20.
地下墓地の一件が王宮で報告された翌日、占いの館には再び、あの「黄金色のオーラ」を纏った皇帝の使いが現れた。
届けられたのは、帝国紋章の封蝋がなされた一通の親書。そこには、ミコトを「帝国騎士団・専任特別顧問」に任命するという、破格の要請が記されていた。
「……専任顧問? 私、ただの占い師なんですけど」
ミコトが呆然と手紙を眺めていると、鑑定室の隅から、いつになく複雑なオーラを放つレオンが立ち上がった。
「ミコト。陛下は、あなたの『共鳴』の力を正式に軍の防衛網に組み込みたいと考えておられる。あの事件での浄化能力、そして私と感覚を共有した即応性は、もはや一占い師の範疇を超えていると判断されたのだ」
「でも、そうなったら私、ずっとお城に閉じ込められるんじゃ……」
「……、……っ。それは私が許さん。……陛下には既に釘を刺してある。あなたの拠点はあくまでこの店であり、身分の保証と予算の提供、そして『レオンの精神安定』が主な任務である、とな」
レオンは少し視線を逸らしながらも、強引に「ミコトが店を離れなくていい理由」を皇帝に認めさせたことを白状した。
そこへ、再び慌ただしく入ってきたのはカイエンだ。
「ミコトさん! おめでとうございます! これで正式に、ミコトさんは俺たちの……いえ、騎士団全体の『精神的支柱』です! ほら、これが顧問専用の制服と、特別予算の目録ですよ!」
カイエンが差し出したのは、ミコトの瞳の色に合わせた深い紺色のマント。そして、目録に記された桁違いの金貨の枚数を見て、ミコトは思わずのけ反った。
「ちょっと、これだけの予算、何に使えっていうのよ。最高級の塩を山ほど買ってもお釣りが来るわ」
「ミコト。それは、この店を実質的な『騎士団別邸』として整備し、あなたを公的に守護するための費用でもある。……これで、誰であっても神殿の残党や隣国のスパイがあなたに触れることは、帝国への反逆と同義になる」
レオンはミコトの肩に、その新しいマントを優しくかけた。
彼の頭上のオーラは、ミコトが公に「自分の隣にいるべき存在」として認められた喜びで、これまでにないほど力強く、誇らしげなピンク色に輝いている。
「……全く。皇帝陛下も、レオンさんも。勝手に話を進めちゃうんだから」
ミコトはため息をつきながらも、贈られたマントの柔らかな肌触りに、少しだけ口角を上げた。
「いいわ。お受けします。……ただし、レオンさん。顧問になった以上、あなたの書類仕事の手抜きには、今まで以上に厳しくいきますからね。覚悟しなさいな」
「……ああ。あなたの監視があるのなら、これ以上の喜びはない」
レオンは満足げに頷き、いつもの椅子へ戻った。
こうして、路地裏の小さな占いの館は、帝国で最も「不可侵」で、かつ最も「愛が重い」騎士団の重要拠点へと生まれ変わった。




