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峠の旗  作者: 三峰三郎
10/11

峠の旗 10

 岩尾城の大手門の前に鐘の旗が立った。

 信蕃の手には、陽光に反射した金紙采配が握られている。

 采配を頭上から振り下ろした。

 それを合図に、一斉に依田勢が大手門に取りついた。その背後、一町ほどのところに佐久諸将と徳川の援軍が陣取っている。


 頭上から弾丸が雨のように降り注ぐ。

 銃声と喚声があたりに木霊す。

 味方によって、大手門がこじ開けられた。

 信蕃は腰に采配を納めると、すらりと抜刀した。


「我に続け」


 叫ぶと、真っ先に大手門をくぐる。

 逃げまどう敵。

 その背を一刀のもとに切り下げる。

 甲高い悲鳴。

 信蕃の後ろから続々と依田勢が従い、敵をなぎ倒していく。


 信蕃は、三の丸の土塁に取りついた。

 それまで静まっていた銃声が、再び轟く。

 先ほどまでとは比較にならぬほどの弾丸の雨。

 信蕃は土塁を見上げた。

 筒先が己に狙いを定めている。

 口辺が僅かに緩んだ。

 轟音が頭上から起こった瞬間、腹部に衝撃が走った。

 そして真っ逆さまに土塁から転がり落ちた信蕃の意識は、二度と戻らなかった。


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