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第3話 6

6

 夕べは何事もなく、研修五日目の朝を迎えることが出来た。世の中の社員研修ってこんなにタイヘンだったんだ。サラリーマンなめてたよ。諸先輩方ごめんなさい。社畜の皆様お体にお気を付けて。

 説教くさい本能寺さんに近寄ると余計なことを長々と話しだすので、出来るだけ会わないようにしよう。あれかな?理系オタクで自分が知っていることをべらべら話さないと気が済まないタイプかな?面倒くさいタイプ栄えある第一位だ。本能寺さんじゃなくて、おっさんと呼んでやる!


 食堂で朝食を女の子達ととっている時、メルちゃんのパートナーのモナ香ちゃんの耳が急に大きく動き出した。

 「なにか人の足音がエントランス近くに接近しています!これは二人ですね。ゆっくりと歩いています。距離は、およそ二十メートル、十五メートル、十メートル・・・・」いつものやる気のないモナ香ちゃんと違って、きりっとした表情で(に見えた)てきぱきとナニモノかの接近を告げる。やはりウサギは耳がいいんだね。


 隣のテーブルでは層君、月平、本能寺おっさんの三人が一緒に食べていたが、それを聞いて層君が静かに微笑みながら立ち上がった。

 「いよいよ敵の本体がきたのかも知れないね。お出迎えしてあげようか」


 「マキちゃんは雪ちゃん連れて二階の奥の方の部屋に避難しといて!」

 あたしは雪ちゃんと階段を上ろうとしたとき、既に敵はエントランスのガラスドア前に到着しており、あたし達を既に見つけていた。

 「さあ、おとなしく第三世代をこちらへ渡してもらおうか」大きく廊下に男の声が響いた。声でかいよ!

 「南部様はマキちゃんをお守り下さい」メルちゃんがあたしを月平の後ろに押しやった。


 「久しぶりだな、本能寺!」二人いる相手のうちコートを着た背の高い方がおっさんの名前を呼んだ。知り合いなの?知り合いだったらおとなしくお引き取りいただこうよ!

 「ふん。正殿(せいでん)か、相変わらずこんなことしてるのか。お前らの狙いはやはり第三世代か」

 あまり仲良しではなさそうだね。お引き取りは無理そうだね。

 「どうしても第三世代を欲しいとおっしゃる方がいてな。それに俺も興味があるからな」

 「昔のお前は人のものを欲しがらなかったけどな。まあ、あきらめてもらおう」


 「あら、層と乱お姉様までお揃いで。ご無沙汰しておりますわ。二年ぶりでしょうか?ほほほ!」

 もう一人の背の低い方は女の子だった。顔立ちは整っているが目がキツそうで、長いさらさらの黒髪に真っ赤な振り袖を着た場違いな女の子がいた。というか、こちらも層君達の知り合いなの?この業界狭すぎ!

 女の子の声を聞いた時、層君がびっくりした顔で女の子の方に向かって叫んだ。

 「お前、吹雪か?今までどこへ行っていたんだ?散々探したんだぞ!」

 「こら吹雪!あんたまさか『カーバンクル』へついたんか?」乱ちゃんもかなり驚いている。

 「ほほほ、相変わらず暗いわね、層。乱お姉様もお恐いこと」層君は暗くないよ!ちょっと明るくないだけだよ!


 「そこのあなたは初めまして、ね。あたくしは双子の幼なじみの黒糖吹雪(こくとうふぶき)っていうのよ。そうね、層の元恋人だった、といえばわかりやすいかしら?

 でも、別に憶える必要はないわよ」

 「もう二度と会うこともないでしょうからねっ!正殿、やっておしまい!」

 自称元恋人は隣の男に指示すると、男はコートのポケットからこぶし大の黒い球体をあたし達の方に向かって放り投げた!あれはモン○ターボールか!?中からモ○スターが出てくるの!?

 黒い球体は敵とあたし達の中間くらいの床に落ちると二つに割れて、なかから黒い蜘蛛が何十体もわらわら出てきた!あたし蜘蛛と熊は苦手なの!

 蜘蛛はがちゃがちゃと音をたてながらすごい勢いであたし達の足下まで迫ってきた。ロボットだ!

 「ぴょん吉、頼む!」層君がエロガエルのぴょん吉に言うと、ぴょん吉は大きく口を開いて、ロボット蜘蛛を次々と長い舌でからめて食べ出した!こんなこともできるの?エロいだけじゃなかったんだ!

 あっという間に全部の蜘蛛がぴょん吉の口の中に吸い込まれてしまった。なかなかやるねー。きもいけど。

 と、安心していたのもつかの間、急にぴょん吉があたしの方に向かって跳ねてきた!あたしはびっくりして転んでしまった勢いで、ポケットの中の雪ちゃんが床に落ちてしまった。

 なんとぴょん吉は舌を出して雪ちゃんをぺろりと飲み込んでしまった!え、ウソ!?カエルが蛇を食べちゃった!?

 びっくりしているあたし達を尻目に、ぴょん吉は敵の方に飛び跳ねながら行ってしまった。

 「ぴょん吉なにをするんだ!雪ちゃんを返せ!」層君があわててぴょん吉を追いかけようとするが、既にぴょん吉は敵の足下に着いていた。なんか操られているみたいだ。

 「ほほほ、相変わらず甘いわね、層。あたくしがなんの準備もなくあなたたちの前に姿を現す筈がないでしょうに。カエルが飲み込んだのは、対MoNStEr兵器、『コントローリングスパイダー』」よ。あなたのカエルはもうあたくしの言うことしか聞かないわよ。第三世代はもらったわ。それじゃあねー」

 そう言う敵に向かって、突然月平が突進していった。月平は男の方に殴りかかったが、男は軽く月平をいなして、なおかつ足払いで月平を転ばして押さえ込んだ。こいつ強い!月平弱い!

 男が指をパチンと鳴らすと、男達の後ろから大きなトラックがセンターのエントランスにバックで突っ込んできた!今の指パッチンは運転手に聞こえたの?いいえあたしは冷静

に突っ込んでいる訳じゃなくて、相当パニック状態でよくわからないことを口走っていたのですよ。

 「雪ちゃん!」かわいそうに、カエルの口の中で気持ち悪いでしょ!

 敵の二人とぴょん吉はトラックの荷台に飛び乗ると、トラックは急発進して来た道を戻っていった。あたし達は走ってトラックを追いかけていったがトラックの速度に敵うはずもなく、途中で見失ってしまった。

 まさかこんなにあっさりと雪ちゃんが敵に奪われてしまうなんて!

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