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お払い箱の聖女は占いで食べていく 〜冷徹な騎士団長が、なぜか毎日来る〜  作者: 丸ノ内きみこ


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21.

ミコトに与えられた任務は、騎士団本部の「大広間の浄化」と、最近士気が下がっているという新人騎士たちの「メンタル診断」だった。


鑑定室の隅にある特製デスクから、レオンが音もなく立ち上がる。


「行くぞ、ミコト。顧問としての第一歩、私が万全の体制で警護する」

「レオンさん、同じ建物内へ移動するだけなのに、なんでそんなに殺気立ってるのよ」


レオンはミコトの紺色のマントを丁寧に整え、まるで戦場へ赴くような厳粛な面持ちで彼女を先導した。

騎士団本部の訓練場に隣接する広間。


そこには、先日までの過酷な遠征で疲弊し、心身ともに「澱み」が溜まった新人騎士たちが十数名、整列して待っていた。


彼らの頭上には、どんよりとした灰色のモヤが漂っている。


「……皆さん、初めまして。特別顧問のミコトです。今日は皆さんの肩に溜まった『余計なもの』を落としに来ました」


ミコトが挨拶をすると、新人たちは緊張した面持ちで敬礼する。しかし、彼らの視線はミコトよりも、その後ろで腕を組み、仁王立ちで新人たちを一人ずつ「威圧」しているレオンに釘付けだった。


「……ミコト、あそこの男のオーラが揺らいだ。不埒な考えを持っているのではないか? 私が一度、物理的に精神を叩き直すべきか」


「レオンさん、静かにして。あれはただの緊張よ。あなたがそこにいるだけで、彼らのストレス値が跳ね上がってるんだから」


ミコトは溜息をつき、レオンを少し後ろへ下がらせると、新人たちの一人の前に立った。


「あなた、三日前の夜、演習場の隅で変な冷気を感じなかった? その時から、ずっと奥歯が浮くような感じがしているはずよ」


「えっ、な、なぜそれを……! 確かに、あの夜から食欲がなくて……」


「ただの疲れじゃないわね。古い戦場の跡地に当てられただけ。……ちょっと、じっとしてて」


ミコトが懐から「白銀の岩塩」を一掴み取り出し、新人騎士の頭上でパッと散らした。


「お清め、一丁!」


キィィィィン、という澄んだ音が響くと同時に、新人騎士の頭上の灰色のモヤが霧散し、若草色の爽やかなオーラが戻ってくる。


「……軽い! ずっと重かった頭が、嘘みたいにスッキリしました!」


その光景を見た他の新人たちが、「俺も!」「私もお願いします!」と色めき立った。


しかし、彼らがミコトに一歩近づくたびに、背後のレオンから放たれる「氷点下のオーラ」が広間を凍てつかせる。


「……私のミコトに、群がるな。浄化を望むなら、三メートル以上の距離を保ち、順に跪け」


「レオンさん! あなた、邪魔しに来たの? 顧問の仕事は『騎士団のケア』なの。そんなに怖い顔をしてたら、みんな健康になる前に心臓が止まっちゃうわよ!」


「だが……。この男などは、必要以上にあなたの手元を凝視している。不敬だ」


「それは私が塩を投げてるからでしょうが!」


ミコトがレオンを叱り飛ばすたびに、新人たちは「団長があんなに言いなりに……」「あの占い師、やはり最強か……」と、別の意味で畏怖の念を深めていく。


結局、ミコトが一人ひとりの淀みを払っていく間、レオンは終始ミコトの影のように寄り添い、新人が彼女の手を握ろうものなら剣の柄に手をかけるという、過保護の極みを見せつけた。


初仕事を終え、二人が占いの館へと戻る頃。


新人たちの間では


「特別顧問のミコト様に塩を投げてもらうと、体は軽くなるが、団長の視線で魂が削られる」


という、何とも言えない噂が広まることになった。


「……レオンさん。これからは、あなたはお留守番ね」


「……却下だ。あなたが他人の不浄を払う瞬間、誰かが守らねばならん。それが私の役目だ」


レオンは全く反省していない様子で、ミコトの紺色のマントを再び甲斐甲斐しく整え直すのだった。

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