episode17『世界の秒針が止まる時』
episode17
『世界の秒針が止まる時』
[part1]
ノーチェ「5000……G……」
メンティラは微笑む。
ノーチェ、長考タイムッ!
ノーチェ「(いやいやいやいや!!?円で50万だぞ!?今の借金の返済でまだ3980G+18G……)」
ノーチェ「(こんなの……!今までの働きがバカらしくなるレベルッ!!)」
ノーチェは目が泳ぎまくる。
ノーチェ「(しかしッ!これは闇金!黒すぎる金!僕が受けた20Gというクソみたいな(←失礼)依頼のほうが圧倒的ホワイト!!)」
メンティラは笑みを浮かびながらノーチェを見続ける。どこか反応を確認しているようだ。
ノーチェ「(黒い金に◯社みたいな魔族……!そもそも僕は組織もないし、魔族ですらない!)」
ノーチェ「(だが魔族ではない証明はどうすれば!?……人間に装って?いや!無理だ!脈がない(実体がない)時点で即バレする!)」
するとメンティラは……。
メンティラ「そう……それじゃ条件を変えるけど……」
ノーチェ「?」
メンティラ「前金で3000G、交渉成立で6000G!更にあなたの娯楽費でプラス1000G!!計10000G!!」
ノーチェ「ハァァァァ!!?」
ノーチェッ!!脳内に甘い砂糖が回ってしまう!!
ノーチェ「(マジかよ!コイツ!!円換算で100万!10000Gってもう生活土台作れるじゃん!!)」
ノーチェ「(いやいや!確実にムツキとのコネが終わる……この金に手を出したら!!)」
ムツキとのコネ(無償)vs10000G
ファイ!!
ノーチェ「(乗るのかッ!!この船に!)」
ノーチェ「(確実に水没する絶望の船に!!!)」
ノーチェはずっと頭を抱えて長考している。その光景をメンティラはずっと観測中。
以下メンティラの心境。
メンティラ「(変……彼女がもし魔族なら……)」
メンティラ「(ここまで露骨に金に目が眩むはずない……)」
メンティラ「(私達は元来、お金は必要ない存在……何故なら人間の負の感情を餌にしてるから……)」
メンティラ「(でもそのやり方はもう時代遅れ……せいぜい本能に生きるのは生まれたての下位魔族ぐらい……上位魔族ならもっと賢い立ち回りをするはず……)」
メンティラ「(お金は手段……人間との交渉へ使うカード…………)」
メンティラ「(ワンウェイ・アローだと思ったけど……似しては容姿が整いすぎてる……中位や下位なら姿はすぐにボロがでるし)」
メンティラ「(つまり……幹部クラスでもおかしくない性質なのに……言動が矛盾している……)」
メンティラ「(この子……何者?)」
ノーチェ視点に戻る。
ノーチェ「(いやでも……ミッシングが僕が原因とバレれば……確実に魔族共は僕を確保して利用に走る!そして魔族達は組織を持ち、多分、思想……理念が違う)」
ノーチェ「(つまり……ミッシングがバレれば……抗争……戦争や……!)」
ノーチェ「(反◯にはなりたくない……でも金欲しいッ!でもそれじゃムツキコネ……!奇跡のムツキコネが……!!?)」
ノーチェは色んなものを天秤にかける。金かコネか……それともゴネか……!
まるで世界の秒針が止まったかの如く……ノーチェは限られた時間で長考する。
先に動いたのはメンティラだった。
メンティラ「いいわ……」
ノーチェ「?」
メンティラはコーヒー牛乳パックを公園のゴミ箱に捨てる。
メンティラ「……招待する」
ノーチェ「招待……?」
メンティラは歩き始めた。
メンティラ「ついて来て?」
ノーチェは困惑中。メンティラはため息。
メンティラ「ま、来なくてもいいけど……」
彼女はコートにポケットを突っ込む。
メンティラ「そん時はこっちも『対応する』けどね……」
ノーチェ「(あっ)」
ノーチェ「(これ、拒否れないパターンだ……)」
[part2]
19:01。
メンティラは街の端である防壁まで移動する。ノーチェも続けて行動。すると門番が……。
門番「メンティラ?こんな夜に散歩かい?」
メンティラはニコッと笑う。
メンティラ「ええ!夜の高原が見たくてね!」
門番「ああ、気をつけなよ?」
門番は簡単にドアを開けた。
ノーチェ「(あーあ。気づいてねー)」
ノーチェは人間の無能っぷりに呆れていた。
星空が美しく、遠くを見渡せる高原に2人はたどり着く。
ノーチェ「あのー招待はー?」
メンティラ「これからよ……」
メンティラが空気に手をかざすと高原に大規模な図書館が出現する。
メンティラは図書館の入口を開ける。ぎっしりと重いドアだ。
室内には誰もいない。かなり大規模な構造で吹き抜けになっている。本は何冊あるのだろうか?
