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魔力操作は一日にしてならず

 「クリカラ先生の魔力講座ー!」


 「そんな大層なものではないのだがな」


カレンが帰った後お風呂に入って晩御飯を食べてクリカラから魔力の使い方の講座を受ける事になった。前にクリカラから早とちりしても抵抗できる様に魔力の扱いを教わることになっていた。私は家のソファーに座りながらクリカラが教えてくれることを聞いていた。


 「まず魔力とは何か説明しよう。魔力とは魔法を操るためのエネルギーであり万能な力だ。昔はほとんどの者が魔力を持っていたが魔王の破滅の魔法によって魔法が使われてなくなり魔力は価値を失い、使われなくなり衰退していった様だな」


 「ゲームの魔力とかと一緒だね。そういや前に私の魔力量は多いって言ってたよね?どのくらいなの?」


 「そうだな、昔の魔法使いなら良い素質を持っているレベルだ。数値で例えるなら我の魔力量が100なら優理は200ぐらいだ」


 「ええぇ?女神の創造物なのに私より魔力ないのー?」


 「その話は後だ。まず、確認として優理は自身の魔力を認識できるか?」


 「できないよ。魔力があること自体最近知ったんだから」


 「なら、まず魔力の認知から始めよう。我が今から体内の魔力を動かすから流れを感じてみろ」


 「おお、修行みたい。やってみる」


目の前で説明をしていたクリカラは私の体の中に入り魔力を動かし始めた。そこから変化は現れ始めた。まるで静まった水が掻き回されて渦を作る様に何かが動き始めた。自分と言う器の中にある何か得体の知れないもの。おそらくこれがクリカラが言っていた魔力だろう。


 「おー!なんか体の中でざわざわしている!」


 「感じたか。これが今優理の中にある魔力だ」


クリカラは私の体から出てきて説明を続ける。


 「まずは魔力を自分で動かせるようになろう。我が作った流れを自分で動かしてみろ」


 「えー、急に言われても。なんかコツとかないの?」


 「ふむ、魔力は血流のように心臓が動かしているわけではない。自分自身で力の流れを生み出しコントロールしなければならない。魔力を感じながら押し出す様に体の魔力を循環させてみよ」


 「はーい、やってみる」


とは言ったものの完全に手探りの状態だ。ま、時間はある。ゆっくりと流れを掴んでいこう。


 「むむむ・・・そういえば私以外にも魔力を持っている人っているの?」


 「いるぞ、月僧カレンと皇舞桜だ」


 「え、カレンも!?」


 「魔力操作に集中。月僧も我と同じぐらいの魔力量だな。それ以外は街中でちらほら見かけるぐらいだ」


 「カレンも魔力を認識すれば魔法とか使えるの?」


 「我が教えれば使えるだろうな。彼女は優理とは違って素質がありそうだし」


 「は?」


 「だが教えることはないだろう。前にも言ったが魔法は広めたくない」


 「分かってるわ」


にしても魔力全然動かないんだけど?さっきクリカラはどうやって動かしてたの?まるで硬くて重い泥を押し出そうとしているみたい。


 「ぐぬぬ・・・」


 「深呼吸。無理に動かそうとしても駄目だ」


 「無理!ギブ!分からーん!」


 「はぁ・・・期待はしてなかったがな。我も手伝おう」


 「最初から手伝ってくれれば良かったのに」


 「何事もやってみるものだ、それに教えたい技もあるからな」


 「教えたい技?」


なんだろ、護摩葬明断空剣(ごまそうみょうだんくうけん)みたいにかっこいいやつなら大歓迎だけど。


 「その名も勇者絶対会心撃だ」


 「名前ダッサ!!!」


なんで間に絶対とか入れちゃったの?勇者会心撃ならまだマシだよ。


 「ほらみろ!やはりダサいではないか!我はあれほどこの名前はやめておけと言っただろうに!仲間達からも不評だったではないか!」


 「え!?はぁ!?それたぶん前世の話でしょ!?今の私には関係ないし!」


 「む、そうだったすまない。しかしあとでこの名前は変えよう」


どうやら前世の私はネーミングセンスが絶望的だった様だ、よほどこの技に自信があったのかな?いや、それでも勇者絶対会心撃はないわ。


 「それでその会心撃ってのは?」


 「うむ、この技は武器に魔力を込め続け敵に攻撃が当たる時にその魔力を爆発させる事で大ダメージを狙う技だ」


 「おお!なんか強そう」


 「しかしこれをすると武器が貯められた魔力の爆発に耐えきれず破壊されてしまう」


 「ダメじゃん!」

 

 「ああ、この方法は冒険者達が攻撃力を最大限まで伸ばす為に使われた方法だが武器は壊れてしまう。しかし我ならば話は別だ。我は女神様の創造物であり壊れないという特性がある」


