最初のボス戦?
防音室を飛び出してリビングに向かう。
「あ、待って!」
「どうした?」
「バック持ってく、中に応急処置キットとか入ってるし」
私は学生鞄を寝室から持ってきてリビングに戻った。
クリカラは窓を開けており出発の準備は整った。
「よし!いいよ!」
「分かった、強化魔法、撹乱魔法!最大出力で行くぞ!」
クリカラに体を預けるとその跳躍して窓から飛び降りる。
ここはマンションの五階であり飛び降りた時にはちょっと怖かったが学校遅刻しそうになった時に経験しているからかまだましだった。
跳躍して重力に従って落ちると近くの建物の屋上に着地した、前に言っていた強化魔法の対衝撃機能?だったけ、それに魔力を注ぎ込んでいるのか五階から落ちても着地した建物には傷一つ入ってなかった。
クリカラはまるで忍者の様に建物から建物へと跳躍して駆け抜けていきいつも使っている駅の高架鉄道をジャンプで飛び越えた。
そこからどんどん高い建物へと跳躍で登っていき高層ビルの屋上に着くと目的地の学校の裏山が見えた。
「ここから皇さんがどこにいるかとか分かる?ほら、魔力を探知して居場所とか特定できないの?」
「できるにはできるがこの距離だと分からん。我は体外の魔力を感知したり操作したりするのは苦手なのだ」
「それじゃ、もっと近づきましょ」
クリカラが私の体でビルからジャンプして飛び降りると私達は目的地へと向かっていく。
足元には都会の夜が広がっている。
まるで夜に抗おうと煌々と光る高層ビルの窓から漏れる光や車のヘッドライトは星々の様。
そんなが今は私の足元にある、一週間前までは想像もしていなかった景色だ。
「いたぞ!」
クリカラがそう叫んだのは裏山に入って30秒も経たない頃だった。クリカラはすぐさま走り出す、山を走ると踏み締めるたびに風圧で落ち葉が舞い、木々が揺れた。
そして皇さんを見つけた。
見つけた時、皇さんは男によって拳を振り下ろされようとする時だった。
「させるかぁあ!」
残り30メートルのところでクリカラの操作から代わり私が勢いよく跳躍するとドロップキックで男を吹き飛ばした。
ドコンンッツ!!!と鈍い音を立てて男は岩壁に叩きつけられて土煙に覆われた。
よく見ればここは私達が蔦の魔物を撃破した場所でありクリカラが刺さっていた地下施設の入り口のある場所だ。姿を隠す必要はもうないので撹乱魔法は発動しなくても大丈夫でしょ。
「皇さん大丈夫!?」
「え、ええ。大丈夫・・・」
「ッ!?その足どうしたの!?」
木に座り込んで体重を預けている皇の左足は曲がってはいけない方向に曲がっていた、ふにゃりと芯を失った様に伸ばされた足は骨折していると一目で分かった。
「アイツにやられたの!?ちょっと待ってて、応急処置キット持ってきてるから」
鞄の底からキットを取り出してマジックテープを外すと鎮痛剤の入った小瓶を取り出す。
「これ飲んで、あと警察に電話するからここで待ってて」
「蓮護さん、まだ、まだ終わってない」
「え?」
鎮痛剤を飲ませようとした時皇さんはそう言った。
まだ、終わってない?
「優理!」
「ッ!?」
クリカラが強引に私の体を操作するとクリカラ自身を顕現させて飛んできたナイフを弾き飛ばした。
「な、なに!?」
「おいおい、当たったと思ったんだがな。これだから人間の体はダメなんだ」
「うそ・・・割と本気で蹴ったんだけど」
あのドロップキックは身体強化を最大まで発動させ私を手加減なんてしてなかった、大怪我しても薬草で治るし本気で蹴ったからしばらく気絶してると思ってたけど違った。
蹴り飛ばした男は岩壁から離れると私達に歩み寄ってくる。
「止まって!あなた何者!?なんでなんで気絶してないの!?」
「ああ、いい蹴りだったぜあれは。だがな、効かねぇんだよオレにはよぉお!」
目の前の男は白いTシャツにジーパンとかいう山に来る格好では無いが靴も履いていない。
背は高く、体格もいい、黒髪で厳つい見た目。
「何者かって聞いてるんだけど?図体はデカいけど頭は小さいのかしら?」
「ビビってんのか?怖いから強い言葉を使って誤魔化してんのか?オレはそこの女を殺しにきたのさ」
女と言って指差したのは皇さんだった。
皇さんはあの皇グループのお嬢様、跡目争いとかでこうゆう暗殺者とかがやってくるの?そしてコイツはその一人とか。
「暗殺者って事?なら、残念あなたの任務は失敗よ。大人しく家に帰ってボスにでも泣きつきなさい」
「失敗?なぜだ?これからお前ら二人を殺すだけだ。だが・・・それは勇者の剣か?」
「・・・は?」
な、なんで。なんでコイツが勇者の剣のクリカラを知っているの?
