第3話 5
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【メルレポート 第二報】
マキ様のパートナーの雪ちゃんが間違いなく第三世代であると、衣ケミカル社員の本能寺様が断言されていました。
この度の新入社員研修前に巷で流れていた噂では、レイカ様の研究所で第三世代「MoNStEr」が出来ているとの話もありました。しかし、わたくし達の調査ではデマで、「第三世代はまだどこにも出来てはいない」と結論付けられていましたのに。
雪ちゃんのタイプは第二世代としては非常に珍しいと思っておりましたが、まさか第三世代であったなんて、さすがのわたくしも驚きを隠せませんでしたわ。
もしも雪ちゃんが本当に第三世代だった場合、世界初の快挙ですし、世界中の研究者、企業が雪ちゃんを一目見ようと押し寄せるのは明らかと思われます。中には大金を出してでも手に入れようとしたり、犯罪まがいのことをする輩も出てくる恐れがあります。
といいますか、既にわたくし達は敵の襲撃を受けている最中なのです。
わたくし達の推定では、敵の正体は二年前の襲撃と同様に『カーバンクル』の方々だと思われます。
本能寺様より、雪ちゃんが第三世代とおっしゃられる前に、わたくしは既にマキ様と雪ちゃんをお守るすることを最優先と決めていました。敵の目的が雪ちゃんだと推定していたからです。エージェントの乱様、層様はご協力いただけることになったのですが、戦力増強のためにもう一人、頼りになる方を仲間に引き入れることに成功いたしました。
契約内容を公式記録として残すために、以下交渉経過の録音データを添付いたします。ちなみに録音はわたくしのパートナーのモナ香ちゃんによります。
「俺に話があるそうだが、一体何の用だ?」
「はい。実は南部様にお願いがございまして。鉄火マキ様のことですが」
「鉄火・・・、マキがどうした?」
「恐い顔をなさらないで下さいます?わたくしどもの調査では、南部様はマキ様とは古いご友人であるとのことですが?」
「っ、どこでそれを知った?いや、愚問だな。それを知ってどうするつもりだ?」
「特段なにも。ただ、わたくしは南部様に協力して差し上げたいと思いまして」
「どこまで知っている?」
「マキ様が小学生のころに蛇に咬まれたこと、そしてその場に南部様がおられたこと、さらに南部様がマキ様をお助けしたこと」
「俺はマキに小学校の時のことを言うつもりはない。そもそもあいつは忘れているからな」
「はい。それから高校二年生の時の空手道全国選抜大会男子個人組み手での優勝、三年の時の決勝戦で相手に怪我をさせて準優勝。その後空手道を引退したこと。大学時代に陸上の砲丸投げに転向してからは一度も空手をされていないことも」
「あー、わかったわかった、もういい!お前の言いたいことは何となくわかる。俺に何かをさせようとしている、ということだな? 」
「わたくしは、この研修期間に限って、南部様にマキ様をお守りしていただこうとお願いに参りました」
「それはどういうことだ?」
「わたくしが得た情報によると、マキ様のパートナーの「雪ちゃん」はとても珍しいタイプとのことです。既にこの研修センターの周辺に不審な者達が集結して来ているようです。おそらく狙いは「雪ちゃん」かと思われます。もしも「雪ちゃん」を奪われるようなことになれば、マキ様は相当悲しまれることと思われます。
さらに言いますと、これはマキ様だけの問題ではなく、「雪ちゃん」を奪われることは、『雪ちゃん』及びマキ様をお預かりしている当衣カンパニーの信頼を失うことになりますし、最悪は日本国の国益を失うことにもなります」
「なんか変だと思ったら、あんた衣カンパニー会長の孫娘だったんだな」
「その辺はご想像にお任せいたします。
わたくしからこの場で直ぐに南部様にご呈示出来る報酬といたしましては、研修期間中限定になりますが、マキ様と一緒にいられる時間をできるだけご提供いたします。そのなかでマキ様と親密になれるかどうかは南部様の努力によりますけれども」
「言っておくが、俺はマキを好きとかそんなんじゃないんだからな。そんな報酬は別にいらな・・・、いや、うん、それでいい。今はそれが一番の報酬だな」
「ふふふ、それでは交渉成立ということでよろしいでしょうか?」
「俺にとっては頼まれなくてもマキを守ることに代りはないからな。マキと一緒にいるようにくれぐれも協力してくれよ。腹黒お嬢様」
