輝夜ミツキ 「終わりだ!」
オーシャナ海域沖合 空母ヘリオストロープス
「中々しぶといな、ランディブーゲンベリア」
この海の上の戦場、坂上桜蘭を止める為に時間を稼いでいたリーダーたちは大幅に数を減らされ、残るはランディとアイシーの2人のみとなっていた。
「前に戦った時より僕も強くなったつもりだったんだけどな・・・正直、君は凄いとしか言えないね。あの時は一人一人戦ってギリギリで勝ってきた君が、僕よりも強かったアンリエッタやナターシャをも同時に相手してこうしてほぼ壊滅まで追い込んだんだ。しかも、その攻撃には一切の躊躇は無かった。君がまさかそこまでに至れるなんて思いもしなかったよ」
ランディは今の桜蘭の実力に感服していた。
(視界が薄れて来た・・・アイシーとのリンクも限界が来ている・・・これ以上の時間稼ぎは厳しいね・・・そろそろ僕も覚悟を決める時が来たかな)
そして、自身の限界も近づいている事を察した。
「ランディ・・・ぼく、ちょっと眠くなって来た・・・」
そしてそれはアイシーも同じだった。
「だね、僕もだよ。けど、あともうちょっとだけ。もう少しだけ頑張ろうよ・・・アイシー」
ランディは指の間に銃弾を挟んで腕を伸ばし、弾頭を桜蘭へと向けた。
「さぁ、次で終わらせるぞ」
そして桜蘭も銃をランディに真っ直ぐ向けた。
「まだだよ・・・何としてでも、僕たちはここで君を食い止める・・・レールガン・・・レベルマックスだ」
「ライトニング・・・っ!?」
互いに攻撃を放とうとしたその瞬間だった。
「このタイミング・・・ばっちし!捕らえたわよ、坂神桜蘭!!!」
互いの間に割って入り、桜蘭の銃を掴んで止めていたのはどこからともなく現れた荻山軽音だった。
「まさか・・・ミツキの狙いは俺を!」
桜蘭はすぐに軽音の心の内を探った。そして作戦を理解した。それと同時にこの現状はその作戦にまんまと引っかかり、逃れる事は不可能だと告げた。
「私と一緒に飛ぶわよ!!!飛ばしてーっ!!」
「くっ!!!」
桜蘭が対策をしようとする前に作戦は決行された。軽音と桜蘭の周囲に炸裂音が鳴り響き、2人は何処かへと姿を消した。
「異世界間転移装着の逆転使用・・・誰にもバレない位置から坂神桜蘭の元に転移、その直後に再び転移装置を起動させ再び誰にもバレない場所へ移し、何処から上毛が来るか分からない状態に陥らせるか・・・輝夜ミツキ、僕は稼いだよ。後はほんと、頼んだからね?」
ランディは呟きながら地面に倒れ込んだ。
「ランディ、ぼくもう眠たい」
「僕もだ・・・流石にきついね・・・ここは僕たち以外は全部壊滅・・・全く・・・あいつ1人にここまでなんて、RODの名が廃れるよ・・・」
ランディとアイシーは互いに意識が飛びそうになった。だが、
「いや、兄ぃは頑張ったって」
意識が消える直前、突然誰かによって支えられた。
「エンリコ?」
支えたのはランディよりも僅かに体格が大きくなって来た少年、ランディだった。
「アレックスのクソ野郎、俺を子ども扱いして避難させてやがったんだよ。俺だってRODのメンバーなのにさ・・・けど、この現状見るに、俺は一旦避難して正解か・・・さ、行くよ兄ぃ」
「行くって何処に・・・最終防衛地点は・・・」
「誰にも知らせてない避難場所がある。無茶したけどみんなはそこだ。急ごうぜ、ここも・・・いや、この世界の全てがもうヤバいとこまで来てる。この世界があの騎士に破壊し尽くされるのはもう秒読みのとこまで来ちまってんだ」
ランディは顔を見上げた。まだ青かった筈のこの海と空が赤くなり始めている。そして、海の向こうは更に赤みが増し、水平線の彼方に有象無象の何かが蠢いているのが見えた。
「ミツキの姉ちゃん・・・早ぇとこ暗殺なりなんなりしてくれよ?」
・
・
・
???
ドガァァァァァンッッッ!!!
