第3話 8
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海の方からガシャガシャと機械音がする。だんだん近づいてくるような気がする。
あれは?黒くて大きな・・・?シルエットはまるで一匹の大きな蜘蛛。遠目で見てもその大きさがわかる。遠浅の海から岩場に上陸して、かなりの速度でガシャガシャと、あたしたちがいる高台の方に歩いてくる。今からじゃとても逃げられそうにもない。
正殿達を捕まえているあたし達はじっとそれを見つめていた。まるで現実味がないが、実際にこっちへ向っている。やはり巨大な蜘蛛、いや蜘蛛のような八本の足がついた、ヘリコプターのメインローターとテールローターがない乗り物だった。高さは10m弱といったところか。
誰が見ても敵の兵器に違いない。あたし達・・・ここにいる仲間達や屈強な男達はそれぞれ迎撃の準備をして迎え撃つつもりだ。若鮎さんに握手をしていた男達は、野鳥観察小屋の中から刀や拳銃、機関銃のようなものを次から次と持ち出してきては装備をしている。十畳程の広さの小屋の中にどうやったらこんなに収まるのよ?駄目じゃん!野鳥になにするつもりだったのよ?ここ日本のテーマパークだよね?自衛隊の演習地だっけ?
あたし、メルちゃん、乱ちゃん、スズちゃん、御心君、若鮎さんはできるだけ後ろの方に下がって、巨大蜘蛛には月平、定食太郎さん、層君、そしてJIM148のアイドルの男達が前面に立って相手をすることになった。捕まえた正殿、吹雪、竜田揚は奪還されないようにあたし達女子チームと一緒に後ろの方に下がっている。
巨大蜘蛛はあたしたちの目の前まで到達した。見上げるとその大きさに圧倒される。
しかも蜘蛛の武器がわからない。下手をすると全員殺されてしまう恐れがあった。
「しかしよくまあ次から次と蜘蛛ばっか。『カーバンクル』やのうて、『蜘蛛株式会社』って名前に変えたらええんや」
「ふふ、あれは米軍も配備しているカーバンクル社製『AH-40HSKベナトリア』だ。 装甲が薄いために主に偵察用に使われるが、地対空ミサイルを装備することもできる、陸上では万能型だ。しかも海に潜ることもできる。あれからは逃げられないぞ。どうする?あきらめたらどうだ?」
ふんっ、捕まっているくせに偉そうな解説、ありがとねっ!正殿、あんたもっと痛い目にあわないとわかんないようね!
巨大蜘蛛(名前なんてどうでもいいや!)の中から拡声器でおばちゃんの大きな声が聞こえてきた。
「あんたらなに失敗しとんねん!アタシに手間かけさせんといてや!あんたら全員晩ご飯抜きやで!おほほ」
うわ、乱ちゃんとキャラかぶってる!じゃなくて、アフロのお母さんのおほほ星人なの?
この声を聞いて吹雪が震えだした。吹雪の弱点はこの人だったの?
「初鰹の奥様、どうしてそんなところに?おほほ」
「あなたそんな素敵なお車をお持ちでしたの?おほほ」
「今度乗せてくださいね?おほほ」
「あなたカーバンクルの一味でしたのね!逃げられませんわよ!おほほ」
まだいたんですね、おほほ星人の皆さん。緊張感ないからやめてもらえませんか?あれ?一人だけ重要なキーワードをさらりと言った人がいたような?
「ほら、逃げんで?」
巨大蜘蛛の下の方の穴から急に「ばんっ」と音がしてネットが飛び出し、正殿達を含むあたしたちのほうへネットが覆い被さってきた!縛られていないあたし達はネットをかろうじて避けることが出来たが、正殿、吹雪、竜田揚の三名はネットに絡め取られてしまった。そしてネットを「きゅるきゅるきゅる」という音とともに巻き取り始め、ネットの中の三人は地面をずるずる引きずられてから、あっという間に巨大蜘蛛の下の穴に強引に吸い取られてしまった!ここまでわずか数秒。あたしたちはその間何もすることが出来なかった。あれは痛そう。
「全員がこんなに至近距離にいるのでは発砲することもできない!どうする!」
定食太郎さんが歯がみをする。定食太郎さんもいつの間にか拳銃を持っているが、いまさら突っ込まない。
「なに急に引っ張ってるのよ!痛いじゃないの!腕擦りむいちゃったじゃないの!」
「網がー絡まってー、とーれーませーんよー♪」
「晩ご飯抜きは勘弁してくれ」
「あんたらの穴だらけの計画の尻ぬぐいするこっちの身にもなれや!このボゲが!」
マイクのスイッチ入ったままだよ。スピーカーの音量最大にしないでよ、うるさいよ!誰か教えてあげてよ!
あたし達がうるさくて耳を押さえている間に、巨大ロボットは再び海の方へ素早く歩き出した。
「吹雪逃げるな!帰って来い!」層君だけ悲痛な叫びをしていた。帰って来なくていいです。まぢで。
「逃げられてまうで!鉄砲撃たへんのか?」乱ちゃん相変わらず過激ね。
「駄目だ!ここで撃つと野鳥に当たってしまう!」じゃあ何のために野鳥観察小屋の中に鉄砲とかこんなの山のように置いとくのさ?
巨大蜘蛛はあっさりと海に潜って見えなくなってしまった。あっけなく逃げられてしまった!
「くそっ、やつらまた襲って来んで!」




