死への一歩
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夜11時
マルスは家に戻った。
近づくと、奇妙な音が聞こえた。
「何の音だ?」
脇の窓に近づいた。
中を覗いた。
そこには誕生日ケーキがあり、数字の5が立っていた。
ユーリは誕生日の帽子をかぶっていた。
そしてマリアともう一人の女が歌っていた。
「Happy birthday to you... Happy birthday to you...」
マルスの目は見開かれた。
「そうか……今日はユーリの誕生日か」
息子を見た。
ユーリの目は悲しみと失望に満ちていた。
マルスはゆっくりと後ずさった。
そして振り返った。
一歩、また一歩……
立ち去った。
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夜12時
マルスは家に戻った。
ドアへ進んだ。
ノックした。
「コツ……コツ……コツ」
ドアが開いた。
マリアが現れた。
マルスは手にプレゼントを持っていた。
「マリア、聞いてくれ。すまなかった—」
彼女は平手打ちした。
マルスはその場で固まった。
マリアは泣き始めた。
「なぜ?! なぜあなたなの?!」
そして震える声で言った。
「なぜあなたが父親なの?」
マルスはうつむいた。
「この子は今まで一度も父親の愛を感じたことがないの。今日、誕生日の今日でさえ、幸せなひとときを過ごせなかった。父親に希望を裏切られたから」
マリアは顔に手を当てて泣いた。
マルスは彼女に手を伸ばした。
「マリア……」
彼女は後ずさった。
「やめて……やめてお願い。ただ私たちを放っておいて。行って、お願い……お願い」
マルスは後ずさった。
そして振り返って走り出した。
一歩、また一歩。
後ろから、ユーリが来た。
「お母さん? 大丈夫?」
マリアは彼を抱きしめた。
「大丈夫……大丈夫よ。全部大丈夫」
一方マルスは、走り続けた。
「くそ!」
一歩、また一歩。
「くそ!」
一歩。
「くそ!」
一歩。
そして大声で叫んだ。
「くそおおおお!!!!!」
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しばらくして
マルスは小さなバーに入った。
バーはほとんど空だった。
カウンターに一人の男だけが座って飲んでいた。
男は振り向かずに言った。
「いらっしゃい。来ると思ってたよ」
マルスは立ち止まった。
「お前は誰だ?!」
「失礼だが、誰なのかは言えない」
そして振り返った。
「だが、お前に役立つかもしれないことを一つ教えてやろう。死にたいと思っているあんたにだ」
一瞬黙った。
「もし自分自身を消すために死にたいのなら……自分を知っている人たちがいる限り、自分自身は消えないってことを覚えておけ」
マルスは彼を見た。
「なら全員先に殺してやる」
男は眉を上げた。
「全員? 息子も妻も殺すってことか?」
マルスはその場で止まった。
男は続けた。
「あれはお前の妻だ。どれだけ人を殺す化け物でも、自分の妻は殺せない。お前は嘘で自分を騙そうとしてる……でも本当は妻と息子を愛してるんだ」
マルスの目は見開かれた。
「だがもし死にたいなら……」
男は武器を取り出し、彼に向けた。
「ここで俺がお前を殺してやろうか?」
発砲!
マルスはギリギリで身を屈めた。
弾は顔の横をかすめ、鼻のあたりを浅く傷つけた。
男は立ち上がり、再び発砲した。
発砲! 発砲! 発砲!
マルスは椅子を持ち上げ、弾の軌道を塞いだ。最後の弾で椅子は粉々に砕けた。
別の椅子を掴んで男に投げつけた。
椅子は男に当たり、後ろへ押しやった。
マルスは彼に向かって突進し、首を掴み、銃を奪って頭に突きつけた。
「誰だ、このクズ野郎は?」
その瞬間、車の近づく音がした。
マルスは発砲した。
男は倒れた。
マルスはバーの裏口へ走った。
ドアから出ると……
そこにはギャングたちが至る所にいた。
走った。
一人が殴りかかってきた。
マルスは頭を殴って倒した。
別の男がナイフを投げた。
マルスは空中でそれを掴んだ。
そして男たちが近づいてきた。
一人、また一人……
一人、また一人……
目の前で倒れていった。
一人だけ残った。
男は武器を捨てて逃げた。
マルスは追いかけた。
一歩、また一歩。
そしてさらに速く。
一歩、また一歩。
一歩……
一歩……
男は建物の間の狭い隙間に入った。
マルスも続いた。
男は反対側に出て、廃墟のような場所に出た。
二つの建設中の建物があり、外側の骨組みだけが残っていた。
男がもう一歩踏み出そうとした時……
発砲!
