死闘の後のお風呂は格別
お待たせしましたー!
「あああああああああああ・・・染みるぅ・・・」
カレンに支えられながら家に帰った後、カレンが気を利かせてくれて先にお風呂に入ることになった。
一度夜には入っているが疲れた後の風呂はなんぼ浸かったていい。それに血や汗がついたままベッドに入るわけにはいかないし。
「・・・ねぇ、クリカラ」
「なんだ?」
「これから、こんな生活が続くのかな」
あの戦いはゲームでもなんでもないただの殺し合いだった。
負ければ私は死んで、約束の魔法の条件が満たされず世界は滅びてしまう。
私はただの女子高校生だ、戦士でも勇者でもない。喧嘩はいいけど殺し合いは勘弁したい。いや、喧嘩もしたくないけど。
私の体の中にいるクリカラは怒りはもう静まった様でいつもの様に話した。
「・・・続くだろうな。魔神八大将はあのアルガ以外にもいる。そいつら全員を相手にするとなれば過酷な戦いが予想できるだろう。それにアルガは今の我々では勝てそうにない相手だった。ゲームで例えるならレベルが違いすぎる」
「うん、それは私も思った。でもゲームじゃないからすぐに強くなんてなれないわ。どうするの?」
「・・・考えはある」
「本当?」
「正直に言うとこのプランは最終手段だった。昔、この様な事態を想定して色んな策を準備して眠ったのだが状況は最悪だ、使うしかない」
「え?なにそのプランは。なんかヤバいの?」
「ヤバい。優理に負担をかけてしまうし、何より日本国を駆け回ることになる」
「私にどんなことをやらせようとしてんの?」
「もう少し作戦を練ってから話す。それよりカレンと今後のことについて少し話しておけ。勢いで決めすぎだ」
「それは・・・はい。反省してます、マジで」
あの山で私はカレンに告白して恋人になったがまだ出会って一週間だ。何もかもが早すぎるし、カレンが受け入れてくれたとはいえ私はカレンに今回みたいに戦って欲しくない。
今回は上手く相手できたが次はカレンから狙われるかもしれない。防護魔法があるとはいえそれにも限りはある。
カレンを危険に晒したくはない。これは私の問題でありカレンが関わるべきではないと思う。
「だが、勢いで恐怖を押し殺すことができるのはたいしたものだ。戦いは怖いだろうがやるしかない、我もついている」
「分かったわ。はぁ・・・学校始まって一週間でこれかぁ・・・難易度ルナティクってレベルじゃないわね」
今からでもイージーモードにしてくんないかな・・・
「優理ちゃん、柔軟剤ってどこにある?」
「左下の棚だよー、いっぱい棚がついてるから分かりづらくてごめんね」
「大丈夫だよ。あった、紫のやつだよね?」
「そう、そう!ありがとう!本当に助かるわ・・・」
「わたしがやりたくてやってるだけだから。それに優理ちゃんは疲れてるでしょ?わたしはまだ疲れてないし大丈夫!そ、それに・・・その、恋人なので」
風呂の中折れドアの向こうからえへへと笑うカレンの声が聞こえた。
「そうだ、一緒に入らない?この家、風呂も大きいからスペースまだあるわよ」
「へ?入るって何に?」
「お風呂に決まってるじゃない。カレンも汗かいてるでしょ?カレンの服も一緒に洗った方が良くない?着替えはお母さんの分があるからそれ使っていいわ」
私の服はカレンには小さくて入らないだろうしママのを使ってもらおう。
「・・・えええええええええええ!?!!お、お風呂!?いいの!いや、え?いいの!?入って!一緒に!?」
そんなことを考えていたがドアの向こうから聞こえた大声でどこかに行ってしまった。
「いや、いいわよ。そんなに驚く?女の子同士だしそれに・・・恋人で友達でしょ。何の問題もないわ、もちろんカレンが良いならだけど」
「は、はいりま、はいりましゅ!」
興奮のあまり噛んだわね・・・
ゴソゴソとドアの前でお風呂に入る準備をした後カレンはゆっくりと中折れドアを開けて入ってきた。
「おおぉ・・・」
やはり、エルフは綺麗ね。カレンはインドアな趣味が多いからかまだ何にも染められていない白い肌に輝く金髪は映える。
なんというか、凄い。まるで彫刻品の様に整えられた体に目を奪われる。服の上からも確認できていた胸の膨らみは確かな存在感を放っていた。要するにデカイ。
「そ、そんなに見られると恥ずかしい!」
「あ、ごめんつい。綺麗だったから見惚れちゃったわ」
「も、もう!優理ちゃんってすぐそうこと言う!もう少し抑えて」
「えぇ・・・褒めてるだけじゃない」
「わたしの心臓が持たないの!優理ちゃんの口説かれると口から心臓が出そうになるくらいドキドキするの!」
「えぇ?本当?盛ってない?」
「盛ってないよ!本当のホント!」
「カレン、大好きよ」
私の唐突な愛の言葉にカレンは顔を真っ赤にして照れてるのか顔を両手で隠した。
「ふぇえ!!?!?!!」
「あはは!顔真っ赤!可愛いわよカレン」
「む、むぅう!優理ちゃんっていつも女の子にはこんなことしてるの!?」
「してないよーカレンだけだよ。あ、助けてくれたお礼に体洗おうか?」
「そんなことをされたら心臓破裂しちゃう!優理ちゃん!わたしが優理ちゃんのこと大好きなの知ってるよね!?」
「知ってるけど女の子同士で恋人だよ?大好きな人に何かして上げたいと思うのは当然じゃない?」
「・・・友達としての大好きなのにね」
「うぐ!それは・・・はい、その通りです」
痛いところをつかれて口を閉じる。
今思うと私、最低なこと言ってなかった?