勇者の歴史は忘れらされフィクションになっているはず。それなのにコイツは剣を見ただけでクリカラと思いついた。
なんで!?
「あなた・・・本当に何者?なんでクリカラを知ってるの?」
「そう!クリカラ!そうだ、そうだ、そんな名前だった!魔王様が言ってた勇者と生まれ変わりがお前か」
「魔王!?」
え!?魔王!?魔王の生まれ変わりって皇さんのはずじゃあ!?
「貴様!何を知っている!魔王とは誰だ!」
クリカラが私以外にも聞こえる様にすると声を張り上げて暗殺者に問いかけた。
「言うわけないだろ、まあ、言ってもお前たちはここで死ぬんだから無意味だがな!!!」
「ッ!」
剣を構えた私に暗殺者は真っ直ぐ向かってくるがクリカラが私の体を動かすと相手の右ストレートをひらりとかわしてその右腕を剣で切断した。
「ぐっ!?」
「よっしゃ!これで実力差は分かったでしょ?そのまま大人しくしてて!」
「なんだ、この程度か」
「は?」
「優理!なにか、おかしいぞ!アイツ、血が出ていない!」
切断面を見るとそこには骨、血管などがあったが血は見当たらない、あるのは真っ黒な液体の様なもの。
暗殺者は切断された腕を広いそのままくっつけた。
そして、腕は何も無かった様に動いていた。
「は、はぁあ!?なにその黒いの!?」
アイツ、薬草液も無しに腕をくっつかせた!?
人の体も薬草液をぶっかければあんな風にくっつくがあの黒い液体のようなものは何だ!?
「まさか・・・呪いか!」
「の、呪い?」
「お、さっすが勇者の剣と言ったところか?正解だ」
「そんな、ありえん!呪いを体に宿して再生能力を得るだと!?」
「ちょ、ちょっと待って!なんの話!?」
「魔法は女神様がこの世界に与えたものだが呪いは別の神様がこの世界に与えたものなのだ」
「別の神様っていたの!?てっきりあの女神一人かと」
「創世記の話で我も女神様から聞いただけだがな。元々この世界を女神様ともう一人の神様で作っていたが仲違いをしてしまい、もう一人の神様はこの世界を離れてしまった。女神様は呪いを消そうとしたがこの世界を二人で作っていたからか呪いを消すとどうなるか分からなかった為そのまま残したとのことだ」
「つまり、別の人とプログラム作ってたけどいなくなったから担当していない部分のところのコードを変に消すとバグるかもしれないから怖くて触れないってこと?」
「おおむね、その通りだ」
「何やっとんじゃあの女神!!!」
つうか初めて知ったわそんなこと!!!呪いってそんな風に作られたの!?てか、仲違いしてんじゃないわよ!
「ああ、なるほど。その離れていった神の力を使っているからおかしいって訳ね」
「そういうことだ。呪いは情報を記憶する物質だが負の感情を記録しやすく人の体に入ると激しい痛みなどに襲われるが・・・コイツはそれをものともしていない」
「説明ご苦労さん、それで?突破口は見つかったか、勇者様?」
「勇者じゃないわ、学生よ。それにやる事は変わらないわ。再生するってんなら再生しなくなるまでぶっ飛ばすのみよ」
「優理、もう少し真剣に考えてくれないか」
「だったらいい案あるの?ぶっ飛ばしながら攻略法見つけるしかないでしょ!」
「・・・変わらんな、魂に似るのか?それとも魂が似た様な体に宿るのか?」
「いいから、バトルよろしく!」
「ああ、任せよ。念の為防護魔法をかけるぞ」
クリカラが防護魔法を唱えると体に薄い膜様なものが纏うとそれは見えなくなった。
「作戦会議は終わりか?ならこっちからいくぞ!」
暗殺者が駆け出すと距離は縮まるがクリカラは動じず剣を構えた。(今更だけど自分自身を振り回すのってどんな気分なんだろ?)
