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第3話 10

10

 研修センター前の駐車状に停めてある、お姉ちゃんの真っ赤なスポーツカーと本能寺さんの薄汚れた臭そうな茶色のバンの二台にあたし達七人(あたし、お姉ちゃん、メルちゃんと乱ちゃんの女四人、本能寺さん、層君と月平の男三人)が分乗することになった。しかしここでも小競り合いがあった。ホントに急いでいるんだよね?


 「わたしのスーパーグレートロードスターGTエクセレント2042年型は頑張れば三人乗れるので、わたしとマキちゃんと、後部座席にあと誰か一人乗れるわよ」

 「俺のかっこいいバンは五人乗れるぞ。後ろの荷物を片付けて、三列目のシートを出すとなんと七人まで乗れるからな!MoNStEr達も隙間に乗れるぞ!」

 「はい!わたくしマキちゃんと一緒に乗りたいですわ!」メルちゃんが一番に手を挙げた。

 「そうやったら、ウチ女の子で一人だけ臭そうなバンになるやんか。いややで」あ、臭そうって言っちゃった。

 「うーん。ここはじゃんけんで決めてみたらどうかしら?わたしの車の後部座席に座る権利を」


 「せ、狭い」月平がお姉ちゃんの赤い車の後部座席に座っていた。いや収まっていた。

 じゃんけん大会でなぜか月平が優勝してお姉ちゃんの車にはあたしと月平が同乗している。月平の席の隣の足下スペースではシロヒョウのしろちゃんとカメレオンのロゼッタさんも窮屈そう。月平はでかいので助手席の方がよさそうだったが、お姉ちゃんが嫌がったので、後ろで体を曲げて苦しそうにうなっている。


 「出発で時間を取ってしまったから、ちょっと飛ばすわよん」

うん?今時の車はみんなオートパイロットなので、スピードは出せない筈だ。正殿達のトラックもそれでアジトに着くまでに時間がかかっていた筈だ。


 「!!!!!」激しい加速!電気自動車のモーターが甲高く響く!モーターが極限まで高速回転している音だ!なんでこんな加速ができるの?

 いつもはお姉ちゃんは、車の運転は人工知能の自動運転に任せていつも寝ている。(完全自動運転でも運転席に座る人は必ず起きていなければならないんですよ。寝るのは道路交通法で違反ですので皆さんはおやめ下さいね!)

 お姉ちゃんが車を自分で運転するのを初めて見た。免許持ってたんだ。(自動運転でも運転席に乗車する人は免許が必要ですよ!)


 ここは山の中なので道路もくねくねとヘアピンカーブだらけだ。助手席のあたしはともかく、後部座席の月平は早くも顔が青くなっている。「月平君、リバースしたら殺す」お姉ちゃんが優しく警告した。

 やがて中央道に入り、ようやく横Gでシェイクされることはなくなった。月平もぎりぎりリバースしなくて済んだみたい。命拾いしたね。

 もう一台のバンはお姉ちゃんの車に追いつくことが出来ず、とっくに見失っていた。ま、そのうち追いつくでしょ。


「さあて、月平君、聞かせてちょうだい。あなたマキちゃんばかり見てるけどお?」

え?月平なんであたしを見てるの?初対面で怒鳴り散らしたから恨みがあるとか?

 「えっ?いや、その、えーと・・・、そ、そう!だ、大学の陸上で!」

 「ん?月平陸上やってたんだ?」

 「そう!去年の神奈川での学生陸上、俺ハンマー投げ出ててさ、憶えてないかな?」

 「んー、たしかあたし女子10000メートルに出てたんだよね?」

 「その時さ、一度会ってるんだけどな?トイレの近くで」

 「えー、あんないっぱいの人いるのに憶えているわけないよー。やだなー、覗き?」

 「俺がさ、トイレ行こうとしたときに、建物の角から飛び出してきて、ぶつかったのが君だったんだけど?」

 「あー、そう言えばなんか大っきい人とぶつかったな-。それ月平だったんだ!大きすぎて顔見えなかったやー。あはは。でも、なんであたしの名前憶えてたのさ?」

 「えーと、ゼ、ゼッケン、かな?」そーだっけ?ゼッケンには学校名と番号しか書いて無くない?

 「ふーん。そーなんだ。モノ憶えいいんだねー」ま、いっか。


 「ふーん。それだけー?他にも何か隠してない-?お姉さんに教えてくれないかな-?『げっくん?』」げっくんってなに?

 「ぶふっ!」後部座席で月平が吹き出した。汚いなー。リーバースしたら命ないよ?

 「マキちゃんはもう少し人を疑うことを覚えたほうがいいわよん」

 なんで?あたしじゅうぶん疑い深いよ?今だってお姉ちゃんの運転信じてないもん。いつ事故るか。

 「まあいいわ。でも、マキちゃんに手を出したら再起不能になるかもね?」

 「はい!もちろんであります!」月平も直立不動だ!車の中では狭くてエビぞりだけど。

 雪ちゃん本当にごめんよ。こんな緊張感のない人達と助けられるか自信なくなって来ちゃったよ。急いでるんだけどね。


 少し車を走らせていると、車内の後方接近の警告アラームがピピピと鳴り響く。振り向くと後方から大きな紺色のダンプトラックがものすごい勢いで迫ってきた。しかも運転席には誰も乗っていない!

 「んー、なにか良くないものが来てるようね-」それって悪い者のことじゃないの?

 「わたし、こーゆーの苦手なのよねー。あ、もしもし量?なんとかしなさい」

お姉ちゃん。運転中の電話も禁止ですよ!って、何とかなるモノなの?

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