表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【10,000PV突破感謝】清心館女学院の探偵事情~銀髪の天使『日ノ宮雪乃』謎は解けても恋は解けない~  作者: 水星 透
第九話:ブロマイド密売事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/107

ブロマイド密売事件03


「はいどうぞ」

 わたし達の目の前に千里さんは約束通りにコインチョコの包み紙、の残骸を置いた。

 二年教室のバルコニーに落ちていたという。


「ちょっと変だよね。最近我が校の風紀が乱れていると言っても、包み紙をこんなバラバラにするものかな?」

 風紀の乱れ、の部分でなぜかわたしと雪乃先輩を交互に見ながら意味深な顔をする千里さん。


わたしたちの風紀は何も乱れていません、そうですよね?先輩。などと口にするわけにもいかずにただ頷くだけしかできない。

 

「まるでピンセットで包み紙を破いたような跡ね」

 雪乃先輩はまさにピンセットと白手袋で警察の鑑識のように入念に調べている。

 昨日の話から今日のために用意していたらしい。


 わたしは、なんだか本格的な捜査じみてきて不安を隠しきれずに言った。

「ブロマイド密売とコインチョコに何か関係があるんでしょうか?」

 千里さんは

「受け渡しの合図なんかに使われてたりして」

 冗談めかしながらも目は笑っていなかった。


 雪乃先輩は包み紙の金色の表面をじっくりと眺めながら、

「表面に何か塗られてますね?なんでしょう」

「ああ、それか。僕も気づいてね、指で少し剥がしてみたんだけれど」

 千里さんも金のひとかけらを手に取ると爪で剥がしながら

「絵の具を溶かすのに使うメディウムみたいだったから」


「思い当たるテクスチャはなかったから画材ではない、かな?」

「僕も、確信を持って言えるほどじゃないけどね」

 千里さんは匙を投げたでも言うように首を振った。

「わたしも見ていいですか?」


 なんとなくそのテリとツヤに見覚えがあったからだった。

 手に取らせてもらうとやっぱり覚えがあった。どこでだろう?文芸部の何か……

 そうだ!製本作業をしていた時に見た覚えがあったんだ。

「あっ、これ米糊じゃないでしょうか?」


「文芸部で和綴製本をしたことがあって、背をこの糊で止めたんです」

 わたしは確実な情報を伝えたくて、思い切って軽く舐めてみた。

 雪乃先輩と千里さんは目を丸くしながらも、わたしの反応を見守っている。

「やっぱりそうだと思います。お米の風味がありましたから……」

「萌花ちゃんがそこまで一生懸命なら……」


「わたしも内側についたチョコじゃない何かを食べて見た方がいいかしら?」

「ええっ先輩はダメですよ。お腹壊しちゃいますよ」

 雪乃先輩はわたしの言葉に説得されたのか、もともと口にするつもりはなかったのか

 鼻を近づけて臭いを嗅いでいる。


「何らかのペレット……そう、たとえばペットの餌のような感じですね」

 口にはしなかったものの、手袋をつけた指先で茶色いペースト状のものを擦り合わせている。

 わたしはそっとシンクに行くと先輩に濡らしたキッチンペーパーを差し出した。

 先輩は目線でありがとう、と言うと手袋についた茶色の物体を丁寧に拭った。

 それから、足元の屑籠にそっと落としこんだ。


 それから先輩は、お茶の香りを胸いっぱいに吸い込んで一口こくり、と飲み込んだ。

「さて、みなさんここまでのお話をまとめてみましょうか」

 先輩はゆったりとした仕草でカップを置くと、語り始めた。

「学内でブロマイドの密売が行われている。これは事実その一」


「同じく学内でコインチョコを配っている人たちがいる。これが事実その二」

「事実その一とその二が関連があるかは現時点ではわからない」

 雪乃先輩がわたしの手元を見た。わたしは慌ててメモ帳を取り出してメモをする。

 千里さんは話を聞いているのか、いないのかぼんやりと窓の外を眺め続けていた。

「その二つの関連は置いておいて、情報が多い方から追ってみましょう」


「配られたコインチョコの包み紙は配った人間によって回収されている」

「けれど、二年教室には細切れになった包み紙があった。しかも表面に細工をされて」

「間違いないわよね千里さん?」

 雪乃先輩は千里さんの膝にそっと触れた。


 千里さんは驚いたように、ああごめん、よく聞いてなかったと言ってから続けた。

「カラスを見ていたんだ。あの濡れ羽根は椿姫の髪色にそっくりなんだよ」

 千里さんは雪乃先輩のまとめを聞き返しながらまたカラスに目を移した。

「そういえば最近、カラスをよく見ますね」

「わたしも窓の外を見るとよく目が合うんですよ」


「最初はちょっと怖かったんですが、よく見るとガラス玉みたいな目がちょっと可愛くて」 

 そんな雑談を話をしていた時だった。

 雪乃先輩が唐突に立ち上がって言った

「千里さん、あなた人脈は広いわよね?」

「まあ、そうかな?この三人の中では一番じゃないかな」


 冗談っぽく微笑むとメッセージアプリを開く。

「誰に連絡すればいいんだい?」

 雪乃先輩は両手の指をピッタリと合わせて少しの間考え込んだ。

「まだ仮定だけれど……地学部と科学部に知り合いがいたら……今から伺いたいと」

 千里さんは手慣れた様子でタタタッと入力を済ますと


「じゃ、行こうか」

 そう言って立ち上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イラストがあるほうが想像がはかどる方はぜひ
活動報告の

『清心館の天使』日ノ宮雪乃の肖像

『わたし』如月萌花の肖像

『疑似三つ子』三人の肖像

『美術部の二つ星』二人の肖像

をご覧くださいませ。

ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