表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/122

三上飯綱 エルメス 神和住零羅 「これで」

 三上飯綱 天正市


 「やるなぁ〜・・・ニガヨモギを別空間に丸ごとかぁ〜・・・ちっ、ま〜た腹減ってきたなぁ〜・・・」


 騎士はまたガリッガリに痩せこけた。こんなチャンスは二度と来ない!!ここで一気に畳み掛ける!!


 「ひょぉぉあっ!!」


 麗沢のあんちゃんが流血光刃を構えて騎士に切り掛かった。


 「お前から近づいてきてくれるのかぁ〜、嬉しいなぁ〜!!!」


 「行くでござる!!リザ殿!!」

 「おっけー!」


 騎士に触れられたら即アウトだぞ?麗沢のあんちゃん一体何を・・・


 すれ違いざま、麗沢のあんちゃんはなんと、騎士の両腕を流血光刃で切り伏せた。


 「ぁあ〜?」


 「HAHAHA、どうでござるか?食べきれなかったでござろう?」


 そして麗沢のあんちゃんは丸い体型に戻ってポーズを決めた。どうなってんの?けど、今一瞬リザヴェノフが麗沢のあんちゃんに何か渡してたような・・・


 「・・・ん〜・・・お前、今何食ったんだぁ〜?何か食ったよなぁ〜?でなきゃ死んでるもんなぁ〜・・・」


 食った?この一瞬で?麗沢のあんちゃんもエネルギー吸収みたいな力あったっけ?


 「ふむ、もうバレてしまうとは・・・左様でござる!ネタバラシはコレ!!」


 麗沢のあんちゃんが指差した先はリザヴェノフの手元、そこにはなんか包み紙みたいのに包まれた丸いのがあった。おいらも大好きなジャンキーなファストフード料理、こりゃハンバーガーだ。


 「ハンバーガーだぁ〜?そんなんで俺の飢餓を食い止たってのかぁ〜?んなもん」


 「出来るござるんだなぁこれが。以前デズモンドと新商品開発会議を行なった時の事でござる。真に究極のバーガーを作るでござるという話になりましてな?そこで作られたのがハイコレ!ビーストの肉をベースに!!アボガド!卵!ビタミンC!カルシウム!インドメタシンにプロテインやらなにやら兎に角栄養価のあるものを片っ端から突っ込み!!そして作られたのがコレ!!一口食べれば一日分のカロリー!!一つ食べれば1週間飲まず食わずでいられる総熱量なんと10万キロカロリー越えの究極野戦食糧!!名をOH MY BURGODオウマイヴァーガッでござる!!キリッ!」


 「そして、それを私が作ってあなたの攻撃の瞬間にあーん♡させてあげたの。元ハンバーガー屋店員のスピード舐めないでね?」


 成る程、リザヴェノフがそのバーガー作って麗沢のあんちゃんが食って相殺したのか・・・うん、ツッコミはもうしなくていいね、どゆこっちゃね。


 「へぇ〜、ボリューム満点な上に超スピードの提供時間かぁ〜、俺も食いてぇなぁ〜、税込2380円くらいでポテトドリンクセットで売ってくれねぇかなぁ〜。そんくらいなら出すぜぇ〜?」


 「お主以外とノリいいのでござるな・・・」


 騎士は器用に足を使ってよれよれのズボンからがま口財布を取り出した


 「けど残念ね、これはまだ被売品よ」


 「ちっ、まぁいいぜぇ〜。お前らごと食って味わってやるからなぁ〜・・・俺の腕もいだくらいでは天秤は壊れねぇんだよぉ〜」


 んで、騎士はがま口財布をしまうと瞬間に腕を元に治した。


 「ならば勝負でござる!!今度は拙者がお主を上回って見せよう!!」


 麗沢のあんちゃんは真っ向から騎士の食うに立ち向かうつもりだ。そして、真っ向からあいつの力を上回るつもりなんだ。だったらおいらも付き合うさ!!