ノーチェ「この本はどこから?」
ノーチェは仕入先を尋ねる。メンティラはポケットに手を突っ込むんだまま。
メンティラ「これは私の私物じゃないよ?」
ノーチェ「え?じゃあ誰の……?」
するとメンティラは声を上げた。
メンティラ「セレブロ!まーた寝てる?」
図書館からは返答はない。
ノーチェ「セレブロ?誰それ?」
メンティラ「この図書館の館長で……大賢者」
彼女は奥に進むと円型のカウンターの中に机に伏して寝ている少女がいた。
白髪に虹色のメッシュが入った小柄の少女。年齢は15歳ぐらいか。耳が尖っている。エルフだろうとノーチェは推測した。
メンティラ「セレブロー?」
セレブロ「zzz」
起きる気配がない。メンティラはため息をして、空間から通貨(しかも札束)を机にそっと置く。
セレブロ「……!?」
彼女は条件反射のようにムクッと起き上がりすぐに札束を掴み、自身のアイテムボックスにぶち込む!
ノーチェ「(早い!でもちょっと欲し……いや!なんでもない!)」
セレブロは涼しい顔でメンティラを見つめる。
セレブロ「頂きます……」
メンティラ「ホント、お金の匂いに敏感ね……さっきのは今月のアガリ……」
セレブロ「助かります……ではご自由にこの施設を閲覧してください」
ノーチェ「…………ん?どゆこと?メンティラは組織に上納金……あ、いや!利益を回しているんじゃ?」
メンティラはその辺の椅子に座りながら話す。
メンティラ「もちろん。それもやってる。さっきは私のポケットマネー」
ノーチェ「ポケットマネー?つまりこの賢者との関係性は……個人的」
メンティラはニヤリと笑う。
メンティラ「察しがいいじゃない……」
彼女は説明を始める。
メンティラ「この図書館を利用して情報を得る→私の能力、人の心に記憶を受け付ける。それが情報屋の正体。組織が私の高く評価してるのもそーゆーからくり」
ノーチェはとある疑問が浮かんだ。
ノーチェ「それって……その情報網の源流……組織は知らない?」
するとメンティラは不敵な笑みを浮かべる。
メンティラ「……さぁ?」
セレブロはノーチェの方に首を向けた。
セレブロ「ノーチェさん……レベル5、冒険者ランクE……の方ですね」
ノーチェ「…………うん」
セレブロ「……この世界の種族は人間、人間の亜人、動物、動物からの魔物、そして魔族……あとは竜ぐらいでしょうか……」
ノーチェ「そうなんだ……」
セレブロは一瞬コクっと俯いたが(眠そう)、すぐに姿勢を正した。
セレブロ「検索能力の結果、あなたの性質はどのカテゴリーにも入りませんでした。つまり、この図書館の本全てにあなたに近い性質を持つ情報がありません」
ノーチェ「(わー……なんか雲行きが怪しくなってきたぞ……)」
メンティラ「……やっぱり……」
メンティラは確信した。
ノーチェは本について質問する。
ノーチェ「本ってどうやって手に入れた?」
セレブロ「1000000G……」
ノーチェ「え?」
セレブロ「その答えはそれぐらいの対価が必要です」
ノーチェ「(1000000G……円換算だと……1億円!?)」
ノーチェ「(いや……彼女……!相当な守銭奴だぞ!!?)」
メンティラはセレブロに声をかける。
メンティラ「でもレベル5、戦闘経験は乏しい……ふーむ、それもフェイクかもね」
ノーチェ「(いやいや、能力はフェイクではない!……が魔力ONモードなら話は変わる……)」
メンティラとセレブロの2人が長考している。
ノーチェはもう逃げようか考えてる最中だった。セレブロが口を開いた。
セレブロ「例の現象……あの時も同じ……」
ノーチェ「……!」
ノーチェは滅茶苦茶一般ピープルを装って質問。
ノーチェ「現象ってナニソレ?」
セレブロ「100000G」
ノーチェ「は?」
セレブロ「知るには対価が必要です……」
ノーチェ「…………」
ノーチェ「(知ってるわ……アレしか無いだろ!)(←ミッシングのこと)」
メンティラがセレブロの述べた現象について声を上げる。
メンティラ「ねー……もう、魔族も国も一斉にその話題なのよねー」
ノーチェ「(う、うわー)」
ノーチェ「(結構、詰められてるぞぉー!)」
セレブロ「しかし、ノーチェさんとの関係性はわかりません……よって紐づけるのは判断が早すぎます」
ノーチェ「(だよなー!)」
メンティラは顎に手を当てる。
メンティラ「……そもそもあの現象は魔力が検知されてないのよ。ノーチェが強力な魔法使い(メイジ)なら魔力の痕跡がわかるはずなんだけど……」
ノーチェ「(純魔法って魔力検知されないの!?マジか!だから誰も異変に気づかないのと純魔法でレベル上げができないのか!?)」
ノーチェ「(その結果が原因不明の消失……つまりミッシング……)」
一同「…………」
セレブロが口を開いた。
セレブロ「21:00です。閉館です」
ノーチェ「へ?」
セレブロ「この件は保留にしましょう……閉館です」
メンティラはやれやれとため息をする。
メンティラ「そこは譲らないのね……」
そして図書館から追い出される2人。辺りは漆黒の闇になった高原。ノーチェとメンティラはポツンと取り残される。
メンティラ「帰るわ!」
ノーチェ「え?僕に情報開示したけど……大丈夫なのか?」
メンティラは笑う。
メンティラ「へーき、今まで不利になることはなかったから」
ノーチェ「あ」
ノーチェ……察した。
episode17
END




