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第1話 1

第1話 時間を少し巻き戻します


1

 「もう今日はこれで帰って、雪ちゃんとまったりとお話しててもいいですか?」

 先ほど、雪ちゃんと感動の再会をはたしたあたしは、感動しすぎてぐったりして、もう仕事しないで帰りたくなった。

 「お前馬鹿か?いま来たばっかりだろうに!しかも初出社の日だろ!」


 あたしは今日ここ三崎工場に配属になり、ずっと会えないでいた雪ちゃんとやっと会えて、大泣きしたばかりだ。

 「どうせ一週間検査入院してたんですから、一日くらい多めに見ても・・・、いだだ!」

 本能寺先輩はあたしの頭を容赦なくげんこつで締め付けた。痛いよ、もう!

 「レイカ、なんとか言ってやってくれ。お前の妹様は帰りたいそうだ」

 「マキちゃん、こんなむさ苦しいところだけど我慢しなさい!めっよっ!」

 あたしのお姉ちゃん、鉄火レイカはここの社員でもないのに、この事務所に入り浸っているらしい。この会社のセキュリティーってどうなってんの?


 「はぁーい。わかりましたー」

ふてくされた声でしぶしぶ了承する。

 「おまえは先輩に向かってそんな態度を取っていいと思ってんのかぁー?」

 もう一度ぐりぐりされそうになるので、さっとよける。あたし運動神経だけはいいんだかんね!

 「それから、おまえとか妹って呼ばないでくださいよ!あたしには鉄火マキって名前があるんですから。鉄火さんって呼んでもいいんですよ?」

 「あ、いやそれは、ちょっと呼びにくいかな?」先輩が困った顔で下を向く。そんなに呼びたくないの?

 「鉄火さん、かー。懐かしいわねー。あなたがわたしにプロポーズしてくれた時まで、そう呼んでいたものねー」

 お姉ちゃんがまたもや先輩の過去を暴く。やめてあげてよー。

 「おまえ、あのときおまえは即決で断ってきたくせに。人の古傷をことあるごとにえぐるなよ。かんべんしてくれよー」

 あたしは先日、先輩がお姉ちゃんに結婚を申し込んでいたことを初めて知った。なんて勇気がある人だ。きっとその時まで本性を知らなかったんだね。

 「なによ」お姉ちゃんがぷいっと横を向く。そして小声ででぼそぼそと言っていた。

 『あなたがもう一度言ってくれるまで、あたしはずーっと言い続けるんだから・・・』


 「お姉ちゃん、ずーっとってなに?」あたしは人のぼそぼそは決して聞き逃さない。別名地獄の地獄耳と呼ばれている。

 「な、なんでもないわよ!それよりもマキちゃん、しっかり勉強するのよ!量(りょう)もマキちゃんのことたのむわよ!それじゃね!」

 急にこちらに矛先を向けてきたと思ったら、赤い顔をしてあっさり帰ってしまった。よほど忙しいんだね。お姉ちゃんお疲れ様でした。


 「君の呼び名はもう『マキちゃん』でいいや」

 先輩が疲れた声で投げやりに決めてしまった。そんなに嫌なの?鉄火さんて。


 「えーと、お昼までもう少し時間があるから、安全教育を少しやっておこうか?」

 「そーですね。あたしがなんで急にここに来たのかと、この職場がなんなのかも教えて下さいよ?あたしいきなりで知らなかったんですから」

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