「っ!!」
「ぐっ!」
謎の空間、そこに軽音と桜蘭は飛ばされた。
「ここは・・・海?いや、これはウンディーネの・・・」
「それだけじゃないわよ。ここはシルフさんにノームさん、そしてサラマンダーさんがもしもの時のために用意した牢獄。完全遮断空間の、お前の為の処刑場だぁ!!!」
桜蘭の後ろ、叫んでいたのは東郷だ。そして東郷は巨大なガトリングガンを桜蘭に向けて狙いを定めていた。
「そのガトリングガンは!!」
「魔法駆動式超大型バルカン砲だとさぁっ!!!!死にやがれ!!坂神桜蘭ぁぁっ!!!」
桜蘭が反応出来ても身体が対応しきれない角度からの連射。東郷は桜蘭をロックオンするとオーバーヒートしても構わない程永遠にトリガーを引き続けた。
「うううおぉああああああああああっっ!!!みんなを!!巧をむちゃくちゃにして殺した罪を償え!!同じくぐちゃぐちゃになって死ねぇぇぁぁぁぁっっ!!!!!!」
東郷のガトリングガンはいくら台座が固定されているのだとしても凄まじい反動がその身体にのしかかってきている。激しい振動で手首が麻痺を仕掛けている。
だが、そのトリガーは依然と力が入り、弾丸が尽きるまで撃ち尽くした。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「魔法駆動式とは言え、ただの現代兵器が俺に通用すると思ったか?」
桜蘭は頬に軽く傷を負っていたが、ほぼ無傷だった。銃を抜き、正面に構え、その銃口からは放電で作られた網のようなバリアが張られていた。
「ライトニングシールド。防御の手段の読みを誤ったな・・・」
「どうかナ?裏の裏をかく展開が大好きなミッちゃんが、この程度の奇襲でなんとかなると思ったネ!?」
(再び死角から!!!)
「タイプ!デビルマキシマヨ!!!!」
バリアを張った間反対、そこからネーちゃんがタイプデビルマキシマに変身して桜蘭目掛けて攻撃を放っていた。
「遅い・・・っ!?ぐぁっ!!!」
ネーちゃんの攻撃はネーちゃんが奇襲の前に声かけたから反応された。だが、ネーちゃんの攻撃は桜蘭に当たり、脇腹を抉り取った。
「時間停止・・・」
突如として現れた三日月の時間停止、それが桜蘭の攻撃よりも先にネーちゃんの攻撃を当てた。
(そうか、この空間の意味は更なる別空間から奇襲を仕掛け続ける為。俺の体力を少しづつ削り、機動力を落としてその最後は!!)
「「覚醒っ!!!」」
私と京也は同時に叫んだ。私と京也の手元には異世輝國の打刀と脇差を持っている。そして今の叫びの意味は文字通り、私と京也はこのタイミングで一気に覚醒に至った。
今の桜蘭はあくまでも覚醒者。しかし、他の神同様に最早弱点が無い存在になっているかもしれない。
だからこの神器化しているこの武器を取り、そして覚醒者がこの二振りを振る事で確実に桜蘭を殺す算段だ。
「うりゃああああっ!!!」
「はぁあああっ!!!」
私は突きを放ち、京也は抜刀で桜蘭を切り裂いた。
心臓と脳、覚醒者の弱点を神器化したこの刀で貫いた。お願いだ、いい加減に終われ!!
「ま・・・だだっ!!!」
まだ・・・まだ意識を保ってる!!無理矢理にでもこの命をこの世界に繋ぎ止めてる!!このっ!!!バカヤロウ!!!!
「ライトニング!!レーザー!!!」
私の後ろ!!あの銃が変形して空中ドローンみたいなのが私たちを狙ってる!!
私と京也は辛うじて後ろに飛び、桜蘭の攻撃を回避した。
「機会を逃したな・・・終わりだ、ミツ!!?」
「私の考え・・・読めないでしょ?」
桜蘭は今私の考えを理解しようとした。だけど、それは彼には出来ない。私の言葉による意識ダイブの防御、成功だ。
「読めねぇからこそ気づいたか?まだ、俺たちの攻撃は終わらねーんだよ!!先生!!」
「グレイシャル アブソリュート・ゼロ!!!」
グレイシア先生の魔法、絶対零度を誇るこの力なら、例え殺せなくてもこの作り出された氷の城は桜蘭を封じ込める事ができる。
「お願い、いい加減終わって!!!桜蘭!!!」
私には分からない、ここまで色んな事を知った。この世界における数々の歴史を、三上君の覚悟を、この戦いの全てを・・・けど、桜蘭の意志だけはどうしても分からない。
何故この世界を終わらせたいのか、この悲しいようで突き上げるような強い意志は何処から湧いてくるのか、本当に分からない。
「っっ!!!ぅぅううおおおおおああああああああああっっ!!!!」
なんか、分かってた気がする・・・グレイシア先生のこの氷でも桜蘭を止められないのかもって・・・
桜蘭は必死な顔で氷を砕いて外へと飛び出した。どうして・・・どうしてそんなになってまでまだ戦うの?
