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第二章 瑕と闇に負けぬ者よ、光を抱いて強くあれ

お待たせしました!第二章、開幕!

あの日あの時、私は過ちを犯した。


取り返しのつかない大罪、それは名家である戦蝶院家の名に泥を塗り今でも汚し続けている。


あれは事故だった、そう言い訳するのは私だけ。


お姉ちゃんを傷つけ、自分も碌に戦えなくなった。


名家の役目も果たせず実家から逃げ新しい学校生活を送るが私は変わらない。


主人の敵を倒せないカルノクスなんてこの世に存在してはいけない。あってはならない。私のこの黒い手には何の価値も無い。ただ触れるものを傷つける役立たずの腕だ。


ああ、どうすればいいんだろう。


生まれながらに用意された道を歩けない人は用意したものにとって価値の無い者だろう。


私は・・・強くなければならない。


しかし、何の為に?


もう、そんな目標は無くなってしまった。



第二章 瑕(きず)と闇に負けぬ者よ、光を抱いて強くあれ


4月13日 月曜日


教会の懺悔室で訝しむ様な声が聞こえた。


 「えーっとつまり、ここまでの話をまとめるとクリカラとかいう剣を抜いたお前は皇グループの社長令嬢、皇舞桜と恋人にならないと世界が滅びる事を知って告白するがフラれて、魔物とか魔獣とか魔神とかが襲いかかってくる様になったのをクリカラでばっさばっさ切り払ってきたと」


 「ええ、そうよ」


 「ここ、妄想小説の内容を発表する場所じゃないんだけど」


 「事実よっ!」


皇さんからの告白が返ってきたその日の放課後、誰かにここまでの事を話したかったが事が事だけに大っぴらには話せない内容なのでどうしたものかと思っていたところに教会にいるデュランさんを思い出した。


私が初めて女神に会った時に対応してくれた不真面目シスターだ。その人が困った事があるならいつでも来いと言っていたのでそれに甘え、懺悔室を使わせてもらった。


懺悔室で話した内容は、誰かに言ってはいけない決まり。


デュランさんは不真面目ではあるがそこら辺は守るらしい、寝転びながらタバコを吸ってたのに。


 「んで?もう終わりか?もう少しなんか話してくれ。もう一本吸うから」


目の前に未成年のか弱い少女がいるというのにお構い無しにタバコに火をつけ、煙を狭い懺悔室の中に充満させた。


てか、外から見たら懺悔室から煙が出るの見えるよね?


ここの教会、人少ないから人のいないタイミングを熟知して吸っているのだろうか。


あと、臭い。パパもママもタバコは吸わないからこの臭いには慣れる気がしない。


ウィンプルから垂れる赤い髪が薄暗い懺悔室でタバコの灯りを受けて光る。オーガであるデュランさんのおでこには太い一本角が生えていた。


 「信じてないなこの人・・・今日の朝のニュースありましたよね?行方不明者が見つかったってやつ。あれ私が倒した魔獣から出てきたんですよ」


 「へー」


 「興味なさそー・・・まあ、他の誰かに話したくてここに来ただけですから別にいいですけど」


 「お前の妄想小説はそこそこ良かったが、女神の声が聞こえるからってあまり調子に乗るなよ?絶対後悔するから。技名とか考えだしたらもうアウトだ」


 「厨二病じゃないです!!!」


壊滅の一撃の事があったので少しビクッとした。


 「ならいいけどよ。そうだ、お前数日は夜出歩くなよ」


私の話にあまり興味のなさそうだったデュランさんは話題を変えてきた。その目は割と真剣でさっきまでの適当にあしらう様子ではなかった。


 「え?なんでですか?」


 「ここ最近、不良どもが龍昌市に集まってるんだよ。何企んでるかは知らんが夜になんかしてるらしい。絡まれたくなかったら夜は出るなよ。そんな華奢な体で人間だろ?ボコされたくなかったら家に居ろよ」


 「はーいそうしまーす!」


本当は不良どもをボコボコにする側なのだが、久しぶりにされたか弱い女の子扱いに嬉しくなってついのってしまった。


しかし、心当たりはある。あの不良ども、ガブリエルだかメタトロンだったっけ?アイツらやられてから仲間を集めて挑んでくるのがやけに早かったしなんか二つの不良グループが合体してたわよね?