狙撃手の弾が頭を撃ち抜き、男は倒れた。
マルスは立ち止まった。
あらゆる方向を見た。
誰も見えなかった。
突然……
発砲!
マルスはギリギリで弾道を外した。
弾は浅くかすった。
素早く走り、壁の後ろに隠れた。
四方八方から弾が降り注ぎ始めた。
「狙撃手が二人? 各建物に一人か?」
少し頭を上げた。
「本当に二人なのか?」
階段を駆け上がり始めた。
弾が追ってくる。
右から……
左から……
後ろから……
登り続け、屋上に辿り着いた。
静寂が訪れた。
周囲を見回した。
「逃げたのか?」
突然後ろから仮面を被った男が現れ、首を掴んだ。
マルスは抵抗し、押し返した。
二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
右のパンチ。
左のパンチ。
防御。
回避。
蹴り。
マルスは後ずさった。
男が飛びかかり、顔を殴った。
マルスはよろめいたが、体勢を立て直した。
戦いが再開した。
右。
左。
右。
左。
連続の打撃と素早い防御。
互いに相手の動きを、打撃が届く前に読んでいた。
マルスは相手の腹を殴り、男は端まで後退した。
反対側では、狙撃手が二人の速い動きのせいで狙いを定めるのに苦労していた。
男が再び攻撃してきた。
速い一撃!
マルスはかわした。
二撃目!
腕で防いだ。
三撃目!
マルスは身を屈めて潜った。
男はナイフを取り出し、マルスの左腕を切りつけた。
「くそ!」
マルスは手首を掴んだ。
ナイフを遠くへ押しやった。
そして押し倒して押さえつけた。
銃を拾い、頭に向けた。
そのとき……
発砲!
弾がナイフを弾き飛ばした。
男はその隙をつき、マルスを足で蹴った。
マルスは後ろへ飛ばされ、端から落ちそうになった。
ギリギリで端を掴んだ。
男が近づき、首を掴んだ。
マルスは押し返した。
二人は端でもみ合った。
マルスは男を掴んで落とそうとした。
マルスが言った。
「覚悟はできてるか?」
男が答えた。
「いつでもな」
男はマルスの手を掴んだ。
そして飛んだ!
「くそ!」
二人は空中に落ちた。
落ちる途中、マルスは狙撃手が自分に照準を合わせているのに気づいた。
男を遠ざけようとした。
ギリギリのところでマルスは自分を押し離し、建物の窓の縁を掴んだ。
中に入った。
弾が横をかすめた。
狙撃手は素早く階段を降りた。
一歩、また一歩。
そして外に出て、バイクに跨った。
その間、マルスは建物から出てきた。
両腕はひどく負傷し、関節はひどく脱臼していた。
周囲を見た。
最初の狙撃手は見つからなかった。
二人目の狙撃手は、地面に倒れていた。
マルスは彼に近づいた。
一歩、また一歩。
手をまともに動かせなかった。
突然……
エンジン音が聞こえた。
顔を上げた。
狙撃手がバイクに乗って、猛スピードでこちらへ向かってくるのが見えた。
マルスの目は見開かれた。
ギリギリで飛び退いた。
バイクが横を通り過ぎた。
狙撃手も飛び降りた。
マルスは地面に倒れた。
狙撃手は彼に飛びかかり、押さえつけた。
ナイフを取り出し、頭に向けて突き立てようとした。
マルスは手を上げてナイフを遠ざけた。
男は再び刺そうとした。
マルスはかわした。
一撃!