「ライトニング・・・!」
「ライトニング・・・!」
「「ソード!!」」
桜蘭はやっぱり私を狙った。私は同じ技で攻撃を合わせる。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「ジュネーブで戦って、RODと戦って、そして私たち・・・いくらなんでもあなたの身体はもう限界まで来てる筈でしょ?なのになんであなたはそうまでして戦うの!!」
「俺は・・・止まらないと・・・誓った!!」
「誰に!?」
「全ての!!俺自身にだっ!!!」
言ってる意味がもう分からないよ・・・
「モノに宿りし数多な感情 喜び 怒り 悲しみ 哀れみ 心持つあらゆる感情 その身に宿れ 汝に鬼神の如し肉体を与えん その力を振い眼前の敵を殲滅せん・・・覚醒の唄、第二番!!」
「っっ!!!」
これで、とどめだよ・・・大佐の手には異世輝國を渡しておいた。
「行くぞ!坂神桜蘭っ!!!」
「ぐっ!!!ぬがあっ!!!」
大佐の連続攻撃にもう桜蘭は反撃する力は残っていなかった。大佐に押されていく・・・
「この男・・・まだ立つのか・・・とっくに死んでいてもおかしくは無い筈なんだが・・・」
「ひゅー・・・ひゅー・・・」
桜蘭は私を見た。強い目、息も絶え絶えで大佐の言う通り、もう死んでてもおかしくない。気圧される・・・けど、私もそれは同じだ。同じくらいに私は、私はお前に勝ちたい。この世界を・・・いや、私の明日を、みんなとまた会える明日が楽しみだから!
私は絶対に負けられないんだよ!!!
「大佐!!」
「イエッサ!」
「っっっ・・・破局噴火・・・」
破局噴火・・・この技は、桜蘭の手元。銃が再び変形してショットガンの形に!!これは!!マズイ!!!
「シベリアトラップ!!!!」
「うあっ!!!」
「くっ!ミツキ!!」
桜蘭の攻撃は凄まじい衝撃波を放った。この部屋が全部一気に吹き飛んだ。
京也は私を庇ったけどかすり傷だ。他のみんなも私の後ろにいたから、大佐に向けられた噴火の魔法を喰らう事は無かった。ただ、大佐は・・・
「もう・・・一発・・・撃てるぞ・・・次は・・・もう・・・防げないだろ・・・」
桜蘭は私たちに銃口を向けた。流石にあの威力を防ぐ手段はもう無い。いくら覚醒したとしても、経験の差がありすぎる・・・
だから・・・最後の最後、最後のとっておきをまだ、残しておいた。
パチン・・・・
「桜蘭・・・あなたは本当に強いのはよく分かった。私たちじゃあなたに勝てないのが・・・できる事なら、ここで、倒したかった」
「あぁ、俺も・・・もっと早く終わらせたかった。だけど、本当に強いッスよね・・・お前たちは・・・だが、最後は・・・俺が・・・終わらせる・・・」
桜蘭は銃にエネルギーを溜め込み始めた。
「ミツキ・・・」
京也は私の肩に手を置いた。あぁ、お前の力も少し借りるよ・・・
「これで・・・」
「終わらせられる?」
桜蘭は振り返る余裕は無かった。倒した筈の大佐の方から、聞こえる筈のない声が聞こえてきた。
幼いようで、けど堂々とした爽やかな声。
これが、私の最後の最後の手段。大佐は器、大佐が自らその器を捨て去る時、そこには器が残る。そこには別の魂が入り込む余地がある。
三上君は、それを咄嗟に判断し自らの命を断った。そして今、大佐と言う器に呼び戻した。私の言葉で・・・
「桜蘭、さっきのセリフそのまま返すよ」
「斬鉄剣・五速!!滅!!!!」
「くっ!!間に合わっ!!」
「これで!!!」
「「「「「「「終わりだっ!!!!!」」」」」」」
感じた・・・
終わった感覚だ。三上君の剣が桜蘭に届いたあの瞬間、全ての戦場でも同時に戦いの終わりを告げた。
桜蘭の身体は真っ二つになって吹き飛んでいった。そして桜蘭の髪は短くなり、男の姿へと戻っていく。これで、暗殺任務、完了・・・
「いや・・・ダメだ!!バカ姉!!奪われた!!」
その時、突然三日月が叫んだ。奪われた?
まさか・・・時を?
