私の青春どこいった!?
今回は早かった(当社比)
あと一話で第一章は終了!お楽しみに!
家に戻るとカレンがそわそわと待っていた。
「あ、おかえり優理ちゃん」
「ただいま、ママが買ってくれたけど餡子ドーナツ食べる?」
お菓子の箱を見せるとカレンは驚いた顔を見せた。
「え!?それって達歳館!?高いやつなんじゃ」
「うん?確かにコンビニのやつよりは高いけどその分美味しいわよ?」
「あ、いや・・・これがお金持ちの感覚・・・」
「ん?なんか言った?」
「なんでもないよ!・・・良かったら一個食べていい?」
カレンは少し躊躇った後興味を持ってくれたみたい。
仲良く食べながら学校に行く支度を済ませるとカレンと一緒に家を出る。
「・・・ねぇ、カレン」
「どうしたの?」
「改めてよろしくね。この先どんな困難が待っているか分からないしもしかしたら世界を救えないかもしれない。けど、私頑張るから。一緒に戦ってくれる?」
言いたいことは昨日の夜に話したつもりだったがそれでも溢れてきた。一人で戦うのは不安だけどカレンを巻き込みたくないのは本当。
私らしくない。こんな改めての確認なんて本当にらしくない。けど、現実をちゃんと見るには必要だった。
「うん、もちろんだよ。一緒に頑張ろうね優理ちゃん」
私が差し伸べた手を、カレンはしっかりと握る。
その暖かさは確かに私に勇気をくれた。
カレンが仲間になった!そして恋人になった!
なんてね、ゲームだったこんな感じのが流れるんだろうな。
「うし!学校行こっか!」
「うん、一緒に!」
私とカレンは繋いだ手をそのままに駅に向かった。
学校に着いたが校門の前には皇さんと持国さんがいた、目立つなあの二人。
皇さんは私に気づくと小走りで近づいてきた。
「蓮護さん!えっと、無事でしたか」
「うん、ごめんねなんの連絡もなく離れちゃって。あの危険なやつは倒したから大丈夫よ」
「・・・本当に良かった」
昨日は怪しまれると思って山から離れたし、皇さんからしてみれば魔獣はいないし私もいなくて代わりに気絶している男二人がいるのだからかなり謎な状況だっただろう。
「詳しいことは昼休みに話しましょう、あの話も」
「・・・そうね、ここじゃあ目立つし」
今も登校中のみんなにチラチラと見られている、こんな状況でスマホを受け取れば良からぬ噂の元になりかねない。
あの話とは告白の返事の事だろう。
約束を交わすと皇さんは持国さんと一緒に去っていった。
・・・なんか持国さんから凄く睨まれたけど。
逆だよ、私助けたんだよアナタがいない時に!
だが、言葉にはできないのでその視線を浴びるしか私には選択肢が無かった。
そして時間は過ぎ、昼休みになった。
持国さんが迎えにきたのは食事が終わった後だった、まるで見計らった様なタイミングで現れたので怖かったけど。
案内されたのは前に一緒にお昼ご飯を食べた空き教室だった。
「入れ」
ドアを開けてくれた持国さんの横を通りながら教室に入るとそこには皇さんがいた。
「舞桜様、お連れしました」
「ありがとう律。二人きりにしてくれる?」
「え?しかし」
「二人にして」
「・・・はい、分かりました」
持国さんはかなり驚いた顔、まるでこんなことを言われるのは初めての様感じで戸惑っている。
「変なことしたらただじゃおかないからな」
ドスの利いた小声で皇さんに聞こえない様に言った後教室から出て行った。
二人きりになった教室でしっかりと顔を見合わせる。
艶のある黒髪に魔人の角と尻尾、赤い瞳に見られるとドキッとしてしまう。
しかし見惚れている私に皇さんはどんどん距離を詰めてきた。
「え、ちょ!」
そして距離はどんどん縮まり皇さんは私を抱きしめた。
・・・え?
ふわりといいラベンダーのいい香りがした後皇さんは私の背に手を回して力一杯に抱きしめた。
え!?どういう状況!?