カレンが私に恋を教えてその私が皇さんと恋をする!まさに完璧なプランじゃない!
とか言ったような、いや言ったわ完全に言ってるわ。
私クズすぎない?助けてもらった人にこんなこと言ってたの?
ヤバい、罪悪感が今になって襲ってきた。
カレンもよくこんな奴の恋人になってくれたわね・・・
どんだけ私の事好きなの?いや、監禁するぐらいか・・・もう答え出てたわ。
「シャンプーは使っていいの?」
「あ、使っていいよ!むしろ、全部使っていいから!」
「わたしも髪長いけどそこまでは使わないよ!?」
罪悪感で変なことを口走ってしまった。
てか、カレンの髪綺麗だなぁ。私の髪はパーマをかけなくてもふわふわしていて雨の日には爆発するから大変なんだよね。
カレンの髪は真っ直ぐなストレートでサラサラしている。
いいなぁ・・・太陽の光を浴びてキラキラと輝き、夜の闇に負けない金色。
私も自分の髪は気に入っている。髪色はママから髪質はパパから受け継いだからママとパパの子供の証なのでお気に入りではあるがやっぱりサラサラとした髪には憧れがある。
そんな綺麗な髪を持ち美人で可愛く、薬も作れてピアノもできて絵も描けて弓で敵も撃ち抜けるエルフが私のことが大好きで恋人・・・ここまで書くとフィクションみたいね。
けど、しっかりと目の前にいる。うん、恋人になるって決めたもの。ちゃんとしないとね。
カレンが洗い終わると浴槽に招き入れる。
恥ずかしがって中々入ってくれなかったがおねだりして入ってもらった。
広い浴槽に対面で座る、広いとはいえ足を伸ばすとカレンの太ももに当たってしまう。
カレンが湯船に入った後話を切り出す。
「カレン、今日はごめんなさい」
「え?急にどうしたの?」
「あなたを巻き込んでしまったわ。それに、そのキスまでしてあなたを恋人にするとか言って混乱させてしまったし・・・」
「それはいいの。わたしがやりたかったし優理ちゃんが困ってるなら力になりたいの」
「けど・・・これは、日常の困ったことではないの。奴らは残虐で人を殺すことを厭わない。私と関わるとこでカレンにも危害が加わるかもしれないの」
「優理ちゃん・・・」
「だから、色々片づくまで私とは関わらない方がいいと思うの。なるべく早めに片づけるからカレンは」
「えい」
「いて!」
カレンは私の額にデコピンをした。いつの間にか顔は下を向いていたようで少しの痛みと共に顔を上げるとカレンと目が合う。
「優理ちゃん、本当はどうなの?」
「え?」
カレンはさっきまで見せていた恥ずかしそうな顔はしておらず年上のお姉さんの様な柔らかい笑みをしていた。
「優理ちゃんとクリカラさんだけであの強そうな魔神を倒せるの?」
「それは・・・何とかするわ」
「隠さないで。優理ちゃんに今必要なのは共に戦ってくれる仲間でしょう?一人じゃ限界があるよ、わたしも戦わせて。弓も薬も役に立つよ」
「・・・けど、危ないことに関わらせなくないの。友達で恋人だから。カレンには普通に学校に行って、普通に生活して欲しい」
「優理ちゃん、怒るよ」
カレンは私の手を握って逃げられなくした。その翡翠色の目は私の心を見透かす様に覗き込んでおり、その美しい瞳から私は目を逸らすことができなかった。
「優理ちゃんが失敗しちゃうと世界も滅びちゃうんでしょ?なら、一番成功率の高い方法をとらないと。それにね、わたしは生半可な気持ちで告白にOKした訳じゃないよ」
「・・・でも」
「大切にしてくれるのは嬉しいよ。でもねわたしも優理ちゃんの力になりたい、支えたいの。優理ちゃんは辛くないの?急に世界の為に皇さんと恋人になれとか言われたり、危険な怪物と戦うとこになったりして。辛いよね?理不尽だのね?なら、わたしも一緒に戦わせて。好きな人の力になりたいの」
「・・・危険よ。もしもの事があってからじゃ遅すぎるわ」
カレンの気持ちはありがたい、けど危険だ。
今回の魔獣戦は魔力に余裕が無かったし、魔獣との初戦だった。
奴らの攻略法は分かった、次からすぐに対処できる。