 「弾!飯綱ちゃん!!」


 「おうともさ!!」

 「行くでござる!!」


 黒火斉焼・・・この技で行く、真正面は麗沢なあんちゃんがあいつの両腕を押さえる。そしておいらは騎士の背後からこの技で一気に焼き尽くす。


 「ひょぉぉぉおおおあああっ!!?」


 まずは麗沢のあんちゃんが剣を捨て、両腕を掴みにかかった。


 「いいぜぇ!食い尽くしてやるよぉ!!!」


 騎士は麗沢のあんちゃんに合わせてその両腕を突き出して取っ組み合いになった。


 「食らい尽くせるでござるかなっ!?リザ殿!」

 「はい!!」


 その直後、リザヴェノフは麗沢のあんちゃんの横に立ってその口に例のハンバーガーを突っ込み出した。


 某餅つき職人みたいな動きで麗沢のあんちゃんの中にハンバーガーが入ってく。ものっそいシュールな絵面だけど、今はこれが一番騎士の動きを止められる唯一の手段なんだ。


 「うおおおおおおおっ!!!!!」


 「っっ!!!すげぇカロリーだなおぃ・・・狙いはキャパオーバーかぁ〜?けど俺はまだまだ食えるぜぇ〜!!?」


 騎士の身体がデカくなってく・・・ただ、動きが鈍くもなってきてる。栄養過多・・・今、それが騎士を蝕み始めた。


 「っ・・・」


 ここ・・・このタイミング!!騎士が唾を飲み込んだこの瞬間!!意識が麗沢のあんちゃんに向ききったこの時だ!!!


 「黒火・・・斉焼ッッッ!!!」

 「っっ!!?」


 タイミングは逃さなかった。


 おいらの戦い方は礼兄ちゃんの動きを見て、それをおいら流にアレンジした技を使って来た。けど、これだけは礼兄ちゃんから直接教わった。縮地の歩法・・・相手の意識に合わせて気が付かないうちに一歩で間合いを詰める。


 だから気が付かなかったろ?おいらが背後に回って攻撃される瞬間がさ・・・おいらは黒い炎の斬撃を全力で飛ばした。真っ二つ、このまま一気に焼き尽くされろ。


 「やったで・・・ござるな・・・」


 麗沢のあんちゃんは真正面から騎士がやられるのを見届けた。


 「んっ!!?」


 けどそれと同時だ。麗沢のあんちゃんが急にバタンと倒れた。まるで綿が寄ったぬいぐるみみたいにぐにゃんと倒れ込んでしまったんだ。


 「弾!?」

 「あんちゃん!!」


 おいらは騎士の方を見た。なにしやがった!?


 騎士は笑っていた。こいつ、せめて相打ちにしようってか!!?いや・・・違う!!全て読まれてた!!


 「ぁぁあ〜・・・美味かったぁ〜・・・・・」


 騎士を焼き尽くそうとしていた炎が消えた。そして真っ二つになった上半身しか無い騎士から、下半身か一気に伸びた。しかも、出て来たのは今までの人間の姿じゃない。あれは前脚、馬のような脚が生えた。寝かせつけのおとぎ話で聞いたことのある。ケンタウロスみたいだ・・・これが、これが本当の・・・飢餓の騎士。


 「食ったのは俺だぁ。正直、ここまで俺が手こずるとはなぁ〜・・・けど、お前から筋力を奪っちまえばお前は顎を動かせなくなる・・・食えなくなるよなぁ〜・・・」


 騎士の両腕が輝きだした。これは、またニガヨモギ・・・今度は更に食った分の上乗せ、これは、この星諸共枯れ果てる!!!止めろ!!何としても!!


 けど、遅かった。速すぎた・・・何もかもがあいつの力に変わってる。速さも威力も、気がつけば周囲はオレンジ色の光に包まれていた。


 力が・・・入らなくなる・・・ダメだ・・・おいらは、お母ちゃんとの約束を・・・礼兄ちゃんとの約束を・・・まだ、果たせて無い・・・負ける・・・訳には・・・






 『フォックス・・・』


 礼・・・兄ちゃん???今、声が聞こえた?


 『飯綱・・・』


 お母ちゃんの声も・・・


 『おんめぇ・・・負けるんかぁ?』


 稲荷・・・負けるだって?負けたくないさね。こんなんでさ。


 『いや、ここはお前の負けです。飯綱』


 ニヒルお姉ちゃん・・・負けって、おいらは・・・


 『フォックス・・・君は負けたよ。だってそうでしょ?君はなりたい自分になりきれなかったんだから・・・』


 っっっ!!!


 おいらの心に電気が走った・・・負け、その意味が分かった。そうだったんだ・・・憧れでは、あの騎士に勝てる訳無かったんだ。子どもの心のおいらのままでは・・・


 『ほんま、世話の焼ける子やわ・・・あんな?飯綱、あんたはもう独り立ち出来るんや。いつまでも一緒に暮らしたいんは分かるけんどなぁ、いつかは独り立ちせなあかんのやで?』


