第1話 12
メル視点です
12
【メルレポート 第五報】
御祖父様、お久しぶりでございます。
わたくし、三崎工場へ配属になってから早一週間が過ぎました。
二ヶ月前にわたくしが三崎工場へ配属すると決まってから急ピッチで建築していただいた新事務棟はとても快適でございます。特に食堂はメニューの質、量および価格とも満足できるレベルにまで仕上がりました。工場で働いておられる方々の評判も上々でございます。
わたくしの大事なマキちゃんも昨日からようやく三崎工場へ出勤することができました。
昨日はマキちゃんのお薦めで、電車のグリーン席以外に初めて乗車してみました。
進行方向に向って横向きに座るのはとても新鮮で、隣のマキちゃんとの距離も近く、これはやみつきになりそうですわ。
マキちゃんは御祖父様のはかりごとにより、環境安全課に行かれてしまわれたので、お会いできる時間が朝、お昼、夕方の三回のみになってしまいました。おかげさまで、わたくしのマキちゃん分が不足しておりますわよ?
わたくしのパートナーMoNStErのウサギのモナ香ちゃんの特殊能力は、遠聴と録音機能でございます。総務課の隣に確保したわたくし専用の執務室の中で、この能力の拡張を試みております。本日はどこまで遠くの音を拾えることができるか、また指向性はあるのか試しておりました。
先ほどマキちゃんが各課へのご挨拶で総務課にも廻っておいででしたので、マキちゃんの周囲だけの音を拾ってみることに挑戦致しました。盗聴というわけではございませんのよ。
モナ香ちゃんの口を通して、モナ香ちゃんが拾っている音が聞こえます。物流課、生産管理課にご挨拶されています。なかなかクリアーに聞こえますね。まるで隣にマキちゃんがいらっしゃるようですわ。じゅるっ、やみつきになりますわね。
続いて検査課まで来られました。ここで本能寺様がどなたかに呼ばれたようで、マキちゃんはお一人にされてしまいました。お一人で不安と思われますが、マキちゃんはけなげにも検査課唯一の女性の若鮎朝海様に話しかけられたようです。
お二人の会話がよく聞こえますね。
『あなた達今年の新入社員研修でのことなんだけど、なにかあったと聞いてるわ。なにがあったの?』
おや、これは若鮎様のようです。この方はどなたから情報をいただいたのでしょうか?
『それじゃあ、今年の新入社員は全員第二世代のMoNStErを一人ずつもらったそうだけど、あなたのMoNStErはどんなのかしら?』
若鮎様の意図が見えません。この方はそれを知ってどうしようというのでしょうか?
『ふーん、雪ちゃんっていうの?今度会わせてね?』
純真無垢なマキちゃんをだまして誘導質問するとは。しかもこの女、雪ちゃんのことをもともと知っているようなそぶりですわ。怪しいですわね。
『そう?じゃあ総務課の衣奈さん。わたしあのタイプ嫌いなんだよね。清純そうでおとなしそうだけど、裏でなにをやってるかわかったものじゃないわよね?ね、聞いてる?』
ふふふ、よくご存じですわね。女の子には秘密がございますのよ。もちろんわたくしも若鮎様が大嫌いでございます。マキちゃんを困らそうなどと、1520年お早いですわよ!
『あ、あの!メルちゃんはあたしの友達で、あたしはメルちゃんのことが大事で、大事な友達がそんな風に言われるととても悲しくて』
ああーっ、わたくしもマキちゃんが大事で大事で大好きですわよー!わたくし執務室の中心で愛を叫んでしまいますわ!ふぅっ、うれしすぎてめまいが・・・。
若鮎様が感情的になられてマキちゃんをいじめております。わたくし決定いたしました。若鮎様を敵認定いたします。今後この方の動向を調査して、あわよくば排除する意向にございます。
マキちゃんが検査課隣の会議室からご退席されたあと、若鮎様がどなたかへお電話されています。
『もしもし、わたし。鉄火マキって子に接触できたわ。あの子なにも知らないじゃないの。でもMoNStErのパートナーがいて、雪ちゃんと言っていたわ。そう。それでね、四月二十六日に組合の青婦部の歓迎会でJIMに行く件なんだけど、あの感じだとMoNStErも連れて行きそうな感じが・・・・・』
なるほど。この方はどこかへ密通されているということですね。
この方もモナ香ちゃんの常時監視対象に入れておきましょう。