「それでもカレンの毒矢が無かったら死んでたかもしれないぞ」
「クリカラ!?」
私が躊躇っていると体の中からクリカラが話しかけてきた。
「クリカラさん、優理ちゃんの中にいるんですね」
「ああ、我は特殊でな。それで優理よ、お主も分かっておるのではないか?我も優理だけではあの魔神に勝てる可能性は低いとな。戦力を簡単に伸ばす方法は一人の力を鍛えるのではなく戦う人数を増やすことだ」
「それは・・・分かってるけど・・・」
「優理が危惧しているのはカレンが危険な目に合う事だろう。それを言うなら敵に優理の事はバレているのだから友人関係も調べられて把握されるかもしれないのだから星花や凪沙も危険だぞ。なら、みんなの力を借りて早めに解決した方がかえって安全だ。それに理由は分からんがあの魔神はまだ襲ってこない様だ。今のうちに戦力を整えておかないと逆に危険だぞ」
「・・・ううん・・・・・・はぁ、分かったわよ。むしろ手伝ってくれるとありがたいわ。ありがとうカレン」
クリカラの言っている事は正しかった。私とクリカラだけでは限界がある。戦ってくれる仲間を集めて片をつけた方がいいわね。それにカレンの弓の腕と調薬師としての腕前は欲しい。奴らに毒が有効なのは確認しているし安全圏から毒矢を撃ってもらうだけでも助かる。
「カレン」
「はい、何でしょう」
「私と一緒に戦って。あなたのことは私がこの命にかけても守るから、あなたの力を貸して」
「はい、喜んで。私も優理ちゃんのことを守ってみせるからね」
「・・・ありがとう。正直、心強いわ」
「うん、どんなことがあっても後悔しないよ。それに優理ちゃんの力になりたいから」
カレンが握っていた手を更にギュッと握る。私もそれに応える様に握り返した。お互い見つめ合った後、私は気になることを思い出した。
「そういえば、あの薬草液ってどこから持ってきたの?」
「へ?」
私が魔獣の棘にやられた時カレンは薬草液をかけて治してくれた時の事を思い出す。あの時は痛くて死にそうだったけどカレンがかけてくれた薬草液のお陰で死なずに済んだ。
「いや、薬草ってさ国が管理してるじゃん?生き物にかけたら治るから危ないことをする人が増えたとかで国が管理する様になってお医者さんじゃないと処方してくれないでしょ?勝手に持ってたら違法だしどうやって持ってきたのかなぁーって」
薬草の取り扱いは極めて厳重に管理されている。一般人が勝手に栽培するのも違法だし持ち歩くことも違法である。
これが自由に出回ると監視カメラなんかがない場所で相手を傷つけても薬草液をぶっかければ暴力の証拠は無くなってしまう。他にも様々な悪用方法がある為どこの国でも管理は徹底しているところが多い。
お医者さんに怪我を見せないと処方してもらえないはずだがカレンは持っていた。
そのことを問い詰めるとカレンの目が泳いでいた。
「べ、べつに怪しいところから持ってきた訳じゃないよー!」
「あ、怪しい!え?なに、違反なやつぶっかけたの?」
「違法じゃないよ!そう!たまたま、月僧家の管理する山に野生の薬草が生えてて、それをたまたま私が採取してしまってそれがたまたま薬を作る時に混入しちゃって、そしてたまたま薬草液に近いものになっちゃっただけだよ!合法ちゃ合法だよ!」
「・・・違法な調薬店を営業してたりするの?」
「ち、違う!違うの!うちの山、薬草が生えてて本来は警察に連絡しないといけないんだけどおばあちゃんが頑固でウチの山に入らせるかー!って頑なで・・・おばあちゃんは政府が法規制する前から薬草液を作ってたからレシピ知っててねわたしも教わって作れるの。偶におばあちゃんが腕を見せてみろってわたしに作らせるの!今回使ったのはその時に作って保管したやつで絶対に売ったりしてないから!」
「なんで保管してたの?」
「だ、だって絶対に今じゃ専門の人しか作れない薬とかプレミア感あったしおばあちゃんが褒めてくれたから残して置きたくて・・・」
「・・・本当は?」
「本当にやましいことなんてしてないからー!!!」




