湖上の花冠07
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朝六時の鐘が時を告げた。
雪乃先輩はタイミングを見て、引率の先生の部屋をノックした。
説明は一人でするつもりのようで、部屋の中に入ると三十分ほどしてようやく出てきた。
先輩は珍しく憔悴しきった様子だった。
いつもはシワひとつない制服にいくつも皺が寄ってリボンも幾分曲がって見えた。
あの博覧強記で聞いたらなんでも出てくる先輩はそこにはいなかった。
ラウンジのテーブルに力なく突っ伏すと先輩はそのまま喋り始める。
かいつまんで話した内容は以下の通りだった。
園田さんのカヌーがフロートに衝突して投げ出されてしまったこと。
なんとか、フロートに這い上がったけれど、カヌーはロープで繋がって岸まで戻ってしまってどうしようもなくなった事。
激しい雨で点呼が不充分で取り残されてしまったこと。
これには雪乃先輩も顧問の先生の引率責任にもなりかねないかも。なんて言ってしまったらしかった。
「先生には本当に申し訳なかったけれど、点呼が曖昧だったのは事実だからね」
突っ伏したまま手だけ動かす先輩にわたしはご苦労様でした、と力づけることしかできなかった。
「悪いことって、とっても疲れちゃうね。嘘は苦手だから」
先輩はまだバタバタと手足を動かしていて、その仕草は幼児がハグを求めるような、少なくともわたしにはそうみえた。
「当分こういうことはしたくないかも」
顔だけあげると先輩は頬を膨らませてそう言った。
「わたし、先輩に面倒を押し付けちゃって」
謝るわたしに首を振りながら、わたしが決めた事だから、それだけを呟いた。
わたしは、ティーバッグに直接温めたミルクを入れたお茶とミルクが入っていない二つを先輩の前に差し出した。
「紅茶、オールミルクと後いれの二種類作りました。どっちがいいですか?」
「よく考えたら、ミルクティに合う茶葉かわからなかったんです。ごめんなさい」
前髪を掻き上げる気力も無くなったように疲れた様子の先輩は震える手で紅茶に手を伸ばした。先輩はミルクは後入れ派だった。
「後から入れたほうがミルクの濃さを調節できるでしょ」
「先に入れた方が紅茶の香りが立つとも言われてるんだけどね」
先輩はなるべく事件と関係ない話をすることで少しずつ元気を取り戻していった。
オールミルクの方が良かったかも。なんて言ってわたしの飲みかけを奪い取るくらいには。
「萌花ちゃんありがとう。生き返ったわ。園田さんも大丈夫そうだった」
熱々の紅茶一杯半くらいを飲み干すと先輩に生気が戻ったようだった。
「さて、みんなが起きてくる前に解決編といきましょうか」
「瑞希さんも来てね」