狙撃手はかわした。
マルスは男の手を噛んだ。
狙撃手は叫んだ。
頭を激しく殴られ、皮膚が裂けた。
マルスは叫んだ。
狙撃手は立ち上がったが、マルスは突進して頭突きを食らわせた。
男は後ずさった。
狙撃手は背中を殴った。
マルスは叫んだ。
「両手がなくたって……必ず殺してやる! 必ずだ!」
マルスは足で蹴り、地面に倒した。
そして上に立ち、頭を踏みつけた。
圧力が増していった。
仮面が割れ始めた。
鼻と口から血が出てきた。
狙撃手はマルスの足を掴んでどけようとした。
やっとのことで押しのけることができた。
狙撃手は立ち上がった。
二人は向かい合って立った。
突然……
パトカーのサイレンが聞こえた。
マルスは周囲を見た。
「まずいな」
狙撃手の方を振り向いた……
だが、彼は消えていた。
「くそ……今どこへ行けばいいんだ?」
マルスはバイクと男の仮面に気づいた。
警察が現場に到着した。
「こっちで音がしたぞ!」
パトカーが入り口を包囲していた。
「そこの者! 早く出てこい!」
突然……
バイクのエンジン音が響いた。
マルスは仮面を被り、バイクに跨って猛スピードで走り出した。
警察は銃を向けた。
「止まれ!」
だが彼は止まらなかった。
真ん中を突っ切って包囲を突破した。
「追え!」
「第二、第三、第四班、追跡しろ!」
「第一班は地域全体を捜索しろ!」
マルスは全速力で走った。
後ろではパトカーが追ってきていた。
車や乗り物をかろうじてかわしながら、長い距離の追跡が続いた。
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一時間後
マルスは谷の上の壊れた橋に辿り着いた。
バイクのエンジンが止まった。
しばらくして、警察が四方から包囲した。
一人の警官が銃を構えた。
「自首しろ!」
マルスは後ろを見た。
端に立っていた。
橋の下には深い湖があった。
「こっちに来い、マルス!」
マルスは少し手を上げた。
「悪いな……でも無駄足だったな」
そして飛び降りた。
「待て!」
体は水の中に消えた。
「湖に落ちたぞ!」
「死んだな」
「戻れ。明日探しに来よう」
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しばらくして……
マルスは湖から出てきた。
息を切らしていた。
「痛い……痛い……痛い……」
両手は完全に腫れ上がっていた。
地面に横たわった。
そしてバーの男の言葉を思い出した。
叫んだ。
「くそおおおお!」
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翌日
マルスは病院にいた。
両手は包帯で覆われ、体のあちこちにも包帯が巻かれていた。
隣には長身で痩せた、過剰ではないがはっきりとした筋肉を持つ男が座っていた。ハンサムだったが、顔立ちは鋭く疲れていて、目は恐ろしく冷たく空虚だった。暗い髪は少し乱れ、目の近くにははっきりとした傷跡があり、手や首には小さな傷跡がいくつかあった。
この男がライガ氏だった。
ライガが言った。
「失敗したな、マルス」
マルスはうつむいた。
「すみません、ライガさん」
「とにかく、一人は仕留めたが、もう一人は逃げたということだな?」
「はい、そうです」
「では、連中が何者か突き止めたのか?」
「いや、まだです。三日ほど追加で必要です。でも、競合だと思います」
「競合? アマギ製薬のことか?」
「はい、そうだと思います。何年も前から競合していますが、我々を追い越せていない。我々を潰すのに必死ですから、こんなことをしてもおかしくないと思います」
ライガは立ち上がった。
「とにかく、治療に専念しろ。お前が必要なんだ」
「わかりました」
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三ヶ月後
マルスの家で……
マリアは外で植物用のスプレーで花に水をやっていた。
遠くからマルスがやって来た。
家に向かって歩いていた。
一歩、また一歩。
彼女のところへ辿り着いた。
両手にはまだ軽い包帯が巻かれていた。
マリアは彼を見た。
立ち止まった。
植物用のスプレーが手から落ちた。
マルスは近づいた。
そして彼女の前に立った。
二人は何も話さなかった。
しばらくして……
二人は互いを抱きしめた。
そしてあの日から、九年間、二人は長く語り合うことはなかった。
それから九年。
二人の間に、長い沈黙が続いた。
言葉を交わすことはなくても、二人は離れることなく、同じ時間を生き続けた。
だが、その九年間は決して平穏なものではなかった。
マルスの中には、あの夜から消えることのない問いが残っていた。
――自分は、なぜ生きているのか。
そして九年後。
その答えを知ることになる日が、少しずつ近づいていた。




