エピローグ 嘘と真のミルフィーユ
エレベーターの到着音で気持ちを切り替えた。
ドアが開くと前に進みお父様のいる部屋を目指す。
ここまでの計画は上手く行った、勇者の生まれ変わりが誰か分かりその力も分かった。
部屋のドアをノックすると入れと声が聞こえた。
「失礼します」
部屋の奥、プレジデントデスクの後ろに深くチェアに座ったお父様がいた。
「舞桜か、進捗はどうなっている」
「はい、勇者の生まれ変わりの正体が分かったのと所有している能力が判明しました」
持ってきた書類をお父様に手渡す、中身を見るとそこには蓮護優理に関する情報が紙いっぱいに書かれていた。
「・・・ほう、分断する力か。呪いを断ち切り魔獣を倒したか」
「はい、その後アルガが飛び出してしまいましたが」
「計画に支障は無い、良くやった」
「ッ!ありがとうございます」
お父様から褒められるのはいつぶりだろうか、お母様が亡くなってからお父様は仕事にのめり込む様になって不安だったが最近は機嫌が良いみたいだ。
「これで世界を救うのに一歩近づいた・・・勇者が死ななければこの世界は滅びる定め。これも大昔の争いによって呪われた世界になってしまったからだ」
「はい、勇者と魔王との戦いで多くの魔族が恨みを残し死んでいった。それは数千年たった今溢れ出そうとしている」
「そうだ、覚えているな。この世界には呪いがかけられている。いずれ生まれる魔王の生まれ変わりが勇者の生まれ変わりを殺さなければこの世界を覆う程の呪いは解けぬ」
「・・・勇者に殺され、自らの王も殺された魔族達の深い深い憎しみが一つとなり世界を覆った。その恐ろしい呪いは数千年かけ大きくなり今、世界を滅ぼそうとしている」
「ああ、だからこそこれは魔王の生まれ変わりである舞桜、お前にしかできないことだ」
「・・・はい、役目は分かっています」
「娘に対する要求ではないと分かっている。だが、世界を救う為に舞桜よ勇者の生まれ変わりである蓮護優理を殺すのだ」
「はい、必ず」
「長かった・・・皇グループの総力を挙げて呪いの研究を進め世界にかけられている呪いの正体が分かった。その過程で魔獣や魔神を作り出せたのは良かった、勇者が恐ろしく強くてもアレがいるなら勝てるだろう」
「しかしお父様、なぜ今勇者を捕えないのですか?」
「・・・神は望んでいるのだよ、この悲劇をな。ある程度神を楽しませてからではないと反故にされかねない。お前はこちらの事は気にするな、お前は自分の任務を果たすことだけを考えろ」
「分かりました」
ずっと、優理を騙していた。勇者の剣がどこにあるかは見当がついていたが誰も入れず壁に穴を開けることも出来なかった。
付近の魔物が倒されていることから剣が誰かに抜かれた事を知った後は街に魔物を放ったが一度で当たりを引けた。
蜘蛛の魔物が倒された後、何故か正体を掴めなかったので追跡したが入った部屋を調べるとそこは優理の部屋だった。
彼女が勇者の生まれ変わりだと知った時私は絶望した。
それから偶然を装い彼女とショッピングモールで会い連絡先を交換して計画を実行した。
わざと足の骨を折り切羽詰まった声で彼女を呼び出す、そうすれば彼女は私の為に戦い力を見せてくれる。
その予想は的中し彼女は今ある全ての力を見せてくれた。
・・・彼女であって欲しくなかった。
優理はあの感じだと忘れているのだろう、昔した約束を。
まだ小学生の時、私は自分が上に立つのが当たり前だと思っていた。その様な教育がされていたし周囲からされる扱いも私を助長させた。
優理には多分一目惚れだったと思う。明るく元気な彼女は私にも分け隔て無く接してくれた、まるで触れてはいけないものを見るかの様な態度では無く隣に立ち笑ってくれた。
私はその時接し方が分からなかった。自分からアプローチをかけるなんて初めてで恥ずかしくて誰にも相談できなかった。
だから私はあんな事をしてしまった。人気者である彼女の注意を引く為、物を隠したり嫌がらせをしてみたり優理に私を見て欲しくてなんでもした。
でもそれが取り巻き達を勘違いさせいじめに発展してしまった。
そんな事をしたかった訳じゃなかったのに。
その時の私は上に立つ者の自覚が無かった、私がその雰囲気を作れば当然クラスもそうなる、気づいた時には遅かった。彼女は毎日泣きながら家に帰っていった。
しかしそれは続かなかった。
ある日私達がいつもの様に優理を揶揄うと彼女は反撃してきたのだ。五対一、数では有利だったが優理は凄まじいパワーを発揮して私達を投げ飛ばし蹴り飛ばし、殴り飛ばした。
当然私も殴られて地面に倒れ伏した。
けど、その時本当の意味で彼女に恋をしたように思える。
彼女は負けなかった、私に、周囲に。
自分が始めておいて何を言うかと、私も思う。けどあの時の優理はとってもかっこよかった。
優理はなんでこんな事をしたのか聞いてくれて私はもっと友達になりたかったと伝えた、彼女は笑顔で最初からそう言いなさい!って笑顔で言ってくれた。
けど、そのすぐ後に彼女の転校が決まった。
私はようやく友達になれたのにと泣いてしまったがそんな私を見て優理は約束してくれた。
また、必ず会いに来る。そしてまた遊んでずっと友達でいようと。
約束の指切りをして私達は別れた。
そして私は決めた、彼女の様に誰にも負けない人になると誰かを助けられる人になると。
また出会った時恥ずかしくない自分になると。
大好きな優理、小学校の頃からずっと好きだった。
けど現実は残酷だ。
私が魔王の生まれ変わりで優理が勇者の生まれ変わり。
私が彼女を殺さないと世界は呪いによって滅びてしまう。
・・・どうして
私は彼女が欲しいだけなのに、どうして世界はそれを拒むの。
どうして私が優理を殺さないといけないの。
・・・これはどうしようもない黙示録。
滅亡を回避するには最愛の人を殺さないといけないクソみたいな世界。
期限は一月一日まで、それまでに優理を殺さないと。
私が必ず殺してみせる、けど少しでも長く優理といたいな。
・・・告白は正直嬉しかったし、悩んだけど躊躇ったら世界が滅びるから情が移らない様にした。
・・・なのになんでもう彼女作ってるの?
しかも私の返事待ち中に!
アレだけは、魔獣と遭遇させて能力を測る計画の中で唯一の誤算だったわ。
まさか、月僧さんと恋人になるなんて・・・
私のものなのに・・・
これにて第一章期限短し、青春と戦と恋せよ乙女、完結!
いやー・・・長くない?終わるまで半年以上かかってるんだけど・・・
本当に投稿遅くてごめんなさい!でも必ず完結させますので良かった最後まで楽しんでくれると嬉しいです!
次に上がるのは多分次回予告かな、これはすぐに上がると思う。第二章ももちろんありますのでお楽しみに!




