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人形店 ピノッキオドリーム  作者: 佐藤 敏夫
第一章 ピノッキオドリーム
16/22

そうして彼女は粘土を捏ねる 5

 私が選んだのはイチゴのジャムがたっぷり入ったジャムパンで、ニトが選んだのは残ったカリカリもふもふのメロンパン。いつもはクリエと二人でご飯を食べているけれど、三人で食べる間食はいつもと違った味わいで美味しかった。

「あぁ、美味しかった。ごちそうさま」

「病院食はいつも味気ないから、焼き立てのパンは美味しかったわ。ありがとうね」

「どういたしまして。また買ってくるから、楽しみにしていてね?」

 パンを一口ずつ交換しながら食べると、あっという間になくなってしまった。少し物足りない気もしたけれど、間食というのは、少し物足りないくらいで丁度良いのだ。

「それで…… あのお人形はどこまで進んだのかしら?」

 食後のお茶を淹れていると、キリエは人形制作の進捗をせがんだ。

 聞きたい? と視線で問うと、キリエは勿論と頷いた。

「ふふ、どうしようかなぁー……」

「まぁ、どうしてそんな意地悪なことを言うの?」

 先ほどはキリエに何を書いているのか教えてもらえなかったので、ついつい私もちょっとだけ悪戯心が芽生えて意地悪を言ってしまう。でも、キュッと手を握りながら「後生だから教えてくださいまし」と真っすぐな瞳でお願いしてくるキリエには勝てそうもない。

 私は渋々懐に手を入れて一枚の写真を取り出し、その写真をキリエに手渡した。

「はい、今の進捗だよ」

 不思議そうな表情で写真を受け取った彼女は、それを見てすぐに顔を綻ばせた。

 そこに映っているのは、大まかな形を作り終え、残るは表面の処理を待つばかりのキリエの為に作った人形だ。

「あと少しで完成なのね?」

 本当に嬉しそうな表情でキリエは訊いてくるので、私も釣られて嬉しくなってしまう。

 あとは彩色するだけだよ、と告げると、彼女は腕を回してギュッと抱きしめてくれた。細くて華奢な腕だけれど、柔らかくて温かい腕だ。クリエとはちょっと違うけれど、私はこの腕が大好きだ。

「本当に…… ありがとうね、メユ」

 彼女は私の首に顔を埋めながら、そう言った。

「ふふ、どういたしまして。でも…… これは私一人だけで作った作品じゃないんだよ? ニトも手伝ってくれたし、クリエにも沢山助言をしてもらったの。だから…… 私だけじゃなくて、皆にお礼を言って?」

「うふふ、分かったわ。 ……ニトも、ありがとうね?」

「うん。どういたしまして。でも、大部分はやっぱりメユのお陰だよ」

「もう、二人とも謙遜ばっかりして…… 本当にありがとう、二人とも大好きよ」

 キリエはお礼を言うと、大きく手を広げて私達二人を抱きしめた。

 ニトは最初こそ恥ずかしくて抵抗してみせたけれども、そう簡単にキリエが放してくれそうにないので観念したらしく、大人しく抱きしめられていた。

「あら、もう…… 時間なのね」

 楽しい時間は早く過ぎる。気が付けば、面会時間ももう終わりだ。

 キリエは残念そうに言って、最後に少しだけギュッと抱きしめる腕に力を込めてから私達を解放した。

「また来るからさ…… 姉ちゃんも、それまでは元気でいてよ」

「分かったわ。二人とも、気を付けて帰ってね?」

「うん。キリエもお大事に」

 私達はそれだけ言い残して、病室を後にした。


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