ブロマイド密売事件05
科学室では、千里さんが送ったメッセージにしたがって実験用具が準備されていた。
科学部員さんたちは、なぜだか皆似たような、おかっぱ頭に腰まで伸ばされた黒髪だった。全員がメガネをかけていてわたしにはぱっと見見分けがつかなかった。
千里さんが連絡した部長さんだか副部長さんは今日は不在らしく、けれど手際よく実験の手伝いをするように、との連絡は入れてくれていた。
「天使様、水酸化ナトリウム水溶液は用意できております」
見分けがつかないからこっそり心の中で科学部員Aと心の中で呼んだ一人が雪乃先輩にそう言った。
「天使様は無しですよ。雪乃と呼んでください」
科学部員たちの中にさざなみのように驚きと不安の声が広がったが、やがて収まると先ほどの生徒が
「雪乃様、実験の準備はできています」慇懃な礼をしながらそう告げた。
「もう、仕方ないわね、今回はそれでいいから早速始めましょう」
少し困った様子で先輩はそう言うと、さっきUV蛍光を示した米糊を包み紙ごと部員に手渡した。
見分けのつかない部員(わたしは科学部員Bと名付けた)がピンセットで器用にコインチョコの包み紙から糊を剥がして慎重に試験管に入れてゆく。
それからうやうやしく試験管を雪乃先輩の前に差し出した。
先輩は一つ頷いてから、それを受け取るとUVライトのスイッチを入れた。
「萌花ちゃん、ほら見ていて」
試験管に緩やかな変化が現れていた。
黄緑の水溶液が鮮やかな青蛍光へと変わっていった。
「科学部の皆さんならお分かりですよね?」
また別の科学部員Cが言う。本当に見分けがつかないのだ。
「Phの変化により、アルカリになって蛍光色が変わりました」
「この物質に添加されているのはビタミンB2で間違い無いかと思われます」
「お墨付きをいただいてありがとう」
雪乃先輩は深く一礼をすると、ふと思い出したように切り出した。
「さっき地学室では集合写真を撮ったのだけれど」
またさざなみのように驚きと不安の声が上がると、部員の一人が前に進み出て
「是非お願いします」
深々と礼をすると部員たちを所定の位置に並べた。
まるで宗教儀式のように試験管を持った雪乃先輩を中央にまた記念写真を一枚。
わたしは今度は何を持たされるのか不安だったけれど、謎の赤い液体が入った大きい三角フラスコだった。今度は千里さんは白衣を科学部以上に着こなしていた。
最初に話しかけてきた部員Aが「歴代語り継ぐ出来事になるでしょう」
それだけを言うとわたしたちをドアに導いた。
わたしはもう少しで部員の見分けがつきそうだな、そんなことを考えながら部屋を後にした。




