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第4話 2

今回はメル視点になります。

2

【メルレポート 第四報ですわよ!】


 わたくしは現在、マキちゃんが検査入院している病院の、マキちゃんのお部屋にいます。

 

 「メルちゃん、このケーキ、とっても美味しいよ!」

 わたくしはマキちゃんを餌付けするために、毎日ケーキとかお菓子を差し入れて一緒にお茶しております。マキちゃんがわたくしなしで生きられなくなるのはもうすぐです。

 「今日は戸塚のカナールさんのインペリアルをお持ちしましたの」

 「それにしても変だよね?あたしの病室のドアに大きく、『絶対安静、面会謝絶』って紙が貼ってあって誰も入れないのに、メルちゃんは誰にも止められないんだね?」

 ぎくっ。マキちゃん鋭すぎますわ!マキちゃんを舐めていました。

 「ほほほ、不思議ですわねーっ」


 マキちゃんが検査入院しているのは『横浜衣病院』。つまり衣カンパニー経営の病院なので、わたくしの言うことはなんでも聞いてくれるのです。もちろん、研修後一週間の検査入院が必要となったのも、わたくしが裏で手をまわしたおかげですけど。

 ふふふ、わたくし丸々一週間、マキちゃんを独占できるのです!

きちんと、わたくし以外誰も病室に入られないように手配しておりますから!


 マキちゃんは病室の窓から見える横浜ランドマークタワーを眺めて、「展望台登ってみたいな。みなとみらい走ってみたいな。中華街で小籠包食べたいな」と毎日おっしゃっています。お可愛そうに、退院した暁にはわたくしが毎日でもお連れいたしますわ!

 マキちゃんは時々寂しそうな表情をされることがございます。きっと雪ちゃんのことを思い出して心を痛めていらっしゃるのでしょうね。マキちゃん、わたくしを雪ちゃんとお思いになって愛でて下さってもよろしいですのよ!

 

 わたくしは、すでに研修翌々日から三崎工場へ出社しております。

 マキちゃんのお姉様の家が鎌倉ということを知ったわたくしは、急遽鎌倉で暮らしている弟の屋敷に潜り込みました。当然弟は抵抗しましたが、無理矢理にわたくしのお屋敷の使用人共々お引っ越し致しました。

 弟は春から鎌倉の高校に入学する為にお屋敷を一軒購入していたので、新しくお屋敷を探す手間が省けて、わたくしラッキーでしたわ。

 今はわたくしの運転手に運転させての通勤ですが、マキちゃんが退院したら一緒に電車通勤!きゃっ、わたくし楽しみで楽しみでおかしくなりそうです!


 「そーいえばさー、あの、月平?あいつはどうしてるのかなぁ?なんて」

 マキちゃんがもじもじしながら、急にあの南部様の名前をお出しになった!

 「あのさ、あのとき月平に助けてもらったじゃん?あたし未だにお礼言ってなくてさぁ。なんて言うか、勢いで延髄斬りもしちゃってさ。あのあと一度も月平と話する機会がなくってさぁ。あはは」

 そうなのです、南部様はわたくしとの約束、いいえ掟を破ったので、マキちゃんへの接近を阻止しているのです!俗に言うインターセプトっていうモノですわ!

『イエスマキちゃんノータッチ』の掟を破って、どさくさに紛れてマキちゃんを抱きしめるなんて!わたくしがさりげなくマキちゃんに抱きつくシミュレーションをコンピューターで十万通り計算しても答えが出ないというのに、あの男は!


 そうそう、これはまだマキちゃんへは伝えていないのですが、三崎工場でのマキちゃんの配属先がいつの間にか変更されていました。マキちゃんは物流課で、わたくしの総務課と同じお部屋なので、いつも一緒にお仕事が出来ると楽しみにしていたのですが、わたくしの知らないうちに別の課に異動させられていました。

 衣カンパニーの化学部門を統括するわたくしに黙って、マキちゃんを異動するとはいい根性をしていますわね!と調べてみたところ、これはわたくしよりももっと上の権限、会長の御祖父様からのご指示のようなのです。


 御祖父様、この報告書をお読みになっておられますか?

 わたくしは御祖父様を大好きですけれど、わたくしぷんぷんでございますわよ!

 わたくしがマキちゃんの報告書での呼び方を「マキ様」から「マキちゃん」に変更したのも、今までの報告書をお読みになった御祖父様から、「メルちゃん、堅いよ、堅いわー、もっとフランクにしてねー」と御指示があったからなのですよ?

だいいち御祖父様はいつも・・・・・。

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