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命の王が見た景色

 アメリカ合衆国 ニューヨーク州 マンハッタン


 ここは、タイムズスクエア。


 だがここは現実のタイムズスクエアじゃない。ディエゴアンダーソンの精神世界。雨が降り、周囲には全く誰もいない。


 そんな中俺は今、ディエゴと向かい合い、互いの武器を構えていた。


 理由は二つ、一つは俺自身としてこいつと最後の決着を付けたい。そしてもう一つは、命の王として何故この選択を選んだのかを知りたい。


 俺はここまで来てもまだ知らなさ過ぎる。俺の選んだ選択は、果たして本当に意味はあるのか。俺のすべき事はなんなのか・・・命の王の真の務めはみんなを守る。それだけで果たして良いのか・・・


 俺は決めなきゃいけない。何を選ぶのかを、何が正しいのかを・・・


 戦いの先で俺は示す。俺がすべきことを・・・俺が守りたい未来を、みんなに。だから見せてみろディエゴ。お前の意志を、そして全てを受け止め切ってやる。


 俺とディエゴの攻撃は瞬間的にぶつかり合っていた。ぶつかるたびにディエゴの剣から激しい怒りが俺の心にぶつかってくる。


 そして、その怒りは鮮明に俺にディエゴの記憶を見せた。


 リリアとの出会い、永零との出会い、ニヒルアダムスとの出会い。


 そして・・・別れ。最も大切だったリリアの死。


 「ぬぅんっ!!」

 「はぁぁっ!!」


 背負った思い、俺が知りたいのはここからだ。この怒りの原動力は・・・何処から来ているのか。


 「っ!」


 「感じたか?坂神桜蘭君・・・」


 ディエゴは俺と切り結びながら俺に話しかけた。


 「感じた・・・いや、思い出した。俺はあの世界にずっといた・・・」


 俺も切り返しながら答えた。


 思い出したんだ、俺の幼い頃の記憶。俺はニヒルたちに育てられていた。けど、俺たちは引き離された。


 そして長い年月、俺はこの世界と異世界の狭間にディエゴと一緒にいた。時間の概念も生命という境界も曖昧な場所。そこはあらゆる命が通り抜ける道だ。


 そしてその道を通る命は常に叫んでいた。後悔、憎しみ、負の感情がひしめき合って俺はそれがすごく嫌だった。


 けど、ごく稀に無数の負の感情の中に安堵を感じる存在もいた。生き抜いた者の命だ。未来への希望に満ち溢れている綺麗な命。


 俺は気になってその命を追った。けど、その先にあったのは運命と言う絶望だった。運命の到達点、失われた命が行き着く場所はそこだ。


 転生も何も無い、ゴミ溜めのような命の処分場。綺麗な命も醜い命も問答無用にそこへ消えていった。


 「アバドン・・・」


 ディエゴは呟いていた。俺はディエゴに触れて理解した。この命の終着点はもうすぐ飽和する・・・それが意味していたのはこの世界の生命は、転生をする事も、天国にも地獄にも行けないと言う事。


 ただひたすらにあの中へと消えて行く。そして、それが溢れかえる時、この俺たちの生きる世界は終焉を迎えると言うことだ。


 「見えるか桜蘭?これが世界の真実だ。神は最初から人類の運命を決めていた・・・バケツに入れていた水が満たされ溢れそうになる時、その中に溜まった水を捨てるように、神はこの世界と言うバケツに人類やこの世界のあらゆる生命という名の水を入れ続け、そして納得のいく溜まり方をするまで入れては捨ててを繰り返す。それが神にとってのこの世界だ」


 ディエゴは幼い筈の俺にそうやって伝えた。ディエゴの言葉は正直分からなかった。けど、俺がこの目で見た景色はこのディエゴの言葉を訳した。


 「おわらせるには・・・どうしたらいいすか?」


 俺はディエゴに聞いた。


 「水を止める・・・そしてそのバケツごと完全に消し去るんだ・・・大切な存在も、醜い存在も何もかもを無かった世界にする。桜蘭、君ならばどうする?この先の未来、君にはきっと何事にも変え難い大切な存在と巡り会う。だがその存在もまたいずれあの中へ消える・・・」


 「なら、おわらせるしかないじゃないすか・・・たとえ悪いやつっておもわれることになっても、おかんにおとん、そしてディエゴとまたいっしょにいられるために・・・」







 麗沢に零羅、エルメス、ルイ・・・それだけじゃ無い、俺には捨てたく無い大切な存在が多く出来過ぎた。


 だからやるよ・・・この世界の器を、神ごとぶっ壊して何もかもを終わらせる。生きるは存在しない、死した魂だけの世界。そこには神の目指す答えは必要としない。その世界ではそれぞれがそれぞれの思い描く夢を見られる。そしてその夢の中で完全な無を迎える・・・


 この歪な世界は無意味だ・・・三上すまない。お前の目指す世界に俺はいられない。俺は、お前たちの大切なものを終わらせない為に・・・あの悪魔どもにお前たちを渡さない為に・・・



 全てを終わらせる。



 俺は今気が付いた。俺の放ったライトニング・ソードはディエゴを貫いていた。


 「そうか・・・君の選ぶ道は、俺以上の怒り・・・そして、更にそれを上回った、君の優しさか・・・」


 「あぁ・・・」


 「ふっ・・・覚悟は決まったのなら後は、その涙を止めることだ・・・散々敵対してきた俺を殺すだけで、そんなに震えていては、志半ばで力尽きるぞ?」


 震え・・・この震えはいつ以来だ?思い出した。三上を殺す時と同じだ・・・俺はこれから全ての殺しにこれがのしかかる。


 この世界で繋がり続けた、神が創り出した『人』という罪。俺が全てを背負い、そして俺の手で全てを罰する。


 「震えは止まったな・・・さぁ、ん?」


 気配・・・この世界には俺とディエゴしかいないはずなのに・・・


 俺は顔を上げた。そこには女の子が2人立っていた。


 1人は金髪の髪の長い俺に似た子、その子はじっと俺を見ていた。そしてもう1人は銀髪の褐色肌の女の子だ。その子は俺と同じ、何故ここにいるのか分からないといった顔をしている。


 2人とも俺は存在を知らない、いや、感覚で分かる。俺はこの先この子に出会う・・・名は、


 「輝夜ミツキ・・・」


 俺がその名を口にした時、俺に似たもう1人は何処かへ消えていた。




 これは平和を願いし物語。


 そして、この世界で闘う者たちの、最後の物語。


 終局 THE END PUNISHMENT

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