第1話 10
10
ここから製造エリアに向かう。最初は第一プラント。通称1P。工場自体かなり大きい。塗料の原料であるワニスとか樹脂とかレジンとか呼ばれているモノ(呼び名がちがうだけ)を作っているそうだ。工場の外観はよく写真でみかける化学プラントの感じ。わけのわからないタンクや配管が繋がっていてカッコイイ!
先輩によると、ここではアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂を作っているそうだ。あたし化学っぽい名前苦手。たぶん一瞬で忘れる。もう忘れた。
第一プラントの中には入れてもらえなかった。なんでも制御するためのパソコンとかがいっぱいあって、あたしのような素人が入ってナニかすると、爆発する恐れがあるので拒否されたのだ。もっと勉強してから来い、ということらしい。失礼な!
次に第二プラント。通称2P。この三崎工場で一番大きなプラントだ。ここだけで六十人の人が働いている。重防食用(橋とかタンクとか塗ってるらしい)、船舶用、自動車用の塗料製品を製造している。乱ちゃんのいる生産管理課といつも工程や納期のことで喧嘩しているらしい。でも工場では比較的安全とか進んでいるそうだ。本能寺先輩じゃなくてここの人にいろいろ教えてもらおう。
第二プラントの入り口から入ると、途端に有機溶剤臭いがきつくて、あたしはむせてしまった。
「ここ臭いですよー。大丈夫なんですか?」
「え?なんのことだ?オレは全然臭わないけど?」
そんなことは無いはずだ。びっくりするくらい臭い。防毒マスクをしないと中毒で死んでしまう。みんな臭いに慣れて鼻が馬鹿になってるんじゃないの?
工場の中は臭いはともかく、明るくて広々とした空間に金属製のタンクがいくつも並んでいた。大きくて床に足が立っているモノ。小さくてタイヤがついているモノ様々だ。そのタンクの周りを作業者の人が何人も忙しそうに歩き回っている。
「こら!そこのお前!作業服はきちんと着ろ!裾や袖をまくるんじゃない!」
後ろから急に怒鳴られた!なに?なにが起こったの?
鬼のような形相をした年配のおじさんがこちらへ向って歩いて来た。
「げ、狩場沢部長!」本能寺先輩が一人だけ逃げようとする。
さっきお部屋行った時に留守だった人だよね?なんでそんなに怒ってるの?もしかして怒られてるのあたし?
「こら、そこのちっちゃいの!お前だ!こんなふざけた格好するなら工場から出て行け!出入り禁止だ!」
え?いきなり理不尽な!
「あの、あたしに合うサイズがなくって、合うサイズの作業服ができるまではこれで我慢しろって、それで、その・・・」
「ん?お前今年入社の女の子か?男かと思ったぞ!すまんな、はっはっは!」
なにが、はっはっは、よ!失礼すぎるでしょ!
「部長、すいません。こいつ小さすぎるので。しばらくこれで勘弁して下さい。工場内で変なことはさせないので」
二人とも失礼過ぎるでしょ!あたしがなにしたっていうのよ!
あたしがふくれてると、部長が
「まあ、期待してるぞ!名前は、ええとマグロだったか?」
「部長ひどい!あたしは鉄火マキです!」思わず部長の足を蹴ってしまっていた。
「あ、つい。ごめんなさい!」
「いいぞー!今年の新人は元気があって!うん。楽しみだな!」
あたし思いっきり蹴った筈なのにぴんぴんしてる。この人強すぎる。恐るべし製造部長!




