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ひまわりの身代わり

「あなた、だれ?…何…?ネズミが喋ってる…」


  自分の喉から響く低い声が聞こえてひまりは少し驚いた。

くりくりとした瞳でじっとこちらを見つめ、目をぱちくりさせる。ネズミ――いや、その姿をした何かは、「ん?」といった風に小首を傾げ、くすくすと笑う。


『ネズミじゃないよ。僕は…』


 数秒の沈黙。そいつは空で不遜に足を組み、ちんちくりんな手をアゴに当て、こちらを見下すかのように体を反らした。


『…キミたちがいうところの神さま、かな』

「は……?」


 ひまりは呆けた表情をして頭をできるだけ高速回転させる。

 そんなひまりに神さまはひどく呆れた顔をしてこちらに話しかける。


『…ねぇ、()()()ちゃん』

「な…なに?」


 なんでもないように話しかけてくる。

 ひまりは少し浮足立った。


『怖がらないでよ、もう〜』

「…え」

『まぁ、とりあえず。それ、やったの僕』

「…ああ、うん」


 それはそうだと思う。目の前で自称神さまが出たのだ。

 けれど、なぜ同じクラスのこの子なのだろう。


「なんでつばきくんなの?」

『そりゃ、別の人生って願ってたから。』

「…でも…ええ…まぁ…」

『…まさか、戻りたいの?』


 ひまりはどっちつかずの顔をする。

 元々ひまりはあまり自分の人生が好きではないのだ。

 それに、死に際にあんなことを願った自分もいる。自業自得と言われてもそれはそうかもと納得してしまう。


「…つばきくんは何を願ったの?」

『守秘義務』

「なにそれ…雇用契約…?」

『あ、近いカモ〜』


 ひまりはあまりに緊張感のない神さまに少し驚く。


『とりあえず。僕たちは奇跡を起こし、願いを叶える存在だよ。君の願いを叶えた結果がコレ』

「…………ふうん」


 理解に時間がかかったが、なんとか飲み込んだ。


「あ、じゃあ…何したの?これ」

『みたまんま』

「は?」


 しまった。ついつい適当に答えてくれるものだから素を出してしまった。

 ひまりは表情の変わらない神さまを気味悪く思いながら煽ててなんとかしようと話しかけようとする。


「ねぇ…神さ――」


 話しかけている途中にコンコン、とノックがあった。


「つばきくん?起きたの?」

「っ!うん、起きたよ…」


 母親と思わしき高く、澄んだ声がドアの向こうから聞こえた。

 ひまりの胸は急によく分からない人が来たものだから心臓がどきどきして少し呼吸が浅くなる。


「…ええと、頭はもう痛くないの?」

「…うん、痛くないよ。か、母さん…」

「母さん…?」


 動揺しているのか、女性の声色が変わる。

 何かよくない琴線に触れたのだろうか。


「…どうかした?変なこと言ったかな」


 ひまりがそう言うと、女性は間髪を入れずに明るく「ううん。何でもないのよ。元気なら、私、お買い物行ってくるわね。2人をよろしく」と言った。

 トントントン、と足音が遠ざかっていく。


 2人、とは誰のことだろう。

 それに、母さんと呼んだことか痛くないと言ったことかわからないが、どうして動揺していたのだろう。


「…はぁ」


 前途多難。

 そんな文字が頭に浮かぶ。こんなことになるなら潔く死んだほうがマシだったのだろうか。

 そんな考えが脳裏に浮かび、すぐさま否定する。

 生きていたら何でもできる。

 死んだら何も残らない。

 情報収集がてら散策でもしようと結論づける。


「お、おお…」


 立つとつばきの体の大きさがよくわかる。ひまりは162センチなのだが、つばきは170センチほど。

 視線の高さに慣れず、少しふらつく。

 一歩足を踏み出すと長さに戸惑う。いつもの速さで進むと体感1,5倍程度を進んでいる気分になる。

 たかが8センチされど8センチだ。

 神さまはふよふよ浮きながらついてくる。


 ドアから出て、階段を降りる。


「…わっ」


 自重が増えたため、間接にかかる体重が重くなったことに気付かずコケそうになるが、手すりで押しとどまる。


「ふぅ」


 危ない、先ほどあんなことを考えてはいたが、死ぬという体験は2度もしたいものじゃない。

 そういえば、どこかで死ぬときはアドレナリンで気持ちいいって聞いたことがあったが、アレは衰弱してたときだけで、ひまりのような状況だったら痛くて苦しんで死ぬらしい。


『つばきの体なんだから、気をつけないとつばきが死んじゃうよ?』

「…わかってるよ」


 廊下を突っ切りリビングにつく。


「あ、兄ちゃん、おはよう」

「あ、うん!おはよう!」


 低く明るい声が出る。つい前の自分のときと同じように話してしまった。

 少年の鋭い三白眼が、怪訝そうに細められる。

 夏用の半袖短パン。スポーティーな髪型。少年は片手に溶けかけたアイスを持ち、びっしょりと汗をかいていた。少年はそのままひまりの小脇を過ぎる。この体――つばきの弟だろうか。

 それと、どうやら神さまはひまりのほかは見えない仕様になっているようだ。


 リビングを見渡そうとしたところ、背後から元気の良さそうな声が聞こえてきた。


「わぁ!兄ちゃんおはよー!」

「え」


 そこには、さっき見かけた少年とよく似た姿の少年が立っていた。

ミニミニ設定コーナー

ひまりは根っからのシティーガールです

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