決心
美月は吹っ切れた気持ちで体育館に向かった。既に皆はネットを挟んでシャトルを打ち合っている。美月の姿を見つけた同じバト部の同級生。史緒里と美波が駆け寄って来た。
「美月、どうなった?」
史緒里が心配そうな表情で訊ねた。
「うん。受けることにした。」
あっけらかんと答える美月に、2人は仰天した。
「えっ、強化指定受けることにしたの?」
「うん。」
「それ、拙いって、美月。」
「どうして?」
美月の疑問に史緒里が声を潜める。
「だって、白石先輩は自分が選ばれる筈だって絶対に思ってるよ。それなのに、美月が選ばれたら面白くないって。」
「そうだよ。辞退して来なって。」
美波も同調した。だが、美月の決意は固かった。
「だけど、選ばれたのは私だから。白石先輩は関係ないでしょ。」
「美月・・・・。」
怖気づく2人に美月は宣言する。
「ダルマ先生が私の事を強化指定に推薦してくれたんだって。約束したんだ。これからは私がバト部を背中で引っ張るって。」
白石の事を何とも思っていないような剛毅な美月に史緒里と美波は顔を引き攣らせた。
「さあ、練習練習。」
美月はストレッチで体を解し始める。史緒里がふと体育館の中央に目をやると、白石と目が合った。白石の制すような目線に史緒里は慌てて目線を逸らせる。
「ちょっと、美月。ヤバいって。」
史緒里はストレッチを手伝うフリをしながら、耳打ちした。
「何が?」
「白石先輩が睨んでいるよ。」
美月は白石の方を見た。視線がぶつかる。美月は何事も無いかのようにニコリと微笑んで会釈した。史緒里は息を詰めながら、どうなる事かと白石の反応を見守る。・・・・‥‥何も起きない。怒鳴る訳でも無く、詰め寄って来る訳でも無い。こちらにやっていた目線を外すと、ネットを挟んでシャトルを打ち始める。史緒里は緊張から解き放たれ、深く息を付いた。
「ふ~~~~~、。怖い。美月、腹が据わり過ぎ。」
「別に何も言われないよ。白石先輩もそこは分かっているよ。」
美月はあくまでも鷹揚だ。
「でも、白石先輩が何も言わなかったとしても、取り巻きの子たちが黙ってないよ。みんなからシカトされたらどうするの?」
「そうだよ。もう一度ダルマの所へ行って、強化指定を辞退して来なって。」
美月を心配してか、史緒里は不安を口にし、美波は辞退を促す。
「別にシカトするならしても良いよ。そういう人とは私も仲良くする気ないから。関わりたくない人からシカトされても、ああそうですかって感じ。」
「美月~~~。」
史緒里は心細そうに名前を呼んだ。だが、美月は翻意しない。
「私は期待されて強化指定に選ばれた。その期待に応えたい。だから精一杯、出来る限りの事をする。それだけ。外野は関係ない。」
美月はそう言うと、白石の方を臆せずに真っすぐ見つめる。白石もその目線に気付き、目線を返す。二人は見つめ合った。だが、美月は白石の目線が自分の後方に送られている様な感覚を覚えた。振り返ると、そこには美波が。ん?白石は何故か自分ではなく、美波に目線を送っている?もう一度、白石の方を振り向くと、白石はこちらを無視し、シャトルを打ち返していた。




