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第3話 4

4

 その時、センター一階のエントランスの方からガラス何枚も割れる音と、人の怒鳴り声や争う音が聞こえてきた。何事!?

 とっさに月平があたしをベットから抱きかかえて、(またもやお姫様だっこで!)部屋から廊下へ出て行こうとした!

 「なにすんのよ!あんたもヘンタイの一味なの!?やめてよ!おろしてよ!」

あたしはなにが起こっているかわからず、月平の上で足をばたつかせる。


 その瞬間、部屋の外に面しているガラス窓が割れて、外から誰か黄色い人が入ってきた!ここ二階だよ!?

 「まーた会いましたねー♪ジャージガール!あーなたーの竜田揚紅茶がー、会いに来てー、あげましたよー♪」

この調子っぱずれの歌声はヘンタイ一号!逃げてたんだ!

 「お姫さまーは、あたしーが代わりにー、抱っこしてあげるよー、らららぼんぼんぼんぼんぷー♪」

また踊り出した!いよいよ意味がわからない!あたしは恐すぎて、いつの間にか月平の首筋にしがみついていた。

 「みんなはー、たっくんとかー、こうちゃんとかー、呼んでいますよー♪あなたにーも特別にー、呼んでも-いいー、許可をー、あーげーるー♪」

呼び方なんてどうでもいいじゃん。ヘンタイ一号で!

 「さあ、あなたのかわいい子を、わーたーしーに、くーださいねー♪」

 たっくんが(あ、間違った)じゃなくて、ヘンタイ一号があたしに襲ってきた。とっさに月平が足でヘンタイ一号を蹴ろうとする!しかしヘンタイ一号は素早く避けると、カウンターで月平の腕にパンチを入れてた!月平はかなり痛そうだ!やはりあたしを抱っこしたままでは動きにくいんだね!ごめんね重くて!

 「月平、降ろして、あんた怪我するよ!」

 「だめだ!マキは俺が守る!今度こそ守るって決めたんだ!」

なにその男前発言!まさかのプロポーズ?まだだめよ!あたし達会って間もないでしょう!?

 「だーめーだよー♪あきらめーてー、げふっ!!」

ヘンタイ一号の背後から、乱ちゃんが思いっきり回し蹴りを入れて、ヘンタイ一号はベットの反対側まで吹っ飛んでいった!乱ちゃんはヘンタイ一号の隙を狙っていたらしい。

 「今度こそきちんと気を失ったようやな。南部、あんたようやった!しかし奴らはほかにも入って来とるようや」

 ヘンタイ一号を倒したあと、月平はあっさりとあたしを床に降ろした。

あれれ。えーと、まだ抱っこさせてあげててもいいのよ?いやいや、あたしには層君という心に決めた人が・・・、ってなにを考えているの!?あたし!ほっぺ熱いし!

 「マキちゃん乙女モード、なの?」雪ちゃんまで意味不明のことを言い出した!


 「マキちゃん大丈夫?怪我なかった?」廊下からメルちゃんと層君があわてて部屋の中に入ってきた。後ろからヘンタイおじさんも一緒に。

 「一階に侵入してきた奴らは全員倒して縛り上げておいた。予想よりも数が多いし、頭の切れるリーダーがいるようだ」層君はりりしいね!

 「奴らの狙いは第三世代に違いない。ここにいると情報が漏れたんだろう。やつらに第三世代を渡すことは出来ない。第三世代を隅から隅まで調べるのは俺だけだ」本能寺さんはりりしくないね!

 ところで何なの?さっきから第三世代って。ひょっとして雪ちゃんのことを言ってるの?

 「あたし何が何だかさっぱりわからないよー!どうしてあたし達が襲われなきゃなんないのよ!」

 「オレが推定したことを説明してやろう」えー、この人の話長がそうで嫌だな-。だれか三十文字以内にまとめてくんないかな?


 「数ヶ月前、レイカの大学のラボで、「MoNStEr」の第三世代と思われる個体が出来た、と噂が立っていた。しかしレイカは完全に否定して、それ以上の情報は一切流れてこなかった。それに第三世代がどういうモノかなんて知っている人は誰もいなかった。もちろんオレもレイカに直接聞いてみたが、黙って蹴りを入れられただけだった」

お姉ちゃんいつもこの人を蹴っているの?どういう関係なの?

 「誰かが意図的に流したデマだろうというのが当時の噂だった。そうして二ヶ月前、衣ケミカルの今年の新入社員に第二世代「MoNStEr」のモニターを任せるというプロジェクトが急に始まったとの情報があった。正直、今の時期に第二世代のモニターをするという意味がわからなかった。これは何か裏がある、と考えたのはオレだけじゃなかったはずだ」

 もう九十字文字超えてますけど。


 「ここにいる乱と層が送られてきたのもそれを調べる為じゃないのか?」

 え?どこから?二人は新入社員じゃないの?

 「え?なんのことかな?いやだなぁ。本能寺さん。ぼくらは普通の新入社員に決まってるじゃないですか!」

 層君がものすごくさわやかないい笑顔で本能寺さんの方を振り向いた。

 あたしにもその笑顔下さい!