 『僕はフォックスと、グレイシアとずっと一緒に暮らしたい。けど、いつまでも僕に頼って暮らして欲しくないな。一緒に暮らすってのは、一緒に支え合うって事だよ』


 お母ちゃん・・・礼兄ちゃん・・・


 『おんめぇは何の為にオラをぶちのめしてここに来た?まだ、オラにおんぶに抱っこかぁ?』


 むかっ・・・おいらはお前に抱っこされた覚えはないやい。


 『なら、立てんべな。あんな飢餓の騎士ごときに奪われるなんてのは有り得ねぇっぺよ。


 立て、真正面からやり合え、お前の力は一瞬の隙を突くなんて卑怯なことしなくてもな、お前はあいつに勝てる。それくらいお前は強いんだからな』


 「フォックス・・・今こそ、なりたい自分になる時だ」







 「っ!!」






 シャラン・・・


 何かが鳴り響いた。


 「な、なにがあったでござる?拙者は・・・確かに騎士に・・・」


 麗沢のあんちゃんは無事だ。


 シャン・・・


 またこの音・・・鈴の音みたいな、ん?鳴らしたのはおいら?


 「ぁあ?・・・んだこりゃ・・・芽?枯り尽くした筈の大地にだと・・・」


 鳴らしてるのはおいらだ。これはおいらの力・・・この鈴こそ・・・


 シャラン!!

 

 おいらは鈴を鳴らした。その瞬間、周囲に一気に大地に青々と苗が芽吹く。枯れ果てた土地が、淀んだ朝焼けの空が綺麗に澄み渡った。


 「この力・・・まさかお前」


 騎士は今までにない曇った顔でおいらを睨んだ。


 「あれ・・・フォックスちゃん、なの?」


 リザヴェノフはおいらをぽかんと眺めた。


 「その姿・・・白き狐の巫女・・・神の使い。いや、五穀豊穣の神かぁ〜・・・」


 騎士はおいらの姿を見てそう言った。そう見えてるのか、お前には・・・


 「いや、おいらは神なんかじゃないよ。けどもうお前はおいらに、いや、この世界からなにも奪えはしない。おいらは神の子にして、妖の子。そして・・・大切な、大切な人の子!!姓は三上!!名は飯綱!!んでもって、ミドルネームは!!マイケルジェイフォックス!!三上 マイケルジェイフォックス 飯綱!!」


 「くそなげーな!!おぃ〜!!!」


 騎士はツッコミを入れた後おいらに向かって来た。無駄さ、お前はもうおいらを食うなんて出来ないんだから。


 シャン・・・


 おいらは手に持った鈴を鳴らして空を舞った。そして終わらせるよ、おいらがこれまで学んだ全てを・・・この舞に・・・


 「ひと〜つ枯れ〜た大地に〜恵の雨ふ〜れば〜」


 シャン・・・シャン・・・


 「ふた〜つそこ〜に新た〜に命〜芽生え」


 「うおぅ!?なんでござる!?」

 「足元の芽が騎士に絡みついて!!」


 「っ!!んだこりゃぁ〜!!蔓が絡みついて!!」


 二つ目の唄、芽吹いた苗が一気に根を伸ばし、葉が空へと伸びた。


 シャラララン!!


 「み〜っつ〜すべ〜てを満たせし稲穂実りて〜」


 おいらのこの三つ目の唄で一帯に芽吹いた苗に稲が実った。


 「稲?いや、この実ってる実は炎!!真っ白な炎!!!くそ!!邪魔だ!!っっ!?ぐっ!!食った力が!!!」


 騎士はもがく。蔦が足に絡みつき、その奪った力を大地に戻させる。奪われた命はおいらには戻せないけど、この大地に還元は出来る。


 シャラン!!シャラン!シャラン!!!


 「よーっつ・・・総てを奪いし邪なる者よ!!その力!!この大地にへと返し給へ!!」


 シャラララララン!!!!


 騎士は前脚をガクッと倒した。


 「っっ・・・まさか、この俺がぁ・・・お前に・・・」


 「うん、負けだよあんちゃん・・・これで・・・」


 おいらは鈴を構えた。

  

 ・


 ・


 ・


 エルメス 回想


 「え・・・何これ」

 

 「流石にこれは俺も予想外だ・・・リチャードの野郎なんてもんを・・・」


 ドアの先、そこには私の予想とは遥かに違うものがあった。これはもはや戦闘機とは呼べない。


 機械仕掛けの腕や脚、その中心に丁度人一人が入り込めそうな空間がある。まるでアニメに出てくるロボットみたいだ。

  

 「あぁ!君がパイロットか!!」


 白衣を来た少し・・・失礼ながら言うけど大分禿げ上がったおじさんが私の元に駆け寄って来た。


 「えぇ、エルメスよ」


 「エーデルだ、そしてこいつが第7世代型戦闘機、XF-7だ」


 第七世代、私のAT-001は第五世代ってミカミから聞いた事がある。第五世代はこっちの世界でも最新式って聞いてたんだけどな・・・次の次の世代を既に開発してるのか、この世界は・・・


