第1話 11
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次は第三プラント。通称3P。ここでは第一世代のMoNStErを製造している。雪ちゃんの兄弟姉妹が生まれて来るところなんだよ。あたし楽しみにしてたんだ。
と思っていたが、中に入ってみてがっかりした。
今まで見学してきた職場のなかで一番汚いのだ。しかも第二プラントよりも臭い。
こんなところで生まれて来る子達が可愛そうなくらい。
「センパーイ。ここって、これでいいんですかー?あたし、なんか残念なんですけど」
「うん。俺もここは初めて入ったがひどいモノだな。こんな状態だと不安全だし品質が不安だな。これは直ぐにでも改善させないと」
あたしと先輩の横を200リッターのドラム缶を斜めに立てて手で転がしている人が通った。
「あー、君。ドラム缶を手で転がしちゃだめだよー。ルール知ってる?」
「はぁ?こうしないと時間がかかんだろうが!安全なんて誰が守るんだよ!いままでこうやって事故ったことねーんだよ!」
うわあ、今時ヤンキーとか?どこの山猿だよ?
「俺たちは環境安全課だ。今日は新人を連れて各工場を廻っているんだが、不安全行動を堂々とするなんて教育に悪いな」
「げ、環境安全か?やべ。えーと、今日はたまたまドラムが軽くて-」
なんて下手な言い訳だよ。
「えと、初めまして。あたしは今年入社の鉄火マキといいます。よろしく・・・」
「はぁ?お前男か?お前みんなに言われんだろ?マグロって」
その瞬間、あたしの回し蹴りが炸裂!する筈だったが、慣れない安全靴だったのと、床に溶剤がこぼれていたので、勢いで滑ってしまった。
「うおぉ、あぶねぇ!」
ヤンキー猿男があたしが倒れそうになるのをかばって下になってくれた。あたしはヤンキー猿男の上に腹ばいになってしまう。
「うわぁっ!」ヤンキー猿男と顔が近くになってしまい、危なくキ、キッス?してしまうとこだった。あたしの唇はまだ誰にもあげないよ!・・・早くだれか奪ってよ・・・。
「なにすんのよ!」あたしは飛び起きて、倒れているヤンキー猿男のお腹を思いっきり踏んでやった。
「おーい、マキちゃーん。工場のなかで暴力行為は、だめだよー」本能寺先輩が申し訳なさそうに注意している。
あたしは怒ったまま、倒れているヤンキー猿男をそのままにして、3P建屋から出て行った。
「あ、製造設備とか見るの忘れてた」
工場を廻るって大変。結構疲れた。先輩も疲れている。精神的に?
「えーと、それじゃあ工務経由で旧事務棟に帰ろうか」
月平のいる工務を見てからようやく環境安全課の事務所に戻ってきた。
新任の挨拶ってこんなに疲れるものだったんだ。毎年みんなよくやってるよね。
「お前、なんで行く先々でトラブルを起こすんだ?」
「あたしが巻き込まれたんです!見てなかったんですか?」