「マキさん、僕と姉さんは本能寺さんの古い知り合いだけど、産業スパイなんかじゃないよ。第三世代の話を聞いたのは今、本能寺さんからだったしね」

 「そや。あたしらは経済産業省の製造産業局付き情報部の下請けのエージェントなんかやないで」乱ちゃんもかなり具体的に否定してくれた。

 

 ん?本能寺さんは一言も経済産業省なんて言ってないけど?そうだよね。層君がスパイのはずないもんね!

 「まあいい。そこで肝心なのは第三世代だ。ここにレイカのラボから来た「MoNStEr」は二十体。その中で第三世代と思われるのは・・・」

そう言って、あたしの腕のなかの雪ちゃんを指さした。 

 「間違いなくこの子だ」


 「なにを証拠に第三世代ってわかるのよ!雪ちゃんはただの蛇型の「MoNStEr」なんだよ!」

 「えーと、お前の目は節穴か?どこからどこまで見ても、蛇じゃなくて人型に見えるだろうが?」

 あーっ。そうだった!最初から人型って思ってたじゃん!すっかり忘れてた!てへっ。


 「第一世代、第二世代ともに人型は一体も出来なかった。ドクター・ギアマンはもしも第三世代が発生すれば人型になると予言していた」

 ノストラダムス的な?でもなんであんたそんなに詳しいのよ?

 「第三世代が出来たとすると、世界的な大ニュースだ。しかもその能力はまだ誰も知らない。もしかすると軍事転用ができるような危険なモノかもしれない。だから誰もが第三世代を欲しがり、第三世代がどうやったらできるか知りたがっているんだ」

 「雪ちゃんすごいね-。世界的有名人だ。お赤飯炊かなくちゃ。って、なんなのよ!それじゃ雪ちゃんが危ないじゃないのよ!」

頭が混乱して一人ボケ&一人突っ込みをしてしまったじゃないのよ!

 「マキちゃん、見事や。ウチの一生涯の相方にならへん?」

乱ちゃんまで涙を浮かべて頷いている!だれか突っ込んであげて!


 いろいろ難しい話を聞いて、ぐったりと疲れた。雪ちゃんが第三でも第二でもどっちでもいいよ!雪ちゃんは雪ちゃんだから。


 その日は新たな襲撃はこなかった。

あたしは雪ちゃんや女の子達と夕食を頂いたあと、窓ガラスが割れたところに段ボールで補修しただけの、あたし達の部屋へ戻った。

さすがにこのままでは寝られないので、あたし達三人は別の女子達の部屋に移って、一緒の部屋に寝かせてもらうことになっていた。


 電気も点いていない薄暗い部屋にはなぜか層君が一人で、三つ並んだベッドの真ん中のに腰掛けていた。

え、もしかしてあたしを待っていたの?ベッドの上で?まだ心の準備が。それとあのベッドはあたしが使っていた奴だ。臭ったらどうしよう。

 「え、と。層君は夕ご飯はもう食べたの?」男の子と二人きりなんて初めてだから、何を話していいかわかんないよー!

 「ああ。今日はいろいろあって疲れたでしょう?」層君優しいのね。そうです。昨日からヘンタイにヘンタイにヘンタイが来てタイヘンでした。

 「今日、本能寺さんから僕たちのことを変な風に言っていたでしょう?あれは気にしないでくださいね。マキさんが心配していないかな?と思って、少しお話をしたかったんです」

 はい!気にしてないですよ!層君のことを疑うわけないじゃないですか!それよりも気にしてもらって嬉しいです!

 二人きりなんてチャンスはこの先もうないだろうなと思って、コ、コクハク?してみようかな?考えただけでどきどきする!やっぱ無理かも!

 「マキちゃん、がんば!」雪ちゃんがポケットの中から小声で応援してくれる。


 「そ、層君は好きな人がいるのかなー?なんて、アハハ」

あたしいきなりなに聞いてんのよ!これじゃあたしが知りたがってるみたいじゃない!実際知りたいけど!

 「うん。いるよ」

層君はあたしの方を向いて、優しげに微笑んだ。これは間違いなくあたしのことだね!やった!彼氏いない歴さようなら!

 「でも彼女は二年前に僕の前から突然いなくなってしまったんだ」

うん?あたし二年前はまだ層君と会ってないよ?いやだなー、二分前と間違ったんでしょ?


 「僕と彼女と姉さんは幼い頃からずっと一緒だった。まさに彼女は僕の全てだった。ところが二年前、あの事件のあと、何も言わず急に・・・・」

ちょっと待って、それってあたしのことじゃなかったの?もしかしてあたし、告白前に振られちゃったの?バッターボックスに入る前に試合終了ってこと?あまりの展開にあたしは崩れ落ちそうだった。

 「マキちゃん二十一連敗、記録更新だけど気を落とさないでね。わたしがついてるからね!」雪ちゃんが小声で励ましてくれた。雪ちゃん優しいね。あれ?連敗記録のこと雪ちゃんに話したっけ?


 「きっと素敵な人なんでしょうね、その人。層君、今でもその人好きなんだ。また会えるといいね」

いいえウソです。二度と会わないで欲しいです。マジで。神様、腹黒いあたしをゆるしてください。

 「マキさんは優しいですね。あなたを想っているひとがきっと近くにいますよ?」

いえいえ失恋したての女にそんなこと言っても、気休めにもなりませんから。


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