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 メイプルグランマがテーブルのおさらをあつめていると、すこしつまづいてしまいました。

 ころびそうになったのをタギーがとっさにかかえます。

「おいおい、ばあさん。なにもないところでころぶなよ」


「まあまあ、ありがとうございます」


「たまたまだ。それよりばあさん、ねどこだ」


 メイプルグランマは三人を納屋に連れていきました。

「ごめんなさいね、うちにおきゃくさんようのベッドがなくって。代わりにワラはたくさんあるわ」


「うん、これならぐっすりねむれる」

「ひさしぶりにのじゅくしなくてすむぜ」

「ばあさん、メイプルシロップだが」


「それだったらあしたあさごはんをたべたらじゅえきをとりにいくわ。三人ともおやすみなさい」

 さんぞくはおやすみも言わずさっさと眠ってしまいました。




 あくる日、メイプルグランマは山に登るしたくをします。

 山は一晩中ふった雪で真っ白くそまっていました。

 メイプルグランマはつえをついて納屋に向かいますが、足が雪にずぶずぶとしずみます。


「ばあさん、そんなじゃ一日かけても山につかないぜ、ちょっとまってろ」

 見かねたタギーが納屋のワラを大金づちの柄でとんとんとたたきました。

 そのあと編み込んでワラのブーツをこしらえて、メイプルグランマにわたします。


「はい、ありがとうございます」


 それから納屋からバケツや木づちやのみ、きりをかごにつめて背負いました。

 そしてふうふう言いながら山にむかいます。


「ばあさん、そんなじゃ山にいくだけでへとへとだろ、ちょっとまってろ」

 見かねたラウディーは納屋の材木をくみたててハンマーでくぎを打ちます。

 あっというまにそりを作るとメイプルグランマにわたします。


「はい、ありがとうございます」


 メイプルグランマはかごをそりにのせてひもで引っぱりながら山に向かいます。 さんぞくたちもあとに続きました。

 メイプルグランマは山に手を合わせてから樹液を集めます。

 幹にバケツをくくりつけるとまた雪がふってきました。メイプルグランマは体をふるわせながら樹液がたまるのを待ちます。


「ばあさん、じゅえきがたまるまえにこごえちまうぜ、ちょっとまってろ」

 ブランビイは大きな手ぶくろで雪をかためてつみあげます。

 あっというまに雪のいえ、イグルーができました。


「はい、ありがとうございます」


 メイプルグランマはイグルーの中で休みます。

 やがて樹液がたまるとメイプルグランマはバケツをそりにつんで山を下ります。


「これから山を下りるのか?」

「いえでにつめるのか?」

「もうまてねえ」


「「「ばあさん、ちょっとまってろ」」」


 三人のブタのさんぞくは山を下りてワラとざいもくとレンガを山に運びます。


 タギーは木を切りたおして、ワラを編みます。

 ラウディーは木材をくみたてハンマーでくぎを打ちます。

 ブランビイはレンガをつんでモルタルでかためます。


 夕方には立派な山小屋としっかりしたかまどができあがりました。

 小屋のすきまにはワラがつめられ、中にはワラであまれたしきものやコートが入っています。


「たきぎはたくさんつんである」

「これでここでじゅえきをにつめられる」

「こんどはここになべをもってこい」


 メイプルグランマは目をほそくして三人にお礼を言います。


「はい、ありがとうございます」


 メイプルグランマは山を下りてなべとびんとたべものを持ってきました。




   ***




 メイプルグランマは三人にパンとかえでスコーン、それにできたてのメイプルシロップの入ったびんをわたしました。


「おっ、これだこれだ」

「これでパンがうまくくえる」 

「スコーンもだ」


 三人はシロップのびんを高く上げてうれしそうにします。

 そこへたれ耳ウサギのロップがやってきました。

「ここにいたの? メイプルグランマ」


「ああロップ、ここまで来てくれたの? ありがとうございます」


「はいこれ、たのまれてたつくろいもの。

 そうだ、メイプルグランマ、ここらで木こりのオオカミさんがさんぞくに会ったんだって。

 パンとぶどうしゅをとられちゃったっていってたわ」


「まあ、そうなの?」


「うん、だからじけいだんが山にのぼってさんぞくがりをするって。

 メイプルグランマも気をつけないと」


「そうなの、ぶっそうねえ。あなたがたも――――あら」

 気がつくとさんぞくたちはどこかへいなくなっていました。

「あら、こんなりっぱなこやに、まきおきばにかまどまで。だれがつくってくれたの?」


 メイプルグランマは三人の足あとを見ながら目をほそめて言いました。

「そうねえ、とってもやさしいひとたち、かしらね」




 さんぞくたちは後ろをふりむきながら足早に山をはなれます。


「じけいだんだと?」

「さっきのはなし、きけてよかったな」

「できるかぎりはなれよう」


 さんぞくたちは走りながらメイプルシロップのびんをながめます。


「うまそうだな」

「だいじにくおう」

「ふゆにしかつくれないらしいから、ほとぼりがさめたらまたつぎのふゆにこようぜ」


 さんぞくたちはやぶをかきわけ谷をぬけるとどこかに行ってしまいました。




   ***




 やがて冬もおわりに近づき、山にはあたたかい風がふきました。

 木の根元から雪がとけ、緑がかおを出します。雲の間からは光が射してきます。

 サトウカエデの木はえだの芽がふくらんでいました。



 メイプルグランマはサトウカエデの幹をやさしくなでると、一言こうつぶやきました。



「はい、ありがとうございます」




 カエデの花言葉

 『美しい変化』『蓄え』『遠慮』

 そして、『大切な思い出』

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