただ、いきなり声を掛けられてビックリしただけ。」
史緒里は帰り道での出来事を何も話さず、父と一緒に帰路に着いた。