うーん、まあ、私に何か関わりがあるとは思えないし夜に出歩く用事もない。


関わることはないでしょう、うんうん、そうに違いない。


 「ま、今日は帰りな。その妄想の話はサボりたい時に聞いてやる」


いつでも、と言わないあたりが不真面目シスターね。


でも、吐き出せてスッキリしたし今日はもう帰りましょう。


・・・勇者も教会とかでセーブしてたけどその度に神父さんに愚痴ってたのかな?



懺悔室を出ると教会の長椅子に座り女神像に祈りを捧げているカレンの姿があった。


美しいステンドグラスに神々しい女神像、そこに金の髪が美しい綺麗なエルフが組み合わされば100点満点の光景ね。


 「カレン、お待たせ」


私が声をかけるとカレンはこちらに気づいて祈りをやめた。


 「もういいの?」


 「うん、大丈夫。ごめんね、急に教会に行きたいなんて言って」


 「大丈夫だよ、久しぶりに女神様にお祈りできたし」


月僧カレン、私の友達で・・・恋人である。


カレンと出会ってまだ一週間だが、色々あって・・・本当に色々あって恋人になった。見た目は清楚だが私に催眠薬を飲ませ監禁した前科がある。


でも、様々な知識を持っており見せてもらった薬の効果と弓の腕前はかなりのものでカレンには助けてもらってばかりである。


そんなカレンだが私と共に世界を救う為に協力してくれる事になった仲間でありこれからクリカラが何やら話があるので一緒に私の家に行くところだった。


私は一週間前、声に呼ばれクリカラを引き抜いたことで自分の使命を知った。それは皇グループの令嬢である皇舞桜と恋仲にならないと世界が滅びるというもの。


前世での私達、勇者と魔王が約束の魔法により来世で巡り合う事を条件に恋人にならないと世界が滅亡するというデメリットを受け入れた。


そして、そのデメリットを受ける勇者の来世が私、蓮護優理である。


私は青春がしたいのに前世の因縁が何かと絡みついてくる。


昨日の夜、その因縁っぽい奴を葬ったがあの様子じゃどれだけいることやら。


皇さんと恋人になって世界滅亡を回避しながら魔獣やら魔物やらを斬りつつ青春を送る・・・はぁ、誰よ私の青春の難易度をルナティクにしたやつは。


***


 「それで?一体どんな話を聞かせてくれるわけ?」


昨日の夜、お風呂に入っていた時プランを練ると言っていたがそれを話してくれる様だ。


リビングにある机の上にはお菓子と紅茶を用意した。


カレンと隣り合って座るとクリカラが対面に座った、まあ、剣だから座るっていうか置かれているといった表現が正しいのかもしれない。


 「うむ、その前にこれから話す内容は決して口外しない様にしてくれ」


 「そもそも、勇者とか魔王とかの話をされても普通の人は信じないわよ」


さっきのデュランさんがそのいい例だ。仮に私がその話をされたとしてもああ、そういう時期なんだな・・・で流すだろうし。


 「普通ではない奴もいるという事だ。魔王を倒した後我の持っていた力を執拗に狙ってくる奴らがいた、もしかするとその組織がまだ残っておりお主はに危害を与えるかもしれん」


まさか、と口に出そうとした時カレンが手を上げた。


 「勇者と魔王のお話って数千年も前なんですよね?もういないと思いますけど・・・」


 「いや、用心するに越した事は無い。何かあってからでは遅いからな」


 「ふーん、それで?一体何をするの?」


 「結論から言うなら我の力を取り戻しに行く」


我の力、クリカラには壊れないとか斬るものを選べるとか魔力によって形を変えられるとか色々な能力があるけどその中に分断という力がある。薬の効果を切り離したり呪いを本体から分断させるなど頼りになる能力だ。