私は桜蘭を見た。笑ってる・・・まるで、最後の最後で大当たりのくじを引いたような、そんな笑みだ。
桜蘭の意識がまだ消えて無い・・・だから出来たんだ。桜蘭は三日月と意識を繋げ、そして奪い去った・・・時を操る能力を・・・
「我が・・・盟約により・・・この身を、死へ・・・捧げる・・・」
・
・
・
「え」
私は目を瞑っていた。そして今目を開けた。景色は全く変わってない、激しい戦闘の跡。私の身体もみんなも、疲れ果てている。そして三上君はじっと前を見ていた。
けど、変わっているのが二つあるんだ。一つは目の前の桜蘭は男の姿へと戻っている。しかも完全な無傷だ。そしてもう一つは、桜蘭の隣に長く白い髪の女性が一緒に立っていた事だ。私はその女性を見た時に直感的な恐怖を感じた。ものすごく綺麗で、おっとりとした表情。けどその全てをひっくり返す言葉。
『死』
その女性はその一文字を私たち全員に叩きつけた。彼女は死の騎士、死を司る存在・・・
「やぁ、初めましてだね・・・私は死だよ、よろしくね」
死の騎士はフレンドリーに私たちに挨拶した。
「んで・・・なんでよ・・・あそこまでやって・・・なんで!!!まだあんたは死なないのよ!!!坂神桜蘭ぁぁっ!!!」
限界だったんだ、東郷は桜蘭に向かって走っていた。
「ダメ!!東郷さんっ!!!」
「ららっ!!!」
私も京也も動揺してた。止めに行こうにも身体は最早私の意志に応えてくれない。
「ダメだよ怖い顔は・・・その可愛い顔が台無しになっちゃうよ。ほら、おねーさんは怖くないから・・・死は、決して怖くないからね・・・だから、死ぬ時は綺麗に死のっか」
「あ・・・」
騎士は東郷に軽く触れた。その瞬間に東郷は眠るように倒れ込んだ。死の騎士はそれを抱き抱えるとゆっくりと優しく寝かせた。
「・・・ミツキちゃん」
少し目を瞑った軽音が私に話しかけた。
「・・・だめ」
私は軽音が何を言おうとしてるのか分かっていた。だから口から出たのはこの一言だけだった。
「優しいわね、本当に可愛い・・・チャンさん、行くわよ」
「はいナ!」
逆にネーちゃんは何も言わずに軽音の隣に立って、私に背を向け、桜蘭を睨んだ。私には見えないように、2人ともボロボロと泣きながら震えて構える。
「ミツキちゃん・・・忘れないでね」
そして泣き止んだ2人は、私に笑顔を送った。分かってる・・・諦めないよ、まだまだ・・・私は、諦めたりなんかするもんか・・・忘れたりなんかするものか。この現象、例え時間が戻されたのだとしても・・・次こそ仕留める。
タイミングは、ネーちゃんと軽音が殺される瞬間。その瞬間を見極め、死の騎士を潜り抜ける。
そして、残った全員で渾身の一撃を桜蘭に叩き込む。
ネーちゃんと軽音はそれぞれ死の騎士に立ち向かった。
「死を恐れないその顔良いね。おねーさん、そう言う子大好きだな・・・あれ?」
私たちは死の騎士をすり抜けた。私の後ろで気配が無くなる・・・命が、2つ消え去った・・・
「うおあああああああああああああああああっっ!!!!」
私は銃弾を一発装填した。天石の弾丸。私の出せる最強の力・・・
「ラスト・レイッッッ!!!!」
私、三日月、京也、グレイシア先生、そして三上君。この5人の最大威力の一撃。もうどうなっても良い、これで・・・これで!!!終われ!!!
「現実は非情だな・・・」
私の額には銃口が突きつけられていた。時間停止、いや、停止した上に巻き戻して全てをズラされた。
甘かったのか?奪われた力、それは時間の能力だ。いや、大元のクロノスですらこんな方法は出来ない。巻き戻すまでは出来ても、1人1人の行動を別方向に向けさせるなんて・・・
これは、永零の能力。結果を捻じ曲げられたんだ。奪っていたのは三日月だけじゃない。他のセカンダビリティも全てだ・・・だから時間は巻き戻っても私たちは満身創痍で、桜蘭は別の結果の世界線に立っていたんだ。
「目撃者の死によって、俺の最後の目的地の扉が開かれる・・・これで終わりだ、輝夜ミツキ」
私が見えた景色は、相変わらず悲しい顔をする桜蘭、手を伸ばす京也、必死に駆け寄ってくる三日月・・・見えたのはこれだけだった。
私の意志は、ここから一気に何処かへと飛んで行った。
最終局面 THE FINAL DESTINATION 完




