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あたしは女の子を引き連れて、いつもの公園へと向かった。
その女の子と並んでベンチに座り、買ってきたばかりの温かい中華まんの入った紙袋を開ける。
そしてピザまんをひとつ取り出すと、女の子に手渡した。
手渡されるやいなや、女の子は自分の顔と同じくらい大きなそのピザまんに、ためらうことなくかぶりつく。
「美味しいです!」
満面の笑顔を浮かべる女の子。
あたしは自分の肉まんを紙袋から取り出しながら、
「その前に、ありがとうは?」
笑顔を浮かべながらではあったけど、ちょっと意地悪なことを言ってみる。
「ん~~~~~~っ、美味しいです!」
そんなあたしの言葉なんてなんのその、女の子は再びピザまんにかぶりつくと、笑顔をこぼし続けていた。
はぁ……。やっぱり、しつけがなってないわ、この子。
ま、いいけどね。
「三つもピザまん買ったけど、そんなに食べられるの? お姉ちゃんが少し食べてあげようか?」
あたしは女の子に、優しく話しかける。
もちろん、優しく、ね。
あたしの言葉を無視しやがったからって、大人げなくネチネチ嫌味を言い続けるほど、あたしは意地悪じゃないのだ。
……ちょっとばかり、こめかみの辺りがピクついていたかもしれないけど。
「ボクは食べ盛りだから大丈夫です! これくらい、食べられます!」
女の子は明るい笑顔を振りまきながら、そんな答えを返してきた。
そっかそっか。女の子なのに「ボク」って言うのも含めて、元気な感じで可愛いわっ。
あたしはそう考えて、なんとなくほのぼの感に包まれていた。
でも、同じように自分のことを「ボク」と言っていた、あの部長さんのことも同時に思い浮かべてしまい、ちょっと苦笑まじりになってしまったのだけど。
そんなあたしに、女の子は強烈なひと言をぶちかます。
「それに、お姉ちゃんも肉まんとカレーまんを買ってました。それ以上食べたら絶対に太っちゃいますよ? 年齢的にも! だから、ボクが買ってもらった分は、ちゃんとボクが食べます!」
カチン!
この子、笑いながらなんてひどいことを……。思わずあたしは、引きつった笑顔になってしまう。
ピクピクピク。
こめかみの震えが劇的に増したような気がするのは、はたして気のせいだろうか。
「あ……ああぁ~、そぉねぇ~~、あなたの言うとおりだわぁ~~~! あっははははは~!」
どうにか答えるその声まで震えてはいたけど、それもきっと気のせいなのよ、うん。
「あはははは! う~~ん、やっぱりすっごく美味しいです!」
どちらにしても、口いっぱいにピザまんを頬ばり、熱くてはふはふしながらも幸せそうな笑みをこぼしている女の子の顔を見ていたら、怒る気も失せてしまうってものだ。
「ねぇ、あなた。名前はなんていうの?」
「ボクは、蘭です!」
「蘭ちゃんかぁ、素敵な名前ね。あたしはひまわりよ」
「うわ~、可愛い名前~! いい歳して、恥ずかしい~!」
カチン!
な……名前に歳は関係な~~い!
怒鳴りつけつつ蘭ちゃんの頭を両脇からグーでぐりぐりしてやりたい衝動に駆られたけど、あたしは分別のある大人だから、なんとか思い留まるのだった。
☆☆☆☆☆
『友達 いつでも一緒に微笑み合える
友達 忘れないで みんな仲間さ
どんなに悲しいことが あったとしても
いつまでも沈んでいては 幸せは戻らない
どんなに楽しいことが あったとしても
ひとりでいるだけでは 幸せは逃げてゆく
ふたり、さんにん、よにん みんなそばにいるから
手と手を取り合って 笑顔を膨らませよう
友達の声が心を 癒してくれるから
友達の想いを胸に 笑っていればいいから
白い風が吹き抜ける丘から 眺める景色のように
フレンズ……いつまでも、フレンズ』
「わ~、素敵なお歌です!」
パチパチパチ!
蘭ちゃんが飛び上がらんばかりの勢いで拍手を送ってくれる。
彼女の「お姉ちゃん、お歌、歌って~!」というお願いに応えて、あたしは歌ってあげたのだ。
あたしたちは公園にいたわけだから、当然のことながら他の人もちらほらと通りかかったりしていたし、ちょっと恥ずかしいという気持ちはあったのだけど。
それでも、蘭ちゃんから期待をいっぱいに含んだキラキラした瞳で懇願されたら、断ることなんてできるはずもなかった。
「ねぇ。蘭ちゃんは、ひとりであの屋台のところにいたの?」
歌い終えたあたしは、蘭ちゃんに話しかけた。
蘭ちゃんはすでに、三つのピザまんをペロリとたいらげたあとだ。
当然ながら、あたしも肉まんとカレーまんを食べ終えていた。まだちょっと物足りなさを感じながら。
……やっぱりもうひとつ、買ってくるべきだったかな。
なんてことを、考えはしても言葉にはしない。
口に出したらきっと、蘭ちゃんから「絶対にぶくぶくと太ります!」なんてツッコミを入れられてしまうに違いない。
「お母さんは一緒じゃなかったの?」
あたしのほうへと目を向けていた蘭ちゃんに、さらなる質問を続ける。
「う~んと、お母さんはここにはいません。おうちで待ってます!」
蘭ちゃんは、そう答えてくれた。
とすると、ひとりで出歩いていたってことね。
まぁ、十歳くらいだったら、それも普通のことだろうけど。二十代も半ばの年齢になると、ついつい心配になってしまう。
こんなふうに思うなんて、もうすっかりおばさんだわ。
あたしは思わず、苦笑を浮かべていた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
そんなあたしに、可愛らしく首をかしげながら尋ねてくる蘭ちゃん。
「ううん、なんでもないわ」
そんな蘭ちゃんの頭を、優しく撫でながら答える。
あたしは自然と笑顔になっていた。
おばさんじゃなくてお姉ちゃんと呼んでくれたことに、心底気分をよくしていたからだ。
……やっぱりあたしって、単純だ。




