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人形店 ピノッキオドリーム  作者: 佐藤 敏夫
第一章 ピノッキオドリーム
20/22

そうして彼女は完成させた 4

 どれくらいそうしていただろう。キリエの頭を撫でてあげながら落ち着くのを待っていると、ゆっくりと彼女は私達の肩口から顔を離した。

「ごめんね、二人とも。嬉しくて…… つい、取り乱してしまったわ……」

「ううん、そんなに喜んでくれたのなら私達も嬉しいから」

 キリエはそう言って謝ったけれど、私達にとっては嬉しい反応以外の何物でもなかった。目尻にはまだ涙の跡が残っていたので、そっと指先で涙を拭ってあげると、彼女は「ありがとう」と言って小さく笑った。

 彼女の泣き顔の微笑には、ついつい私達も涙腺が緩んでしまう。

 悲しくないのに涙が出るというのは、生まれて初めてのことで、なんとも不思議な気分だったけれど、それはそれで悪いものではなかった。こんな素敵なことを教えてくれたキリエに、私の方こそお礼を言いたいくらいだ。

 なんとなく、キリエのことがハグしたくなってもう一度ギュッと彼女を両腕で抱きしめると、彼女は驚いたような表情を作りながらもソレを受け入れてくれた。

「そうだ。私も二人に贈り物があるの」

 キリエから離れると、彼女は何かを思い出したように告げた。なんだろうと思いながら見ていると、キリエはゴソゴソと机を漁って一冊のノートを取り出して私に手渡してくれた。

 私はこのノートには見覚えがあった。

 キリエがいつぞや一生懸命に何かを書きつけていたものだ。たしか「今はまだ何を書いているか教えてあげられない」と言っていたのではなかっただろうか。

「うん、そうね、でも、秘密にしているのはこれでおしまい。今はメユに読んでもらいたいの」

 そう言って微笑みながらノートを捲るように促された。私はニトと顔を見合わせたあと、二人でページを捲る。

 そこには、丸みを帯びた小さな可愛らしい文字で小説が書かれていた。命を吹き込まれた人形が病弱な少女を喜ばせるために、奔走するという物語だ。

 恐らくは実体験を元にした小説なのだろう、読んでいる私もついつい頬が緩んでしまう。

 拙いながらも一生懸命に書かれた物語は、その技術以上に私達を惹きつける何かがあって、私達は夢中になって物語を読んだ。

「どう、かしら……? ノーラさんにね、書き方を教えてもらいながら…… 書いて、みたのだけれど……」

 私達があまりにも夢中になって読んでいたせいか、キリエは少しだけ落ち着かないとでも言うように、手遊びをしながら感想を求めてきた。

「すごく良い、私達のために書いてくれたんでしょう?」

 彼女の手を握って応えると、キリエは安堵したかのように顔を綻ばせながら頷いた。


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