 「エーデル、前にジャパンオタク(リチャード)がガ◯ダム作るって息巻いてたが、それがこれか?」


 ジャックは少し呆れ気味にエーデルに尋ねた。


 「そんなとこだ。とは言え、あのロボットはデカすぎるのでね。だから現実的に、尚且つ有効的なものをと依頼を受けて製作した。直感的な操作感に加え、無尽蔵にGを与えても耐えうる耐久性と機動力。そして現行の戦闘機よりも更に柔軟に対応できる兵装。さ、君はこれに着替えてくれたまえ。特殊な耐Gスーツだ」


 渡された服は耐Gスーツと呼ぶにはゴム質で薄っぺらい。こんなのでいいのか?まぁいい、時間が無いんだ。さっさと着替えよう。


 「・・・お、おいここで着替えるのか」


 「時間が無いんだ、羞恥心に囚われてる暇なんてないのよ」


 ジャックは少し顔を逸らし、エーデルは逆に顔を真っ赤にしてじろじろ見て来た。


 私は着替え終わった。大分肌にスーツが食い付く・・・


 「よろしい、そのスーツはこのXF-7専用の特殊なスーツでね。そのスーツとこの機体を直接繋ぐ事で直感的な操作を実現するものだ。早速乗り込んでくれたまえ」


 私はこの機体の窪みに乗り込んだ。腕を通す穴がある。ここに手を入れるのか・・・


 ガチチチチンッッ!!!


 その直後、このXF-7は私を包むように外装が展開した。そして目の前のなにも無い筈のとこに文字が現れた。ヘッドアップディスプレイみたいだけど、どこから表示してるんだ?


 《all clear》


 無数のこの世界の言語の英語が流れた後、最後にそう表示が出た。オールクリア、完了って事。これはもう動ける・・・


 ドガァァァァァッッ!!!

 

 「っ!!」


 「敵による攻撃が地下施設を直撃しましたぁっ!!」


 これ以上説明聞いてる余裕はなさそうね・・・後はぶっつけ本番!!





 現在 エリア51 地上


 キィィィィィィ・・・・・


 思ってたよりもエンジン音が静かだ。私は寸前でこっち側のテレビ局のおっさんとメグちゃんを救出する事に成功した。


 「貴様は・・・成る程、それが奥の手という訳か・・・その手の存在は早急に潰すに限るか・・・アポカリプスの弓!!」


 騎士がものすごい速さで弓を引く。


 兵装1!!

 「ラグナロクの槍!!」


 私は手に持った槍を突き出した。放たれたエネルギーの矢はこの槍の前に掻き消えた。


 「ん・・・矢を弾いた?」


 「そうよ。流石は第七世代ね、次世代の更に次、その技術はどうやらあなたたち四騎士をも上回るみたいよ?」


 「ほう・・・相当な自信を持っているようだ。だが、私は支配の概念だ・・・その力すら、私の支配の前に成す術なく敗れ去る!!収束式!!」


 私の周囲を囲んだ攻撃!!


 「ホクシンイットーリュー!薙刀術!!」


 ピーッッ!!!

 見える・・・全ての攻撃の軌道がこのエアディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ)に予測され表示される。私のすべき事はこの攻撃に対してただ合わせるだけでいい。持ち前の薙刀術で全部打ち落とした。


 成る程、これは本当に凄い・・・第1兵装、ラグナロクの槍。この戦闘機の近接用メインウェポンだ。コンプレッションプラズマブレードってので作られた、ミカミの異世輝國に匹敵する高温、高密度の刃の槍。


 非常に軽い上に、このスーツが外装ボディと即座に槍へ連携し、敵の攻撃を瞬時に予測。パイロットにも影響し、私の視界がスローモーションに感じるようになり、あのほぼ見えない速さの攻撃を防ぎ切った。


 騎士は私の動きを見るや否や、矢を剣のように手に持って直接私に向かってきた。


 ピピピピピッッ!!!


 危険信号が複数から・・・この大空、風と雷も同時に来る、急上昇で一気に雲の上に行く!!


 風の流れ、雨や氷の粒、そこから発生する電気。その全てを読み取って私は雲の上に飛び出した。そして槍を構え直して一気に急降下する。


 騎士が雲を突き抜けてくると同時に私の槍と騎士の矢がぶつかり合った。こいつ、剣士としても超一流だ。踏み込みの効かない筈の上空で、勢いのみの踏み込みが私を押し除けんばかりの攻撃を何発も叩き込んでくる。


 けど、私もこの機体も負けちゃいない。全て相手にしてやる!そして!!


