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歌声戦隊セイレンジャー  作者: 沙φ亜竜
第3話 再会は不穏の調べ
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-5-

 やがてビールはなくなったものの、ウーロン茶やらオレンジジュースなんかも買ってあったため、あたしたちはそれを飲みながらの他愛ないお喋りを続けていた。


 トイレに行くと言って席を立った白亜さんは、まだ戻ってきていない。

 そんなにひどい状態なのだろうか。

 まぁ、あまり考えたくない内容なので、そのうち戻ってくるでしょうと、軽く流すことにする。


 さっきまでベタベタとくっついてきていた林檎だったけど、少しは酔いが醒めてきたのか、若干落ち着いた声であたしと海斗くんに向かって話し始めた。

 お酒に弱い海斗くんも、今日はどうやらまだ意識を保っているようだった。


「それじゃあ、そろそろいい時間だし、ちゃんと部屋割りも決めておきましょ。といっても、話し合う余地なんてないかしらね?」


 政府があたしに与えてくれたこのマンションの一室。

 それなりにゆったりとしたレイアウトではあったものの、基本的にひとり暮らしを前提にしているマンションのようで、四人で暮らすとなるとやはり手狭となる。


 林檎の言うとおり、話し合う余地はないのかもしれない。

 寝室として使えそうな部屋なんて、二部屋しかないのだから。


「ま、無難に男性陣と女性陣で分かれればいいわね」


 林檎のもっともな意見に、あたしとしても、それしかないと思ってはいた。

 だけど、お酒の勢いもあったからか、あたしはちょっと意地悪な反論を試みてみる。


「あら、林檎。海斗くんとふたりでじゃなくて、いいの~?」


 ニヤニヤと笑いながら、冷やかしの言葉を投げかけたのだ。

 でも、思わぬ反撃を食らってしまうことになる。


「え? でもそうすると、ひまわりは白亜さんと一緒の部屋ってことになるわよ? なによひまわり、もしかして白亜さん狙いだったの?」

「えっ!?」


 寝室として使えるのが二部屋しかないわけだから、当然ながらそうなるということに、不覚にもあたしはまったく気づかないまま、あんな発言をしてしまったのだ。


「そっか~、そうなんだ~。それなら私が仲を取り持ってあげようか?」


 なんて勘違いをさらに発展させた林檎は、面白そうな話題を得たり、とでも言いたげな表情で問いかけてくる。


「ち……違うってば! そういうのじゃないよ! というか、男女で分かれる案に決定で!」

「え~? つまんない~!」


 あたしの答えに不満顔の林檎と、がっはっはと笑っているだけの海斗くん。

 海斗くんは意識こそ保ってはいるけど、かなり酔いが回っていそうだから、状況をよく理解してないのかもしれない。


 ともかく、白亜さん本人がいなくて助かった。

 あたしはホッと胸を撫で下ろす。


「ま、だいたいわかってたけどね。あの人、ひまわりの趣味じゃなさそうだし。相変わらず考えなしに喋る癖は治ってないのね」

「うっ……」


 林檎の平然とした言葉に、あたしは声を詰まらせる。

 つまりあたしは、林檎にからかわれていたのだ。

 そりゃあ、昔からそんな扱いばっかりだった気がするし、そういういじられキャラってのも悪くはないと、自分でも思っていた部分はあるのだけど。


 あたしが微かな不快感を表情に出してしまっていたからなのか、それとも単純にまだ酔っ払っているだけなのか、


「そんなとこも、可愛いんだけどね!」


 林檎はそう言うが早いか、またもやあたしに抱きついてきた。


「がっはっは、林檎は抱きつき癖があるからな~。ひまわりちゃん、寝るときは覚悟しときなよ!」

「んふふ~! 毎晩抱きしめ放題だわっ!」

「ちょっと、もう、くっつかないでってば~!」


 こうして、そろそろ真夜中になろうかという時間にもかかわらず、あたしたちの部屋には、騒がしい酔っ払いたちのじゃれ合う声が響き渡っていた。



 ☆☆☆☆☆



 それから話題は、昔の合唱サークルのことへと移っていった。


「こんな綺麗な星空のもと、みんなで集まって歌ったりも、よくしてたわよね~」


 換気のために窓を開けた林檎。

 目に飛び込んできた降り注ぐような星空の光景に、懐かしい思い出が脳裏をよぎったのだろう、微かに目を潤ませながらつぶやきを漏らす。


「そうだね……。懐かしいわ」

「ほんとだな! いつも五人で歌ってたよな! なぜか部長だけは歌わなかったが!」

「あの人、きっと音痴だったのよ」

「がっはっは、やっぱりお前も、そう思うか!?」

「あはは……。いない人の悪口なんて、ひどいとは思うけど……。でも、あたしもそう思う」


 懐かしい、笑顔溢れる思い出の日々。

 部長さんは宇宙人だったけど、それも含めて、かけがえのない大学生活の一部だった。

 今になって思えば、あの人がいたからこそ、あたしたちはこんなにも仲よしでいられたのかもしれない。


 もっとも、そのあとに起こった様々な悪い事柄の発端も、あの部長さんにあると言えるわけだから、複雑な気持ちでもあるのだけど。

 それでも、いろいろとあったとはいえ、基本的には楽しかった過去に、あたしたちは思いを馳せる。


 だからこそあたしは、口に出してしまうのをためらっていた。

 さくらちゃんのことについて……。


 とはいえ、さくらちゃんの存在を無視したまま、こんなに楽しく話していていいのかと、心苦しく感じる部分もあった。

 だからあたしは、思いきって林檎に問いかけてみた。


「あのさ、林檎。さくらちゃんのことは、知ってる……?」

「……うん、知ってるわ……。ほんと、ひどいわよね……」


 すっ……と、林檎の笑顔が陰る。

 海斗くんも黙ったまま、ちびちびとミルクセーキを飲んでいた。

 やっぱり、言うべきじゃなかったのかな……。

 後悔の念が浮かんできたあたしは、思わず目を伏せてしまう。


 そんなあたしに、林檎は優しい声を送ってくれた。


「でも、ひまわりが元気づけてあげてるのよね? だったら大丈夫よ。ひまわりのお日様みたいな笑顔で、さくらちゃんを温めてあげなさい」

「……うん……」


 酔いは残っていただろうけど、林檎の心からの温かい言葉に、あたしは勇気づけられた。

 ただ、なんとなく恥ずかしさもあって、もうひとりのメンバーである大樹くんのことについては、結局話題に出せないままでいた。


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