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人形店 ピノッキオドリーム  作者: 佐藤 敏夫
第一章 ピノッキオドリーム
18/22

そうして彼女は完成させた 2

 クリエは簡単に複製すると言ったけれど、その複製作業というのは、忍耐の必要な作業だ。

 複製をするためにはまずシリコンで型を作らなくてはならない。その型を作るための手順はこうだ。

 まず油粘土を平らに均して、そこに作った原型を半分だけ埋没させシリコン樹脂を流し込んで固まるのを待つ。

 次に固まったシリコンをひっくり返して油粘土を綺麗に取り除き、理型剤を塗りなおしてもう一度シリコン樹脂を流し込んで再び固まるのを待つ。

 最後にシリコン型を剥がして、原型を取り外したら、レジンが流れる通り道や空気穴、それから注ぎ口を彫り込んでようやくシリコン型の完成だ。


「丸一日作業するのは、流石に疲れたぁー……」

「本当、クタクタだよぉー……」

「よく頑張ったね、二人とも。本当にお疲れ様」

 気が付けば、もう外は日が沈みつつあった。午前中から丸一日かけて作業していたので、すっかりへとへとだ。私が工房の椅子に座り込んで、作業台に突っ伏すと、ニトも同じようにぐったりとしていた。

 クリエも労いの言葉を掛けてくれたけれど、そんな言葉に応える余裕もなかったくらいだ。

「僕は店の方を閉めてきてしまうから。一休みをしたら、二人は工房の方を片付けてくれるかい?」

「はぁい」


…………

……


 っと、まぁ、私達は当初の予定に無かった作業をしたりしたけれども着々と作業を続けて、とうとうこの日がやってきた。

「さぁ、最後に目を入れて御覧。それで人形の表情がグンと良くなるから」

 クリエに促されて、はやる心を押さえつつ、震える筆先で人形の瞳に色を載せる。そうして人形に命が吹き込まれると、人形の表情が明るくなったようにさえ思えた。

「できた!」

「完成だ!」

「おめでとう、二人とも。よくやったね」

 ようやくキリエが日の本の国の伝統的な衣装である浴衣を着た人形を完成させることができた。

 手を叩いて喜んでいると、クリエは私達の頭を撫でてくれた。

「うん。ありがとう。クリエ」

「クリエさんのお陰で、人形を作ることができました。ありがとうございました」

 おめでとう、とクリエは改めて口にする。

 嬉しくなって、私がついついクリエに抱き着いてしまうと、ニトも私の真似をして少しだけ恥ずかしそうにしながら控えめに抱き着いた。

「ううん、僕は助言をしただけだよ。これは二人が頑張ったから完成したんだ」

 困ったのはクリエの方だ。苦笑いを浮かべながらそんな謙遜をする。

 それでも良かった。クリエがいなかったら私もここまで頑張れなかったと思うし、こんなに素敵な作品を作れるとは思わない。

「そうかい…… それなら、僕も助言した甲斐があるってもんだ」

「うん、そうだよ。あんまり謙遜しすぎるのはよくないよ、クリエ」

「あはは…… 今度から気を付けるよ、メユ」

 ポンっとクリエのお腹に拳をくっつけつつクリエから離れると、彼もまた笑みを収めた。

「それで、君達はこれからどうする? すぐにでもキリエちゃんの所に人形を届けに行くのかい?」

「はい。姉ちゃんもずっと楽しみに待っていると思うので、このまま病院に持っていきたいと思います」

「そっか、それなら…… 僕の作品も一緒に持って行ってもらっても良いかな? 僕なんかが持っていくよりも、君達が持って行ってくれた方が喜ぶと思うから」

「お安い御用だよ、クリエ」


……


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