 兵装2

 「マシンガンフィンガー!!」


 私は左腕を突き出し、指先からマシンガンを掃射した。兵装2、マシンガンフィンガー。私の指先に装備された5本の筒からプラズマ粒子の弾丸が毎分四千発発射される。


 騎士は一気に離れて私と距離を取った。距離を取ると言うことは奴にダメージが行くと言うこと・・・あの騎士は無敵じゃない。


 「行くぞ!!」


 私は距離を詰めた、このまま一気に攻め立てる。反撃の隙なんか与えない。


 そして今の攻撃で分かった事がもう一つある。それは、あの騎士は私相手に本気になってないって事だ。未知なる力、奴はこの機体がどの程度なのか様子を見てる。


 更にもう一つ、奴は支配を司る存在の筈なのに、支配しているのは自然現象のみ。こいつならおそらく人間もなんらかの方法で支配する、サクラみたいな能力があってもおかしくない筈なんだ。


 だからこそ奴が本気になる前の、この今が奴を倒せる最大のチャンス。このFX-7の極秘兵装を使って奴を、塵一つ残さず消し飛ばす。


 ただ、この極秘兵装は一発が限度、しかも通常兵装での運用も普通の戦闘機と違って作戦可能時間が三十分程度と極端に短い、残された時間は十分程。この時間内に確実に倒す!!


 「包囲式」


 弓矢が私の全方位を囲ってきた。


 「フィンガーマシンガン、AIビットモード!!」


 私の指先のマシンガンがそれぞれ分離した。そして私の周囲をふわふわと飛び、陣形を組んだ。


 それと同時だ、無数の矢が同時に私に向かって襲いかかって来た。今度はしかも連射だ。私の空中に漂うフィンガーマシンガンは私に取って危険な矢を判別しそこに向かってプラズマが放たれていった。


 ただ、コイツにも限界があるみたいだ。弾ききれなかった矢は私の槍で更に打ち落とす。まずいな、このままでは近づけない。


 この極秘兵装を使うにはかなり至近距離でないと効果は得られない・・・仕方ない、耐えてくれよ!!!


 「っっ!!!」


 私は防御をかなぐり捨て、矢を喰らいながら一気に距離を詰めた。電磁バリア、この私と機体の周りには外敵攻撃を自動で弾く電磁バリアが展開されてる。


 これのおかげで、ほぼ生身で外に出ているにも関わらず、こんな無茶な戦闘が出来る。けど、これもダメージ軽減には限界がある。それでもって一気に活動時間を縮める事になってしまう。


 「うおりゃぁっ!!!」


 私は踏み込んで騎士に切り掛かった。騎士は分かっていたかのように矢の剣で受け止めた。


 「ふむ、中々の機体だ・・・大方の戦闘力は把握した。ならば・・・今度は私の攻撃と行こう・・・大空の女王よ・・・」


 口から矢を!?こいつ、そんな事も!!!


 私は一気にしゃがんで口から放たれた矢を避けた。しかし


 「ぐっぁっ!!!」


 しまった・・・この矢の狙いは私の後ろ、あのテレビ局のおっさんだ・・・いや、なんでだ?何故今このタイミングで奴を・・・まさか!?


 「安心しろ、死にはせん・・・私は支配、支配には支配される存在が必要だ・・・まずは、お前からだ。我が子よ・・・」


 「ぬぅ・・・ぁあっ!!ぉ、仰せの・・ままにっ!!」


 テレビ局のおっさんは普通の人間とは到底思えない動きで周囲を襲い始めた。


 「くっ!!!」


 「さぁ、どうする?ここまで詰めた距離をもう一度離すか?それとも、全てを犠牲にして私に向かうか・・・」


 こいつ、私が極秘兵装を使おうとしてる事を察してるのか。そして、やっぱり使って来た・・・矢を喰らったものを支配する・・・人間の支配の力。


 「この!!野郎!!」


 私は騎士を掴んで一気に地上へと向かった。このまま地面に叩きつけてやる。そう思ったがそう簡単にはいかなかった。地上に到着する直前、あのテレビ局のおっさんが地面との間に割って入って来た。私は手を離して距離を取ってしまった。


 「いい子だ・・・主の危機に颯爽と現れ護衛する。後で褒美をくれてやろう・・・」


 「お・・・俺は・・・」


 ・・・・・・


 「極秘兵装、リベリオン・オブ・ザ・クサナギソード」


 私の声と共に私の槍は応えた。私の槍の先端のプラズマブレードが赤色に発光し始めた。まるで魔法の色の違いみたいだ・・・感覚で分かる、最上級魔法クラスのエネルギーが今、この槍に集約されてる。


