虫の知らせ
早紀江はふと、まな板から顔を上げた。壁にかかっている時計を見ると、既に夜の7時を回っている。
「お母さん、お腹空いたよ。」
台所の早紀江の元に美月にとって双子の弟、拓也と哲也がやってきた。いつもならとっくに食事を済ませている時間だったが、今日は美月の帰りが遅いために待たされているのだ。
「美月ちゃん何時に帰って来るの?」
拓也が早紀江の足元に甘えたように纏わり付いてくる。
「そうね。美月ちゃん今日は遅いね。」
時刻は7時30分を越えようとしていた。いつもならどんなに遅くとも6時30分には家に帰って来ていた。帰りにどこかに寄り道するとも聞いてはいない。早紀江は胸に閊えるような不安感が募って来るのを感じた。
「ちょっと学校に連絡してみようかしら・・・・・・。」
もしかしたら友達の家に寄り道しているのかも知れない。それとも練習に熱が入って帰りが遅くなっているだけかも・・・・・。そうは思っても何故か不安感が拭えない。だが、電話して大騒ぎした挙句に、何でもありませんでしたという事は避けたい。早紀江は取りあえず中学校に美月を迎えに行くという選択をした。
「拓也、哲也、お母さんは美月ちゃんを迎えに行くから、ご飯を先に食べていて。絶対に外に出ては駄目よ。」
「うん。分かった。」
こんな時間に子供2人だけを残して外出するのは気が引けたが、何か嫌な予感がする。一刻も早く中学校に行って、美月の無事を確認したい。幼い子供2人を連れて行くのは、正直足手纏いだったのだ。早紀江は絶対に外に出ない様に子供たちに念押しすると、コートを羽織り、足早に家を出た。




