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第2話 2

2

 休憩時間が終わり、今日から宿泊する研修センターでの部屋割が万歳さんから説明があった。あれ漫才さんだっけ?

三人部屋で、相部屋はメルちゃんと乱ちゃん。今のあたしの壊れそうな心を癒やしてくれるのは二人だけだよー。本当によかったよー。


 夕方にスーツから私服に着替えて、研修センターの食堂にてビュッフェスタイルの夕食をとった。

あたしの私服は当然ジャージである。誰がなんと言おうと、ジャージはあたしの相棒。

 同じテーブルにはあたしとメルちゃん、乱ちゃん、それから層君となぜか熊男の五人。三崎工場オールスターズだ。

でも、あたしはみんなと一緒に食べる最後の食事になるかもしれず、くやしいので無理して沢山食べてやった。

 「この程度で解雇になるなんてあるわけないですわよー」って笑いながら、メルちゃんは次々と空になったお皿を山積みにしていた。あたしの五倍は食べてない?


 「なあ、今年の新入社員の中に、親会社の衣カンパニーの御曹司がおるっていう噂、しっとる?」

乱ちゃんがにやにやしながら小声で話しかけてきた。

 「ウチの情報網によると、えらい男前らしいで。なんでも今の会長のお孫さんということや。ウチは是非ともお近づきになって、玉の輿狙ろうとんねん。黒いダイヤとよばれたウチの美貌でイチコロや。どこにおんねんやろ?」

メルちゃんの耳元でささやいた。

 「ぶぶっ」なぜかメルちゃんが飲んでいたお茶を吹き出した。

 「姉さん、それはただの石炭なんじゃ・・・。またそんなデマに惑わされて。本当にいたとしても姉さんなんか相手に・・・、ぐふっ!」

 座っている層君の背中に乱ちゃんのハイキックが炸裂した!乱ちゃんはミニスカートなんだから見えちゃうよ!

 「いや見えちゃうちゃうねん。見せんねん。御曹司に」

 なぜだかわからないが、メルちゃんが頭を抱えていた。


 夕食の間、食堂にはお姉ちゃんの姿は最後まで見られなかった。もしかして家に帰っちゃったのかな?


 その晩三人でそれぞれのパートナーの名前を考えようと、話を始めた十秒後、乱ちゃんが寝落ちしてしまっていた。名前はどうすんのよ?


 翌朝7時、夕べはよく眠れなかったために眠い目をこすりながら、あたしはいつものジャージで朝食のために食堂へ向かった。

そこには夕食の時には現れなかったお姉ちゃんがいて、既に食事を終えた後だった。「マキちゃんおはよう。夕べはよく眠れた?今日はいろいろいそがしくなるから、沢山食べておいてね」

 いつもの優しいお姉ちゃんだ。

でもなんとなく気まずくて、お姉ちゃんの顔を見ることができず、曖昧に返事をしてしまった。


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