「それはほめ言葉として受け取っておきますわ」
「それから、大事なことをお伝えする事を忘れていましたわ」
「合い言葉は、『イエスマキちゃん、ノータッチ』ですわよ」
「なんだそれは?」
「つまり、マキ様に決していかがわしいことをしてはいけませんよ。ということです」
契約通りに、南部様はマキ様を林の中、研修センターの中、と二度にわたって見事に敵の襲撃から守り抜きました。
わたくしは約束通り、マキ様がお一人の時を狙って、本日の夕方に南部様とお二人でお話をさせてあげようとしたのですが、わたくし達のお部屋には既に層様が控えておりました。マキ様は層様のことを少なからず意識されていることは明らかでした。しかし、層様は二年前から恋人の吹雪様をお探しになっておられるほど、吹雪様を大事に思っていらっしゃるのは存じておりましたので、マキ様との関係は全く心配はしていませんでした。
わたくしの計算では層様に恋の告白をしようとしたマキ様が見事にお振られになって、傷心でたたずんでいるところに、南部様がお慰めに行かれて、二人の距離は少し縮まる、となる筈でした。
ところが、南部様は折角の機会を逃して、一人で去って行かれました。全く何を考えていらっしゃるのでしょうか?これはこれでわたくしにとっては好都合なのですが。
わたくし正直を申しますと南部様と二人で交渉していたとき、南部様が恐くて恐くて膝ががくがくと震えておりました。
南部様はあの通りお体が大きく、お顔も無表情でなにを考えていらっしゃるかわかりにくいのです。さらに無口で無愛想でとても恐ろしい風貌をされています。しかもわたくしは同年代の男子と二人っきりでお話ししたことは一度もないので、男の方は恐いのです。
南部様は高校時代は空手道チャンピョンなので、もしもご機嫌を損ねて乱暴に及ばれた場合、わたくしに抵抗するすべは全く無いのです。
わたくし本当に泣きそうだったのです。最後までよくポーカーフェイスで話し終えたと、本当に金メダルをあげてもいいくらいすごいことを成し遂げた、あの時のわたくしをほめて差し上げたいです。
マキ様はよくもあのような恐ろしい殿方に暴言を吐き、あまつさえ蹴りを入れるなんて、とても勇気のある方と、今更ながら感服いたします。さすがわたくしのマキちゃんです!ますますマキ様がいとおしく・・・・。
失礼いたしました。つい本音を。
いずれにしても、研修期間中はお約束通りに南部様への協力は行いますが、研修が終了した暁にはあの殿方からマキ様をお守りするために、全身全霊を持ってマキ様への接近を阻止する所存です。そのときが楽しみでございます。うふふふ。
それともう一つ。わたくしの勘なのですが、あの天王寺様という男、非常に危険な香りがします。
マキ様と初対面にもかかわらず、まるで水と油のように反発しあっていました。しかしながら、わたくしがいままで経験してきた、数多くの乙女ゲームでは、最初に反発し合った男女が最後に結ばれる王道のパターンが非常に多いのです。
あの男は絶対にマキ様に近づけてはいけません!南部様よりももっと警戒が必要です!もしもの時は直ぐに邪魔を出来るように、常に監視が必要です!
こほん。本題から外れてしまいました。
この度の新入社員研修。わからないことが多すぎます。
なぜ、衣ケミカルの新入社員に第二世代のモニターをさせたのでしょう?
なぜ、責任者のわたくしの反対を押し切ってモニターが実施されたのでしょう?
なぜ、エージェントのお二人が新入社員として参加されていたのでしょう?
なぜ、レイカ様の妹君のマキ様が入社されることが秘密にされていたのでしょう?
なぜ、レイカ様のところで第三世代が出来たと言われているのでしょう?
なぜ、第三世代の情報がリークされていたのでしょう?
なぜ、犯罪集団がここを襲撃してきたのでしょう?
なぜ、レイカ様は本能寺様をここへ送り込んで来たのでしょう?
なぜ、犯罪集団は最初から雪ちゃんを狙ってきたのでしょう?
なぜ、第三世代といわれる子が衣ケミカルの新入社員研修にいるのでしょう?
なぜ、わたくしが第三世代らしき子が研修に入ってくることを知らなかったのでしょう?
そして、
雪ちゃんは本当に第三世代なのでしょうか?
第三世代っていったいなんなのでしょうか?
なぜ、雪ちゃんのパートナーがマキ様なのでしょう?
この疑問をつなぎ合わせると・・・・。




