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第1話 13

13

 お母さんが青森に帰ったので、晩ご飯はまたあたしの当番だ。学生時代は自炊していたので、お料理は得意な方だ。あたし、いつでもお嫁に行けるよ。誰かもらってくれてもいいのよ?


「ただいまー」家に帰ると真っ暗だった。レイカお姉ちゃんはまだ帰っていなかった。

今日も遅いらしい。スズちゃんもまだ学校から帰ってきてないのかな?と思って二階を見ると、明かりがついているので部屋にはいるらしい。

いつもなら元気にお迎えしてくれるのに、どうしたのかな?


 スズちゃんが使っている部屋のドアをノックしてみる。返事がない。中に入ってみる。

スズちゃんは布団をかぶって、寝ていた。スズちゃんは体がとても弱く、熱を出して寝込むこともあるので心配だ。

「スズちゃん、体調悪いの?熱でもあるの?」

「ううん。何でもないの」

「ご飯出来たら呼ぶから、降りて来てね?」

「うん」


 スズちゃんの様子がおかしい。学校でなにかあったのだろうか?

 たしか前にも同じようなことがあった。

そのときもクラスの男子にからかわれて、家に帰ってきてから黙って布団をかぶって寝ていた。何をきいても絶対に教えてくれなかった。


スズちゃんは優しい子なので、たとえいじめられていても先に相手のことを考えてしまって自分で抱え込んでしまう。

 今回も聞いても教えてくれないんだろうな。ここはお姉ちゃんが一肌脱ぎましょうか!

スズちゃんに手を出したら再起不能だよ!


 スズちゃんはとても頭がいい。

特に推理力にずば抜けていて、一を聞いて十を理解するって言葉のとおりだ。

あたしが誘導尋問してもすぐにばれてしまう。

今まで何度も負けてきた。でも今度は負けないよ。

あたしの野生のカンが勝つか、スズちゃんの理論的思考が勝つか勝負だよ!

でもいじめられているかどうか、あたしが心配していることは絶対にわからないようにしないとね!


「スズちゃん、ご飯だよー。今日はチキンカレーだよー。降りておいでー」

 二階からスズちゃんがぐずぐずしながら降りてくる。

 さあ、質問開始だ。できるだけ遠回しに聞いてみよう。

「スズちゃん。学校はどう?もう慣れた?友達できた?クラスで仲良しグループとかあるの?クラスの中にいじめっことかいるの?」

我ながらスズちゃんの気持ちを考えた完璧な質問だね!


「・・・・、マキねっちゃ、これはわさなにか聞きたいこどでもあんの?だいたいわかるけど」

 なに?まさか、もうばれてるの?

「え?なんのこと?お姉ちゃんはただスズちゃんが学校でいじめられてるとか思ってないから、世間話してるだけだよー」いや。ばれている筈がない。

「マキねっちゃ、わだば大丈夫(だいじょぶ)だよ?」


「あのマキちゃん。話の途中でごめんなさい。スズちゃんの言っている言葉がわからないの」

雪ちゃんが困ったようにあたしに尋ねる。

「えーと、そうだね。雪ちゃんは青森の方言を聞いたことないもんね。うん。あたしが通訳してあげる。」

 あたしたちが生まれ育ったのは青森県の下北半島から三八上北と呼ばれる上北、三沢、十和田、八戸、三戸までを含む東側半分に位置している、南部地方といわれる所だ。

そこでは基本的に南部弁が話されている。(三沢では五分の一が英語だ。米軍基地があるから)

ちなみに津軽弁は青森県の西側半分で使われている言葉だ。

 あたしは中学まで下北で、高校は八戸、大学は仙台なので、周りはあたしよりも訛りが強い人がごろごろしていた。なので方言で困ったことは一度もなかった。


「雪ちゃんあのね、スズちゃんが言っているのは、『マキお姉様大好き!』って言ってるんだよ」

「マキねっちゃのえふりこぎ!」

「マキお姉様素敵ですわって、言ってるのよ」

「マキねっちゃ、ちゃかさないで!もうマキねっちゃと話しない!」

超訳しすぎてスズちゃんを怒らせてしまった。ごめんごめん。ちょべっと、はんかくさかったかな?


「でもねスズちゃん、お姉ちゃんは心配なんだよ、スズちゃんひとりぼっちで、我慢してるんじゃないかって。お姉ちゃんも学校に行ってた頃に同じようなことを体験してるから、余計にね」

「うん。マキねっちゃの言ってるごどわかるけど・・・。うん、そだね。ねっちゃに相談してみる。」

 

 スズちゃんがやっと話ししてくれた内容を要約するとこんな感じだ。

 クラスのある男子がスズちゃんを無視している。他の子もスズちゃんを仲間はずれにしている。

まだ友達も出来る前だったので、スズちゃんはクラスで一人ぼっちになっているらしい。

やはり田舎から出てきて訛っているから嫌われてるのかな?ということだ。


 これはよくあるような話だが、今時訛りが強いからと言って、田舎の子を馬鹿にする人はほとんどいなくなっている。

いや、むしろ「方言女子」は一種のブームとなっていて、テレビで方言タレントが大人気となっているくらいだ。

しかも「方言女子萌え」とか言ってご奉仕する男子が続出しているという話がネットに書いてあった。


 確かにスズちゃんの訛りは強いが、無理に標準語を話す必要は全くない。

ただし、単語の意味がわからなくて聞き返されることはあるかもしれないけど。

 あたしの怒りは頂点に達していた。

高校生にもなって常識のない男子め!明日はあんたの命日だよ!


「マキねっちゃ、わ、クラスではんつけになって、このままずっと一人ぼっちかな?どして、いじめられるのかな?わだしどうしたらいいかな?わ、こごさ来なきゃよかった!」

スズちゃんが涙目になってあたしに抱きついてた。

「お姉ちゃんに任せなさい!お姉ちゃんが何とかしてあげる!」


「でもマキねっちゃ、めぐさいから学校(がっこ)さ来たらわがねよ?」

 え?学校に行かないで何とか出来るモノなの?どうしよう。


「雪ちゃん、明日スズちゃんの学校についていってちょうだい!決定的証拠を探してきて!」

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