聖歌ロックンロール04
『光あれ、歪みあれ』
わたしはメモを読み上げた。
『平和ならしむる者と呼ばれた』
『けれど、わたしたちの喉には剣があった』
『平和にあらず』
『反って、剣』
『愛するに時あり』
『憎むに時あり』
『泣くに時あり』
『笑うに時あり』
『恋するに時あり』
『歌うに時あり』
『生きて歌う時は今』
『光をつくり』
『また、くらきを創造す』
『ならばこの影も』
『祈りのうちにある』
『真理を知らん』
『真理は自由を得さすべし』
『ならば、隠した名前を呼べ』
『ならば、封じた声を返せ』
『火を地に投ぜんとて来た』
『その火すでに燃えたなら』
『わたしたちは何を望む』
『消すための水ではなく、荒ぶる声を』
『われらを虜にせしもの』
『われらに歌を求めたり』
『ならば聞け』
『これは慰めの歌ではない』
『黙すに時あり』
『語るに時あり』
『わたしたちは』
『今日まで黙した』
『だから今、語る』
『だから今、歌う』
ひょっとしてわたしは今、現在進行形で黒歴史を作っているんじゃないだろうか?
その思いは雪乃先輩、アリス先輩、高木さんの生真面目な中に浮かぶ微笑の中に溶け込んでいってしまう。
まあ、作詞が誰かなんてわかるわけもないんだし。いいよね。わたしはそう独りごちた。
その時、高木さんがとんでもないことを口走った。
「萌花さん、あなた良い声ね、コーラスで参加しない?歌詞のクレジットは入れるね」
「ええっ絶対無理です!」
わたしは飛んでいく勢いで首を横に振った。
それから、わたしは思っていたことを口に出してみた。
「なんだか……これってわたしたちが犯人みたいじゃないですか?」
恐る恐る呟いたわたしに、雪乃先輩は紅茶のカップを傾けながら、優雅に、そして悪戯っぽく微笑んだ。
「たまにはいいのよ。そういうのも。犯行は芸術、推理は後追いの模倣」
「そういう言葉もあるでしょう」
「まあ、そうなんですけれど、いいのかなあ……」
わたしの言葉を継いで、御影先生が口を開いた。
「雪乃、あまりはしゃぐものではないのよ」
先生が先輩を下の名前で呼ぶのも、先輩が反省した様子も見せずに微笑しただけなのもわたしには何よりも衝撃的な光景だった。
そして、御影先生は口ぶりとは裏腹に雪乃先輩が誰かと楽しそうにしている今を嬉しそうに受け止めているようだった。
雪乃先輩はアリス先輩に向き直って笑いながら言った。
「そしてね。アリス、あなたこれ職業になるわよ」
これがわたしたちが出会った、いや一緒に作り上げた奇商の一つ。
聖歌ロックンロールの全容なのだった。
そして次の事件へのプロローグでもあった。




