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2. おばあちゃんの家では・・・

赤ずきんのおばあさんの家。


その中では――。


「おい、ばあさん。大人しくしてろ」


「誰が大人しくするかい!」


「暴れるな!」


数人の男たちがいました。


彼らは、トクリュウ。

匿名・流動型犯罪グループ、略してトクリュウとは、明確な上下関係や組織を持たず、

SNSや匿名性の高い通信アプリを通じて離合集散を繰り返す新しい犯罪集団の通称だった。


地域の人間を装って、おばあさんの家を占拠していたのです。


「あんたたちは、ナニモノだ?」


「俺たちは地域ボランティアだ」


「そうそう。高齢者の見守り活動で~す」


「見守りっていうか監禁じゃないか!」


「細かいことは気にするな」


「気にするわ!」


そのころ。


玄関。


ピンポーン。


「おばあちゃーん?」


赤ずきんが到着しました。


「お菓子持ってきたよー」


男たちは顔を見合わせました。


「来たぞ」


「例の孫娘か」


「よし。こいつも――」


ガチャ。


扉が開く。


「こんにちはー」


「こんにちは。お嬢ちゃん」


男の一人が笑顔を作りました。


「我々は地域ボランティアです」


「へー」


「おばあさまを見守っています」


「へー」


「君も中に入りなさい」


「いや帰るけど?」


「……え?」


赤ずきんはスマホを取り出しました。


「いや、普通に怪しいじゃん」


「怪しくない」


「だって、おばあちゃん家に知らない男が五人いて『地域ボランティアです』って何?」


「……」


「名札もないし」


「……」


「自治会の腕章もないし」


「……」


「しかもおばあちゃんの声、奥から『助けてー!』って聞こえてるんだけど」


「…………」


「はい、通報しまーす」


スマホを操作。


しかし。


「圏外?」


男がニヤリと笑いました。


「ここは森の中だからな」


「……は?」


赤ずきんの顔から笑顔が消えました。


「お嬢ちゃん。少し中で話そうか」


「いやです」


「大人しくしろ」


「いやです」


「来い!」


男が腕を掴もうとした、その瞬間。


――ドゴォォォン!!


窓ガラスが吹き飛びました。


「うわああああああ!」


男たちが叫びます。


煙の中から現れたのは――


ウルフ。


「赤ずきん!」


「……え?」


ウルフは華麗に着地しました。


「危なかったな!」


赤ずきんは目を丸くします。


「……誰?」


「俺だ」


「知らん」


「いや、ほら。森で何度か――」


「知らん」


「SNSで――」


「……え?」


ウルフの顔が引きつりました。


「いや、その……」


赤ずきんがスマホを取り出します。


「待って」


SNSの通知。


「……あれ?」


大量の通知。


毎回同じアカウントが「いいね」。


毎回同じアカウントが投稿直後に反応。


さらにDM。


「……ちょっと待って」


赤ずきんの顔が青ざめる。


「このアカウント……」


ウルフが汗を流します。


「……」


「私が昨日食べたケーキの写真にも反応してる」


「……」


「一昨日の寝落ち配信にもコメントしてる」


「……」


「去年の半年以上前の投稿にも全部いいねしてる」


「……」


赤ずきんがゆっくり顔を上げました。


「お前……」


「……」


「ストーカーじゃん」


「違う!」


「何が違うの?」


「見守っていただけだ!」


「一緒だよ!」


しかし。


そんな会話をしている間にも、トクリュウが襲いかかってきます。


「こいつらを捕まえろ!」


「赤ずきん、下がれ!」


ウルフが前に出ます。


ガキィン!


ウルフの爪が男の腕を弾き飛ばします。


「うおおおお!」


「ぐわっ!」


一人、また一人。


男たちは次々と倒れていきます。


そして最後の一人が逃げようとした瞬間。


「逃がすわけないでしょ」


赤ずきんが立ちはだかりました。


「……お前も戦うのか?」


「当然でしょ」


赤ずきんは笑いました。


「私のおばあちゃん監禁して、私まで連れていこうとしたんだから」


「お嬢ちゃん。痛い目を――」


その瞬間。


赤ずきんの目が据わりました。


「……ねえ」


「?」


「さっきから聞いてたんだけどさ」


「……」


「私のこと連れていくって、何?」


男が黙る。


「いや、あの――」


「何?」


「……」


「私が嫌だって言ってるのに?」


「……」


「嫌だって言ってる女を無理やり連れていこうとして?」


「……」


赤ずきんは笑顔になりました。


ただし。


目は笑っていません。


「ねえ、それって普通に最低じゃない?」


男が一歩下がる。


「いや、仕事だから――」


「仕事だから?」


赤ずきんの声が低くなりました。


「仕事なら何してもいいの?」


「……」


「じゃあ私も仕事だから、お前らボコっていい?」


「いや、それは――」


「なんで?」


「……」


「なんで私がやったらダメなの?」


「……」


「私には我慢しろって言うのに、自分たちは好き放題やるんだ?」


男は完全にたじろいでいました。


そして。


赤ずきんのメンヘラ・ヒス構文が炸裂しました。


「ていうかさぁ……」


「……」


「私、おばあちゃんにお菓子届けに来ただけなんだけど?」


「……」


「なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないの?」


「……」


「ねえ?」


「……」


「私、何かした?」


「いや……」


「してないよね?」


「……」


「じゃあなんで?」


「……」


「なんで私ばっかり嫌な思いしなきゃいけないの?」


「……」


「ねえ、答えてよ」


「……」


「答えられないんだ?」


赤ずきんはさらに一歩近づきます。


「そうやって都合が悪くなったら黙るんだ?」


「……」


「へえ」


「……」


「人の家を占拠して、おばあちゃんを監禁して、私まで連れていこうとしておいて」


赤ずきんは満面の笑みを浮かべました。


「被害者みたいな顔するんだ?」


「いや、俺たちは――」


「もういい」


「……!」


「お前らの事情とか知らない」


赤ずきんは拳を握ります。


「私はね」


「……」


「私を大事にしてくれる人には、ちゃんと大事にするの」


「……」


「でも、私を雑に扱う人間には――」


ウルフが横から口を挟みました。


「容赦ないんだな」


「当たり前でしょ」


赤ずきんはウルフを見る。


「あと、お前も後で話あるから」


「……はい」


「めちゃくちゃあるから」


「……はい」


「SNS全部見てる件について」


「……はい」


「覚悟しといて」


「……はい」


赤ずきんは再び、トクリュウへ向き直りました。


「じゃあ――」


ウルフも並びます。


「行くぞ」


「うん」


「いっせーの!」


二人同時に――


「「成敗!!」」


――ドゴォォォォォン!!


森に轟音が響き渡りました。



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