 「凄まじいエネルギー反応・・・だがいいのか?私に仕えるこの者を、犠牲にすると?」


 「そうよ、大体そいつ私の国の住民じゃないから。悪いけど一女王としてその命を天秤にかけたらこの犠牲はやむなしよ。むしろ安いくらいね」


 「ふむ、いい判断だ。しかし、その高エネルギー体は一発放つのが限度であろう。私に当てられるか?」


 「当てるわ、必ず・・・」


 私と騎士との間に切れそうで切れない糸が出来た。この糸を先に切った方が負ける。この糸を切らずに・・・けど確実に手繰り寄せる。その為には・・・お前の力が必要だ。


 「ぬぅおおおおあああっ!!!!」


 テレビ局のおっさんが騎士の矢を持って迫ってきた。私は前へと進む。


 そしてすれ違いざま・・・


 「っ!?」


 ようやく・・・騎士から驚きと言う表情を捉えた。テレビ局のおっさんは、私を素通りし、そして振り返り、その体に刺さっていた矢抜き、騎士に向けて投げ放っていた。


 矢は騎士の足を掠めた。


 「何故・・・」

 「俺は・・・俺の望みは!!お前が絶望に歪む姿が見たいのだ!!!それこそが最高の撮れ高!!腐ったマスコミ根性!!確かに約束は果たされたぞ!!お前が堕ちる瞬間を!!」


 この男は歪みに歪み切っている。あの矢はサクラの能力とは雲泥の差だ。あの矢を喰らった者はおそらく、あの騎士に心の底から魅入ってしまうのだろう。だがこの男は、あえてその能力を喰らい、その歪んだ感情を表へと出した。


 支配の騎士、お前は人間を知らなさ過ぎる。人間は、私の思う以上に歪んでて汚いんだ。だからお前は、こんなおっさん一人、支配出来ない。


 「っ・・・」


 私は振り下ろす構えを取って、騎士の前に立った。


 「勝負は一瞬で片がつく。最後に私の事を知っておけ。私はアダムス連合王国が女王にして、全ての世界の自由と平和を願う者だ。さようなら、たった一人の孤独な支配者よ、これで・・・・」

 

 ・


 ・


 ・


 神和住 零羅 ジュネーブ


 「カード・・・」


 戦争の騎士さんは訝しんだ目をしてわたくしを見つめました。


 


 回想


 この戦争が始まる前の事、わたくしと一兆さんは一緒に修行していました。


 「ふぅ、やはり一兆さんは凄いですね。わたくしの拳打を確実に当てたと思ったのですが・・・」


 「当たってるわばーか。見ろ、これでカードぶっ壊されんの何枚目だっつー話だ。これ作ってるジジイ、最初に寄越したデッキ以降は有料だ〜つって1枚単位でしか売らねぇぼったくりだぜ?ちっとはなんでもぶっ壊すんじゃねぇ、絡め手の技でも使いやがれ」


 「あいたたた!!痛いですよぅ!!」


 少しイライラしていたのか、一兆さんはわたくしのこめかみをぐりぐりして来ました。あのカード、結構お高いんですね・・・ごめんなさい。


 「ですが、絡め手と言いましてもどうすれば良いのか・・・一兆さんは逆にどうやってそのイカサマってのをやってるのですか?」


 わたくしは気になって質問してみました。一兆さんのわたくしの攻撃を毎回の如く出し抜かれて気がつけば背後に立たれているというのが良くありますから。


 「なに、零羅イカサマやりたいの?」


 「やりたいと言うより、どうやってるのか気になりまして・・・まるでわたくしの行動を全て見透かされてるかのような足運びとそのカード捌き。それのおかげで、これまで引き分けはあっても結局一兆さんに勝ててないんですよ」


 「そりゃガキにしかも女子に負けたくねーもん。やられる前に戦いやめてんの。とは言っても、一応はお前は俺の師であり弟子って関係か・・・一応教えとくわ」


 「へ?」


 あれ、こう言う時大体めんどくさそうにして寝たふりとかするのですが・・・何か風の吹き回しでも変わったのでしょうか?