 「あー、なんか前に言ってたね。斬りたいものが斬れて魔法が効かなくて壊れないだったけ。能力盛りすぎじゃない?」


 「我は女神様が作られた剣だ、そのくらいの能力はある。我のこの壊れない特性と魔力の一撃を組み合わせると何度でも強力な一撃を放てるわけだ」


 「おお!特性を活かした戦法って訳ね!」


 「そうだ、細かい事は省くが我は自分の外にある魔力操作が苦手でな。我の外部を魔力で覆い放つことができれば護摩葬明断空剣よりも破壊力があるぞ」


 「え、本当!?」


あの技を見たのはクリカラを抜いた時と蜘蛛の魔物の時だ。蜘蛛の魔物の硬い甲殻を溶断してバラバラにしてたけどあれより破壊力があるの!?


 「そもそも護摩葬明断空剣は範囲技で対複数の技だからな。この会心撃は一体の相手にしか当てられないがその分破壊力は絶大だ」


 「いいね!なんかワクワクしてきた!」


戦いたくはないけど対処できる術があるに越したことはない。それにゲームでも新しい技を覚えるのはワクワクするし楽しみ!


 「使える技は多い方がいい、どんな魔物がいつ襲ってくるか分からない以上選択肢を増やしておきたい」


 「賛成!よし!魔力操作頑張っちゃうぞ!」


 「ああ、我も手伝う。焦らずやろう」


〜2時間後〜


 「・・・ここまで才能が無いとはな。優理よ、魔力の扱いが雑だと言っておるだろう」


 「うぅぅ・・・」


こんな気分になったのは小学生の頃分数の計算ができなくって居残りさせられて先生に怒られた時以来ね。


自分の才能の無さが恐ろしい。


 「しょうがないじゃん、魔法とは無縁だったんだから」


 「いや、魔法を学び始める子供でも30分もあればできるようになるのだが・・・」


 「・・・・・・泣いていい?」


 「泣いてできるようになるなら」


 「じゃあやめる」


 「まあ、悪いことばかりではない。一つ魔法の才能を見つけたぞ」


 「本当!!!?なに何ナニなに!?」


 「急に元気になったな。優理の魔力通路はかなり太いな」


 「女の子に太いって言った?」


 「体形のことじゃない!魔力通路の規模は魔法に魔力を流し込む時間に影響する。魔法の発動速度は魔法使い同士の戦いはもちろん魔物と対峙する時にも重要だから魔法使いとしての器としては100点としていい」


 「才能は?」


 「0点と言っていい」


 「ダメじゃん!あれだよ、顔は良いだけで性格最悪みたいなもんでしょ!?」


 「その例えはどうなんだ?言い得て妙だが。しかし最初より魔力は動く様になったな。亀の様に遅いが」


 「その一言いる?」


 「ゆっくりでいい、右手に魔力を集中させてみろ」


 「分かった、やってみる!」


亀の様遅いと言われたのが少し腹だったので魔力を全力で右手に流してみたが、ぐんっ!と勢いよく放出してしまう。一瞬、右腕が風船の様に膨らんだ後。


 「優理!」


「え?」


ボンンンッ!!!!


肉の裂ける音と骨の砕ける音、魔力の破裂音が部屋中に響き渡った。


 「いっったあぁあああああ!!!!」


破裂した右腕から血が滴りズキズキとした痛みが全身に駆け巡る。


 「勢いよく流し過ぎだ!我が魔力を抑えなかったらもっと悲惨な事になってたぞ」


 「こ、これ大丈夫?骨折れてる?ぐにゃあってなってるし血が出てる!!!てか破裂してる!」


 「安心しろ魔法で治せる、回復魔法(クーヒル)


クリカラが魔法を唱えると痛みが和らいだ後骨が元通りになり裂けた筋肉がくっついて元の状態に戻った。


 「おお!すご!これが回復魔法!へー!やば!マジで魔法じゃん!」


 「語彙力・・・優理よ、さっきも言った様に魔力通路はかなり大きい。さっきの様に考え無しにやれば自分の体を痛めつけるだけだ。回復魔法にも限度はあるぞ」


 「ごめんなさい・・・」


 「思い切りがいいのは良い事だ、優理なら我に魔力を流す時間は上手くいけば一秒ぐらいで済む。チャージに必要な時間がほぼ無いのは強みだ、今度は詠唱を加えてルーティンを作ってみるか」


 「はーい、クリカラ先生」


 「もう痛みはないか?」


 「うん、大丈夫」


 「それなら今日はここまでにするか。ゆっくり眠るといい」


 「分かったわ教えてくれてありがとう。あ、そうだ今日は何見る?昨日の続きにする?」


 「・・・それでいい」

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