そうして彼女は完成させた 3
クリエから受け取った人形と私達で作った人形。その二つの人形を持って私達はキリエの居る病院へと向かう。
「あら、メユちゃんにニト君。こんにちは。今日もキリエちゃんのお見舞いかしら?」
「うん! 今日はね、とっておきの贈り物もあるんだよ?」
「贈り物って、その箱に入っているものかしら?」
「はい! 僕たちが作った人形と、クリエさんが姉ちゃんのために作ってくれた人形です」
「へぇ、人形かぁ。きっと喜ぶわよ ……はい、受付おしまい。気を付けて行ってらっしゃい」
受付に行くと、すっかり顔馴染みになった看護師さんが私達の対応をしてくれた。面会者用の受付バッチを受け取り、すぐさまキリエの待つ病室へと向かった。
怪談を上って、二階にあるキリエの病室に行くと、彼女は窓から私達が来る姿を見つけていたらしく待っていてくれた。
「こんにちは、メユ、ニト」
「こんにちは、キリエ。調子はどう? 気分が悪かったりとかしなかった?」
「えぇ、お陰様で最近は調子がとっても良いの。ふふ、これも二人がお見舞いに来てくれるからかしらね?」
「それは買い被りすぎだよ、姉ちゃん。病気がちょっとずつ良くなっているんだって」
「そうかしら? それなら猶更二人にお礼を言わないとね」
そう言って彼女は、クスクスと楽しそうに笑った。釣られて私達も笑顔になってしまう。彼女の笑顔には見ているこちらまで幸せにしてくれる不思議な魅力があるのだ。
「そうだ、メユ。忘れないうちに姉ちゃんにアレを渡さないと」
「そうだね、ニト。キリエには驚いて貰いたいしね」
うんと頷いて私達は、早速持ってきた箱をキリエに手渡す。二つの箱を手渡されたキリエは不思議そうな表情でそれぞれの箱を見つめていた。
「……なにかしら? メユ、これは私が開けてみて良いの?」
「うん、開けてみてよ。きっと喜んでくれると思うから」
「分かったわ、それじゃあ…… 遠慮なく……」
丁寧な手つきでキリエは紐をほどき、箱を開けてゆく。中に敷き詰められた緩衝材を取り除いて、中身を見た時、彼女は心底嬉しそうな表情を浮かべてくれた。
中に入れておいたのは日の本の国の伝統的な衣装で身を包んだ黒髪の少女の人形。
即ち、キリエのために作った、世界で一つだけのキリエの人形だ。
「まぁ、素敵…… 本当に、本当に頂いてしまって構わないのかしら?」
「もちろんだよ。私達はそのために頑張って作ったんだからね」
ね、と言って視線をニトに向けると。彼は「そうとも」と力強く頷いて応えてくれた。
「ありがとう…… 二人とも、本当に……」
クリエの言っていた事は本当だった。
私達の人形は拙いかもしれなかったけれど、それでもキリエはこれ以上ないほどに喜んでくれた。彼女が言葉を詰まらせながら告げてくれた感謝の言葉は。それだけで今までの私達の苦労が報われていくようだったし、うれし涙を堪える彼女の姿は私達の胸を熱くさせた。
「姉ちゃん…… まだ泣くのにはちょっと早いよ。クリエさんからの箱の方も開けてみて」
「う…… うん……」
そっと簡易机の上に人形と箱を避け、キリエは鼻をすすりあげながらもう一つの箱の方に手を掛ける。彼女が震える手で箱を開けると、今度こそ彼女は嬉しくてこらえきれずに泣き出してしまった。
中に入っていたのは、キリエの人形とおそろいの浴衣を着た私の人形。
二人を並べると、丁度仲良くお祭りを楽しんでいるように見える構図だ。
キリエは二つの人形をそっと簡易机に並べると、ベッドから身を乗り出すようにして私達のことを力一杯抱きしめてくれた。