 「いいか?イカサマっつーのは大前提として相手を騙す事だ。しかもいかに自分が騙してるって事を悟らせずにな。じゃぁそれをすんのにどうすんのかって話だが、まずはレッスン1、己を知るだ」


 「己を知る・・・もう1人のわたしの事でしょうか?それでしたら自身を見つめ直す機会はいっぱいありましたよ?」


 「馬鹿か、イカサマにおける自分を知るはそんな自分の性格を知るなんてレベルじゃねーよ。日常の僅かな癖、1日の瞬きの回数、その際にどのタイミングでどこを観ているのか、食事の箸にナイフやフォークの持ち方、どこの角度から食事に手を出すのか、咀嚼回数は何回か、トイレには何時にどのタイミングでどれだけすんのか。最低限でもこの程度くらいレベルの事を把握出来なきゃダメだぜ」


 イカサマ・・・舐めてました。一兆さんはそれを全て把握してるだなんて・・・


 「で、それが理解できたらレッスンつー、相手を知るだ。これまた同じ感じで、相手の何から何まで癖の一つ一つを徹底的に調べ上げる事。自分を知る以上に難しいぜ?」


 成る程・・・己を知り、更に相手もとことん知ると言う事なのですね・・・あれ?ちょっと待って下さい。


 「一兆さん・・・まさか、わたくしのお手洗いの回数とかも・・・」


 わたくしは途中まで言いかけてやめました。


 「さぁ?どうだろうな?」


 そして流されました。けど、そこまで知られてると思うと・・・少しこう、むずってします。


 「んでだ、一番重要なのがレッスン3・・・己を偽る事だ」


 「偽る?」


 「あぁ、特に相手が同じようにイカサマしてくる場合、自身を全く別の存在だと見せつけてやる必要がある。相手は架空の俺を判断して対策を練る。だからレッスン1が必用なんだよ、己を偽る為に己を知るって事がな」


 己を偽る為に己を知る・・・これは凄く重要な事なのかもしれません。


 「んで最後はレッスン4、相手をとことん馬鹿にして煽る」


 一兆さんはニヤッと笑って言ってみせました。


 「そ、それは一兆さんの趣味では・・・」


 「いや、めっちゃじゅーよーな事だぜこれ。確かに煽られた鴨がガーガー鳴いて喚いてんの見るのは笑える事この上ないけどな?実力が相手と拮抗した場合、勝負を動かせんのは己の口だ。相手に突かれたくねー事をネチネチ続けてボロを出させんのさ。で、ボロが一個出たらもうお前は勝ちだ。


 勝負の支配権は完全に掌になって、やりたい放題できんだぜ?そん時の一方的にやられる奴の顔と来たらまー笑えるのなんのなのよ。つーわけで、コレお前に出来んの?出来たら偉いよ?」


 一兆さんはケラケラと笑いながら言い切りました。この顔、不可能だって言ってますね。全く・・・そう言われたらわたくし結構ムキになるタイプですよ?







 現在


 「そうです、カードも織り交ぜたこの戦い方がいまのわたくしです。今までの神破聖拳とも魔覇斗剛拳流とも違うのですよ」


 レッスン1、己を知る。本当に頑張りましたよコレは・・・けどやり遂げました。徹底して自分を観察して、わたしにも観察してもらってようやく全ての癖を把握する事が出来ました。


 「空間支配ね〜、いつのまにそんなん手に入れたのさ」


 「ついさっきですよ?普段の一兆さんは嫌がるでしょうが何せ死ぬ寸前ですから、死人に口なしとでも言いましょうか。わたくしを騙した腹いせにファーストキス奪っておきました」


 レッスン2相手を知る、この戦いの応酬から全てを理解するというのは難しいですけど、これは相手が良かったです。比較的シンプルな性格の方でしたから、こうしてすぐにレッスン3を始められました。


 自身を偽るを・・・


 「今の子っておませさんだねー・・・けど、君がかなり厄介な存在なのは認めなくちゃね。俺、結構本気になるよ?」


 騎士さんは剣を構え直しました。未来予知を発動・・・


 「っ・・・」


 今の未来・・・なんなんですか、今のは・・・


 「見えたでしょ?次で終わらせるぜ?本気の俺は避けるとか防ぐとかそんなレベルじゃねーの。俺の剣の前にはあらゆる攻撃も防御も無力」


 「そうですか?さっきまで散々わたくしに嵌められた事にも気がついていなかったと言うのに、本気を出したらわたくしを倒せると・・・笑えます。では予告しましょう、わたくしはあなたの攻撃を確実に止めて見せますと」


 「むー、君結構口悪いって言われない?君が相手にしてるのは戦争の騎士、あらゆる戦いを司る存在。馬鹿にすんのもそろそろやめなよなー・・・じゃぁ構えろ」


 騎士さんの声色が変わりました・・・そして、目線もわたくしを貫かんばかりに強い・・・こここそが、正念場・・・


 「そうだ。そしてしかと見届けろ、これで」


 えっ・・・


 今・・・何が起きたのですか?全く・・・何も見えませんでした。貫かれてる・・・わたくしの急所が全て・・・見えていた。止められた筈の攻撃なのに・・・三上さんの宿地?いえ、あれよりも・・・あ、意識が、消し飛んで・・・