「良かった・・・本当に良かった、生きてた・・・」
「あ・・・うん、ちゃんと生きてるよ」
そうだ、皇さんからしてみれば私は命懸けであの危険な場所から逃がしてくれた命の恩人なのだ。必死に逃げて警察を呼んで
戻ったら本人はいないし魔獣もいない、いるのは謎の男達。
私に連絡する方法もないし生きているかも分からなかった。
そんな私が今日の朝現れた時彼女は私の思う以上に安堵したのかも知れない。
抱きしめ返そうか、そもそも抱きしめて良いのか戸惑うが皇さんはまだ離してくれない。
「えーっと皇さん?」
「?、あ!ご、ごめんなさい」
自分がやっている事を客観視したのか慌てて私から離れた。
「ごめんなさい、私ったらはしたないことを・・・」
「いいよ、いいよ。私も不安にさせちゃったからね。大丈夫よ、ちゃんと生きてるし元気だから」
皇さんは深呼吸をして落ち着いたのか冷静さを取り戻しいつもの調子に戻った。
「んん、改めて、あの時はありがとうございます。あの時、蓮護さんが助けてくれなかったらどうなっていたか」
「いいのよ、雑魚だったし呆気なかったわ」
魔力が少なくて最初は苦戦したのは隠しておこう。
「スマホ、返すわありがとう」
まだ買ったばかりの私のスマホが返ってきた。前よりも綺麗になって帰ってきた、スマホの掃除ってサボりがちなのよね。
「綺麗になってる!ありがとう」
「このくらいはしないと・・・それであの怪物達はなんなのか教えてもらってもいい?」
「あー・・・」
うーん、どうしよう・・・あの時はノリで教えるとか言った様な気がするけど・・・どうするクリカラ?何にも考えて無かったわ。
「なにかカバーストーリーを用意したらどうだ?流石に魔神や魔獣を直接教えるのはな・・・関わり過ぎるとまた襲われるかもしれん。それになぜ舞桜が襲われたのかも不明なままだ」
「それもそうね」
クリカラと相談し、頭の中で瞬時にカバーストーリーを組み上げて話す。
「あれは妖魔よ」
「ようま?」
「ええ、私は退魔師の家系でこの世に蔓延る妖魔を倒す使命があるの。アイツらは人に化け襲ってくるの、大昔からアイツらは人知れず生きてきて害を成してきた。あの時は見た剣は私の相棒で、身体強化の術法と回復の術法も私は使えるエリートなの。相手を知らない演技してたのは一般人には知られたらいけないから誤魔化してたの!」
・・・いけるかこれ?
「・・・そう、だったの大変だったわね」
よし!いった!誤魔化せた!
「もう大変なのよ、上からここらで妖魔が活性化しているか調べてこーいなんて言われたけど早速会うなんてね。あ、この事はみんなには秘密ね!」
「ええ、分かったわ教えてくれてありがとう」
「また、狙われるかも知れないから襲われたら速攻連絡頂戴ね。また助けにくるわ」
「・・・ええ、お願いね」
「任せて、蓮護優理がなんとかするわ」
微笑んだ皇さんを見ると自然と私も笑顔になる。
「・・・それで告白の返事なのだけど」
「!」
いきなりの本命来た。まあ、あんまり持国さんを待たせると色々疑われそうだし。
いや、実際どうだ?好感度でいえば稼いだ方とは思うけど・・・ゲームの考え方なんて現実じゃ役に立たないしどうだろ。助けた時に多少は好感度上がってるとは思うけど・・・それが決め手になるわけじゃないでしょ。相手は皇グループの社長令嬢だよ?
「ど、どうなの?」
ゴクリと思わず唾を飲む、さっきまでほんわかしてたのに急に緊張してきた。
「今回の告白は・・・」
「・・・っ」
「ごめんなさい、付き合えないわ。こんな返事になってしまってごめんなさい」
・・・まあ、そうだよね。いくら助けてもそれが決定打にはならない。そもそも身分が違うもの、会って一週間だしここで付き合っても正直困ったことになっただろうし。
「・・・分かったわ。けど、私諦めないからね」
「ええ、助けてもらったのにごめんなさい」
「謝らないで。急に告白した私も悪いんだから。それにまだチャンスはあるでしょ?え、あるわよね!?」
「ええ、私の婚約者はまだ決まっていないからチャンスはあるけど・・・あまりオススメはしないわ」
「なんで?」
「・・・いえ、忘れて」
「うん?まあ、いいわ。それと言っておく事があるの」
「なにかしら?」
私は意を決して言うべき事を言った。
「私、カレンと付き合ってるの」
「?????????????????????」
「だから、皇さんは二番目になるの」
「え???????????????????」