相手は投げてきたナイフ以外に武器は無いのか拳で殴りかかってくるがそれに刃を当てて相手の力のみで切り裂いた。
しかし相手も痛みを感じないのか止まらない、刃を殴って切り裂かれても焦りもせず次の拳を繰り出してくる。
切り裂いたはずの傷はあっという間に再生してしまい元に戻ってしまう。
「ならば、これを試す!」
クリカラが剣に魔力を込めると碧色に輝き始め光を纏った。
「断ち切る!」
光を帯びた剣で暗殺者を袈裟斬りにするがさっきと同じ様に再生されてしまう。
「無駄なんだよ!」
「ッ!」
暗殺者の刺すような蹴りを躱してバックステップでクリカラは距離をとった。
「そんなまさか・・・融合の力だと?それは霊籠龍の力のはず!」
「へぇ、そこまでわかるとはな。この体は魔神様から与えられて強靭なもの、お前らじゃ勝てる訳ねぇのさ!」
魔王?魔神?なんだかよく分かんないけどやばそうな連中が皇さん暗殺に関わってるっとことよね。
「何があったの?」
「さっき、奴に分断の力で呪いと奴を切り離したがすぐに元通りになった。もっと魔力を注げば一定時間切り離せそうだがそれでも5秒程度が限界だ。元通りになればすぐにまた再生されてしまうだろう」
「5秒以内にけりをつけるのは?」
「今の我では強力な技を放つ事はできない、護摩葬明断空剣では火力不足だ。切り付けても五秒経てば再生されてしまうだろう」
「強力な攻撃じゃないと致命傷にならなってことね。相手は無限に再生できそう?」
「・・・分からん、相手を切り付けた感触で呪いや融合の力も入っている事が分かったが我も優理も呪いを探知する事はできないだろ?相手が今、どれだけの力を持っているか分からんなのだ」
呪いは未だに科学で解明出来ていない謎のもの、目に見えず感じ取ることもできない。まるで人が空気の中にある窒素や水素を見分ける事ができないように。呪いには聖別された水である聖水で洗い流したり呪いの根源をなんとかすることで解呪できるが今思えば聖水は女神が呪いを強引に解決する手段だったのかもしれない。
私もクリカラも今目の前にいる暗殺者がどれ程の呪いを纏っているか分からないのだ、呪力が減っていれば攻撃を続けていけばいけど・・・
「どうしたぁ!?勇者ってはこの程度か!?」
暗殺者は槍の様に右足を蹴り込んでくるが横に咄嗟に避けてそのまま腹をすれ違いざまに斬りつけるがこれもすぐに再生されてしまう。
「くっ、あ!そうだ!アレは?あの魔力込めるやつ、会心撃だったけ?あの名前ダサいやつ!」
「しかし優理はまだ魔力を上手く操作できないだろう、下手にやればまた腕が破裂するぞ」
「けど!」
「お前らじゃあオレはたおせねぇんだよぉお!!!」
「くっ!」
暗殺者が私を叩き潰そうと振り下ろした拳は回避して当たらなかったが地面に当たると乾いた地面砕け轟音が響いた。
なんて威力・・・当たったらひとたまりもない。
人間の姿をしているが人ではない、正真正銘の怪物が目の前にいる。こんな存在がいるとは思ってもいなかった、少なくとも私の日常には入る余地のないものだ。
それが今、私は剣を握りその化け物と対峙している。
呪い、魔王、魔神、前世、勇者、使命・・・なんでこんなことになってるの?
「は!勇者も大したことねぇな!」
「うるさい!いいから、黙って!」
私が叫ぶとクリカラが体を動かす、暗殺者の大振りの右ストレートを斬り伏せ、両脚を切断し、胴体を袈裟斬りした後逆袈裟斬りでバラバラにする。
しかし相手は倒れない、黒い液体を滴らせると再生して攻撃を無かった事にされる。暗殺者は不敵な笑みを浮かべ挑発する。
「これがオレとお前の差だ。諦めろよ、勇敢と蛮勇は違うんだぜ。それにもう魔力切れが近いんじゃないか?」
「ッ!?」
なんでコイツ、魔力も知ってるの!?魔法や魔力は魔王の魔法によって使い方を忘れ去られ人々は魔法と魔力を忘れてしまった。なのにコイツは知っている。
「どうなっている・・・?なぜ魔王と魔力を知っている?訳が分からんぞ」
クリカラもこの状況は予想外な様で困惑している、一体何が起きているの?なんで皇さんが狙われているの?
それに魔力切れも当たっている。
家からここまで身体強化の魔法を全開で発動させ今も発動させている。
分断の力も使ったし、正直に言って残りの魔力は少ない。
ここから・・・どうする?