 「真の力ってやつだよ・・・さよなら、神破聖拳の申し子ちゃん・・・さて、次はお父さんの番かな?」


 「零羅・・・まさか・・・」


 「あらり?戦意喪失?参ったな〜・・・ま、んならさっさと終わらせるか」


 騎士さんは頭をぽりぽりと掻きました。


 「あぁ、勝負は決した。この勝負、零羅との繋がりを切ったお前の負けだ」


 「っっ!??」

 ドンッ!!!!


 「は?へ?」


 「神破(かみやぶりし)零羅(はじまりのみち)


 わたくしは騎士さんの背後から最強の一撃を喰らわせました。そう、これ、この瞬間を待っていたんです。


 「なん・・・で・・・確実に・・・殺した・・・」


 「レッスン4、相手を煽る。わたくしの煽りに乗ってくれてありがとうございます騎士さん。だから最後の一手、レッスン5が始められました」


 「は?」


 騎士さんは一体何のことか何の話なのかも分かっていないみたいですね。


 「レッスン5、イカサマを仕掛けるタイミングは相手が完全に勝利を確信した瞬間。そぅ、まさに今あなたがわたくしを殺したと確信したその瞬間をわたくしはずっと待っていたんですよ。今までのやり取りも戦いの応酬も全部、今あなたの背後から二度と立てなくなる一撃を喰らわせる為に仕掛けた事なのです」


 「イカサマ?死んだのに・・・無理だろ・・・」


 騎士さんは苦笑いをわたくしに向けました。


 「ふふ、それがルールを変えられても、越える事が出来ないあなたの限界です。死を欺く方法はあるのですよ?今回の場合は、見えていた未来の攻撃を敢えて全て受け、受ける際に一時的に攻撃を喰らう場所を別空間に飛ばす事です。そしてあなたが勝利を確信する瞬間に元に戻す。わたくしは一瞬本当に死にますが、即座に蘇生すれば魂はまだ消えずに元の身体に戻る。それが今のわたくしのイカサマです」


 「は、ははは・・・嘘だろおぃ、空間支配をそんな一瞬でこんな風に使うなんてよ。しかも、まだ10代にも満たない子がさぁ・・・」


 「それこそがあなたの敗因ですよ。偽りのわたくしを本当のわたくしであると錯覚した。確かに、昨日までのわたくしだったら勝てなかったかもしれません。ですが、大切な方を失い、わたくしはまた変わりました。昨日のわたくし、数秒前のわたくし、全部がわたくしであってわたくしではないのですよー」


 「ん?んー?よく、分かんないなぁ」


 えぇ、わたくしもです。わたくしも今のは口から出まかせで言ったので・・・


 「わからなくても良いじゃないですか。あなたの負けは変わらないですから。あ、そうです、大逆転して負けた人へのレッスン6があるのです。聞いておきます?」


 「なによ?」


 「満面の笑みで嫌味を言う。らしいですよ?ですから今回はそうですねぇ〜・・・そうです!あなたは戦争の騎士さん。でしたら、負け戦っていうのも知ってこそ戦争の騎士さんですよ〜」


 「ん〜・・・嫌味には聞こえないなぁ?寧ろ、今の言葉は正直に受け止めるべき言葉か。俺は負けを今まで知らなかったからさ、ある意味今はちょっと新鮮な気分なのね」


 あれ、寧ろ慰めちゃいました・・・難しいですねやっぱり。


 「認めるよ、今の一撃もマジで効いた。この技何?たった一撃なのにこの俺がもう一歩たりとも動けないんだ。戦争の騎士完全敗北さ・・・だから、とどめ刺す前に一つだけお願い」


 「なんでしょう?」


 騎士さんは穏やかな表情でわたくしに聞いてきました。


 「ムテキザムライの結末教えて?」


 あ・・・


 「え・・・っとぉ、あの。すみません・・・知りません♪」


 わたくしは誤魔化す為にニッコリ笑って見せたら、騎士さんはこの世の全てに絶望した顔に変わってしまいました。ムテキザムライの結末、わたくしも知らないのです・・・


 「その話も嘘だったのー!?」


 「はい!その事に関してはごめんなさい!!あなたを煽る為に嘘吐きました!!結末でしたら、お祖父様から直接聞いてください!!ですので!!これで!!!」


 わたくしは騎士さんの顔の前に右手をまっすぐ伸ばして構えました。秘奥義、神破零羅で・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