 「それって分断をパワーアップさせるって事?」


 「いや、我には他に力があったのだ。我の本来の力は分断では無い」


 「クリカラさんの本来の力ってなんなのですか?」


カレンがそう聞いた時私も同じことを思った。


この剣は主人である私にも色々隠している為今でもクリカラに関しては分からないことが多い。


 「滅炎、あらゆる物を滅する炎を操る能力だ。これの他にも能力を貰い増やしていったが、女神様に作られた時に持っていたのは滅炎の力だ」


 「なにそれかっこいい」


 「そうだろう、そうだろう。我の技の一つ護摩葬明断空剣は元々この炎を宿して敵を斬る技だが今は普通の炎魔法で出したもので代用しておる」


てっきり神聖属性みたいな感じの剣かと思った本来は炎系の剣だったみたい。


 「我の今の姿も本来の姿ではない。滅炎の力を取り戻せば前の姿に戻るだろう」


クリカラは刃は鋼色で鍔が金色、グリップは黒色で柄頭は金色で細工が入っている。


 「へー、今でも勇者の剣みたいな見た目だけどパワーアップするんだ。ん?その滅炎の力ってどこにあるの?」


 「蛇頭血池(へびずちいけ)、と言っても分からんか。今でいうと、立山県にある獄門山の中にある」


 「立山県?なんでそんな遠い所に?」


私が今いる龍昌市は日本国のちょうど真ん中辺りにあるが立山県は左下の端にある県だ。


 「その前に・・・お主ら厄災について知っておるか?」


 「「厄災?」」


カレンと声がハモる。


 「その様子だと知らん様だな。我の時代、勇者や魔王がまだいた頃世界は厄災と呼ばれる複数の怪物達がいた。そいつらは気ままに世界を荒らし、破滅させてきた」


 「え?そんなやばいのいたの?」


 「ああ、我ら勇者達は道中でその厄災達と戦い勝利を収めた。勇者の仲間達の中にはこの厄災から力を貰い戦うための力を得た者もおり我の力の一部もこの厄災だ」


 「魔王を倒すだけじゃなかったんですね。優理ちゃんの前世の勇者様ってすごい人なんですね」


 「いやいや、厄災と戦ったのも事故みたいなもので倒さないと死ぬから死ぬ気で倒した。という表現が正しいな」


 「・・・一体、なにがあったの?」


 「それはまた今度話してやる。そして勇者が魔王に勝利した後、この羅刹、今の日本国の場所に魔族やエルフ、クーリエ達多種族がみんなで暮らせる場所を作ろうと羅刹の地を開拓して行った。この時信用に足る者たちに各地で開拓させるため厄災の力などを分け与えたのだ」


そういえば前にクリカラが今の日本国のある場所は危険なところだったとか話してたっけ。


 「もしかしてそれに滅炎も?」


 「ああ、滅炎を預けた立山県には邪悪な植物や危険な魔物もいた。それをなんとかすべく我の力を与えたという訳だ」


 「つまり、今の日本国の元を作る為に勇者達が今まで集めた力を分けて開拓して行った。そしてその滅炎の力はまだ開拓していた立山県にあるってこと?」


 「その通りだ。と言っても分け与えたのは我の力のみだ。他の場所へは勇者の仲間達が直接出向いたからな」


 「・・・あの、質問なんですが」


カレンが丁寧に手を上げた。


 「勇者の時代から数千年経っているんですよね?地形も変わっていると思いますし滅炎の力がある場所は大丈夫なんでしょうか?」


確かに、どうやってその力を預けているのか知らないけど数千年の時が経っているのだ。誰かに預けたとしても行方知れずになっている可能性が高いのでは?