皇さんは理解ができない様な顔をしていた、いや理解を拒んでいると言っていい。
「優理よ、なぜ正直に話したのだ?」
「どうせ、隠してもいつかバレるし正直に言ったほうがいいかなーって」
それに私、嘘下手だし。
「それは良いが見よ、舞桜の顔を。呆気に取られるとはあの事ぞ」
皇さんはまるで情報を処理しきれないパソコンの様に止まってしまった。
「え、えっと、それは前から?」
「いえ、昨日から」
「えと、私の記憶が正しければまだ告白の返事待ちだったわよね?」
「ええ、そうね」
「相手に告白しておいて別の人と付き合ってるの?」
「そうゆうことになるわ」
「????????????????」
「分かる、分かるわ。気持ちは分かる。私だったらそんな奴いたら前歯へし折ってるから」
「えっと、えーっと?え、え?え!?ちょっと、待って、整理する時間を頂戴」
「ええ、どうぞ」
しばらくすると皇さんは私を見て言った。
「つまり貴方は彼女がいるのに私を彼女にしたいの?」
「ええ、そうよ」
「・・・倫理観どうなってるの?」
ごもっともである。私に不服は無かった、大方その通りであると認識していた。
「でも、付き合いたいの。大丈夫よ、カレンにも話は通してあるわ」
「どうゆう状況なの・・・脳みそ腐ってるの?」
なにも言えねぇ、私が同じことされたらそいつを土に植えてるわ。
「でも!それでも!アナタが好きなの!」
「二股だよ!」
「違う!恋人が二人いるだけよ!!!」
「それを二股って言うのよ!」
「それでも!!!!!」
「ダメなものはダメよ!」
さっきの雰囲気はどこへやら、微笑む君はもういない。私が原因だけど。
「もう!少しは頭冷やして!」
「あ!ちょっと!せめて友達からでいい!?」
「・・・いいけど、友達だからね!」
それだけ言うと皇さんは空き教室から出て行ってしまった。
・・・なんとかいったほうだよね?
「はぁ・・・」
張り詰めた緊張が解け息を吐く。空き教室の窓から見える空は快晴だった。それを見るとなんとか成りそうな感じがしてくる。まあ、惚れさせればいいだけでしょ?いける、いける。
友達にはなれたし。
「・・・私も帰ろう」
空き教室から出て教室に帰るとクラスメイトの声が聞こえてきた。
「えぇええ!?蓮護さんと月僧さんって付き合ってるの!?!!?」
「???」
な、何が、何が起こっている?
教室のドアを開けるとそこにはクラスメイトに詰め寄られているカレンがいた。
「う、うん。実は昨日から・・・」
そのカレンの声を聞いたクラスメイト達はザワザワと騒ぎだす。
「ええ!?蓮護さんって皇さんに告白してなかった!?」
「浮気!?」
「振られたのかしら」
「だとしても乗り換え速すぎない!?」
「ビッチってやつ?」
「しー!本人来たよ!」
全部聞こえてるけど?
「あ!ごめん!優理ちゃん、手を繋いで登校した事を詰め寄られたら話しちゃった」
「あー・・・」
昨日の私へ、アナタはこの様な状況を予想してカレンを恋人にしましたか?
私の顔を見たクラスメイト達はそそくさと遠くへ行きヒソヒソと話し始めた。
・・・誰かのせいにしたいが私の顔しか思い浮かばない。
「えーっと、お二人ともお付き合いされたんですね」
そう言ってきたのは私の友達、星花だ。隣には凪沙もいる。
「おめでとうございます。ですが・・・皇さんの告白はどうされたのですか?」
凪沙さんが純粋な質問をぶつけてくる。
「その、さっき断られて・・・」
「断られる前にカレンさんと付き合ったのですか?」
「違うの!これには色々あって!」
「その色々とは?」
「その・・・色々は、色々!」
私がそういうとカレン以外のクラスメイトが私をダメ人間を見る様な目で見てきた。
見るな!そんな目で私を見るな!
ええい!どうしてこうなった!私は、私はもっと友達とキャッキャして授業も部活も完璧にこなして最高の青春を過ごすはずだったのに!
こんな、クラスメイトから蔑んだ目で見られて友達と彼女になる様な青春を送るはずじゃなかった!そもそも、魔獣とか魔物とかと戦う予定もなかった!剣を振る予定も、前世が勇者とかの予定もなかった!
「どうして・・・どうしてこうなったの・・・」
皇さんと恋人にならないと世界滅びるとか意味分かんないし!
「私の・・・私の青春どこ行った!」
達歳館の餡ドーナツ:お高い食材をふんだんに使った高級ドーナツ。8つ入りで9800円。おやつ感覚で食べるものではないが蓮護家にはたまに用意されているお菓子の一つで優理の好物。