 「それは・・・問題ないと思う」


 「えー・・・なんか怪しい・・・」


 「力は守護者と呼ばれる信頼できる者に託したのだ。我らも勇者ゼロの来世に向けてできる限りの準備をしなければならない時もし力が必要になった時は譲る様言ってあるが・・・今、どうなっているかは行ってみないと分からん」


 「不確定要素多すぎない?立山県に行ってなかったらどうするのよ?他の力を探すの?」


 「そうなる、だが元は我の力。近くにあれば感知できる、それに守護者達は皆、使命を守る為死力を尽くしてくれると約束してくれた。必ずどこかにあるはずだ」


 「はぁ、とりあえず行って無かったら次ってことね」


 「そうだ。それで今すぐにでも立山県に行きたいのだが」


 「はぁ?できる訳ないでしょ」


思わずクリカラを睨むと私は続ける。


 「立山県まで電車で何時間かかると思ってんの?飛行機は高いしそもそも私、学校あるから!」


私が暇ならいつでも行っていいが学校が私を待っている。


私の目標は青春を謳歌すること。世界を救うのも大事だけどこっちも疎かにしてはいけない。


それに無断で学校休んだらママとパパに心配をかけてしまう。


 「学校は休まない!これは絶対だから」


 「はぁ・・・分かっておったがやはり断られたか。なら長期休みはどうだ?カレンダーを見ると5月は休みが多いようだが」


 「ゴールデンウィークのこと?」


5月にある祝日が連続する日で多い人では10日休みとかと人もいる。


 「確か、5月2日が土曜日だからそこから5日間は休みだけど」


 「なら、そこで出かけるとしよう」


 「うーん・・・ま、しょうがないわね。遊びたいけど戦力を増やさないといけないもんね」


魔獣はなんとか倒せるがその上位互換みたいな存在である魔神は今の私では歯が立たない。しばらくは魔神は襲ってこないみたいだけどなにを企んでいるんだか。


 「はい、私も構いません。予定を空けておきますね」


 「ありがとうカレン」


 「私がやりたいから。それに、使命があるとはいえ優理ちゃんとどこかに行けるのは嬉しいから」


 「私も!あ、そうだ!ついでに立山県に旅行しに行けばいいじゃん!ホテルとかとって2泊3日みたいな感じで!」


 「いいね!やろう!」


 「お主ら・・・でも楽しむ目的も子供には必要か。しかし、優理、お主にはやってもらうことがあるぞ」


 「へ?なに?」


 「剣術を習ってもらう」


 「えー・・・」


 「なんだその、嫌そうな顔は!」


 「いや、私、剣よりも鈍器の方が好きなんだよね。ぶん殴ればいいだけだし。クリカラが鈍器になってくれればいいのに」


 「なんだと!?この剣である我に刃も無い鈍器になれと!?」


でた、謎の剣としてのプライド。


自由に魔力で形を変えられるんだしいいじゃん。


 「いいか、優理よ。前の魔獣はなんとか今の状況でも通じたが次はそうはいかないかも知れん。お主の喧嘩殺法がいつまでも通じるとは思わん、だからこそちゃんとした武術を学び強くならねばならんのだ」


 「それはそうだけど・・・誰から学ぶの?まさかクリカラ?」


 「我でもいいが・・・我だけでは実戦稽古ができん。稽古相手を探さねばな」


 「ま、そうだよね・・・うーん、誰かそんな人いたっけ」


頭の中で候補を探るとすぐに出てきた。


 「あ!そういえば星花ってあの戦蝶院の人だった!」


戦蝶院家、カルノクスの一族であり昔から優秀な護衛や決闘者を輩出している武道の名家だ。私の友達の星花の苗字は戦蝶院。もしかしたら武術を教えてもらえるかも。


 「あ、確かに。教えてくれるかな?」


 「とりあえず明日聞いてみましょ。ダメだったら・・・その時考えるわ」



世界滅亡まで後、263日。

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