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我ラスボスなりや

「まって、楓の弟って、え主人公椿くん?」

「うん」

 

 うんって


 

「なんでもっと早く言ってくれないの!」

 「だって聞かれなかったし」



 なんだよそのテンプレみたいな言い訳。聞かれなくても言えよ!

 

「それにさ」

「なに?」

「そんなことは多分絶対ありえないと思うんだけど」

「うん、なに?」

「万が一、奥が一にもそんなことがあったら私悲し過ぎて死んじゃうと思うからさ」

「だから、なに?」

 

 焦らしてくる楓に少しイラつきつつ急かす。

 

「私のせいで樹ちゃんがラスボスやめたら嫌だなって」

「何言って」

 

 何言ってるのと言おうとして気づいた。

 そういやあれじゃん、主人公の家族って、私が皆殺しにするんじゃん。

 

 あれ? ってことはつまり、

 

「つまり、楓も死ぬってこと?」

「うん。樹ちゃんに殺される」

 

 あっけらかんと言い放った楓の言葉と同時に、私の頭は急速に回転し出す。

 

 私が楓を殺す。私が楓を殺すってことは楓が死ぬってことで、えーとだから、えーっと、


 

「やばくね?」

「やばいよね!」

 

 だよね? だって親友を手にかけるとかいくらなんでも私抵抗あるし、楓だって私に殺されたくはないと思っ

 

「推しに殺されるとかマジでやばい! 最高!」

「嘘だろお前正気か?!」

「めちゃくちゃ正気だよ。素晴らしいくらいにね!」

「だめだデフォで狂ってるんだこいつ」

 

 殺されるってなって喜ぶとかマジかよこいつ頭いかれてる。流石にいくら最推しでも殺されるのは嫌だろう普通は。ていうかそもそも、

 

「私が嫌だよ、楓を殺すの」

 

 主人公の家族を殺すのは私。なら、私が殺さなければ楓は死なないはず。


 

『悪いがご主人、それは出来ない相談だ』

「なんでよ」

 

 今まで黙りこくっていた腕のシミが突然喋り出した。私は反射で反論する。

 

「楓を殺さなくても、他の人殺して他の契約種取り込めばいいじゃん」

『無理だ』

「なんでよ」

『変えがきかないからだ』

「はぁ?」

 

 さっきからハクビの言ってることが理解できない。

 

『その主人公と契約するやつは俺と同じだ』

「同じ?」

 

 一体何が?

 

『契約種じゃない。さらに上位の存在だ』

「え」

「えぇえええー!」

「うっるさ」


 

 楓の叫び声に思わず顔を顰める。声量どうなってるんだよスピーカーか? 体内にスピーカー内蔵してんのか?

 

「いやぁ、さすが主人公。そこんじょそこらの契約種とは訳が違うと思ってたけどまさか契約種上位互換と契約しているとは。うん。さすが主人公」

「他人事みたいに言ってるけどあんたの弟だからね?」

 

 主人公じゃなくて椿って呼んでやれよ。

 

「で、それが楓を殺すこととどう繋がるわけ」

 

 興奮している楓を横目に、少し冷静さを取り戻して私はハクビに問いかける。

 

『俺と同じ上位の存在はまだいくつか存在する。そいつらと契約をかわしご主人に従属させることが、ご主人が力を取り戻すために最も大切なことだからだ』

 

 ハクビと、主人公が契約する存在、それ以外にもなんかヤバそうなやつがいくつもいるのか。ラスボスの私以下で世間一般の契約種以上の能力。

 

 なるほど、つまり

 

「中ボスってことね」

『ちゅうぼす……』

「っかわ……!!」

 

 ハクビのひらがな発音に胸を押さえて倒れ込む楓。

 

 どこかで見たなこの光景。


 

「その中ボスたちが大切なピースってことはわかった。それで、続きは? なんで楓殺さなきゃなんないの」

『あぁ』

 

 まだ中ボスの言葉の意味を飲み込めていないようなハクビだったが、私の言葉で説明を再開する。

 

『もともとは、契約種を取り込み、力をつけてからそいつらを探そうと思っていた。だが、あいつらの気配は未登録契約種以上に探りにくい。だから居場所がわかっているのであればさっさと誰かと契約させて居場所を確定させておきたい』

 

 なるほど。

 

「でもじゃあ、私が契約しちゃえばいいんじゃないの?」

 

 それが一番手っ取り早そうだけど。


 

『無理だ』

「まぁ、ですよね」


 

 そう簡単にはいきませんよね知ってた。

 

『ご主人は契約種と契約する方法を知っているか?』

 

 唐突な質問に少し驚く。

 

「そりゃ知ってるよ。契約種ボコボコにして無理やり契約するか、何かを代償に契約をするかの二択だよね」

『そうだ。では問うがご主人、今のあなたに俺と同等の強さの存在をボコボコにできる力はあるか?』

「ないですね」

 

 契約していない状態の契約種って、危険を感知すると防衛本能が働いて自我失って暴走状態になるらしいし。

 

『代償として何か捧げられるものは?』

「……ないですね」

 

 すでに四肢失っちゃってますからね。捧げるものなんてこれっぽっちもないですからねぇ。


 ていうか逆に返してほしいくらいなんですけどねぇ!


 

『だから契約種を取り込み、力をつけてから探しに行く予定だったんだ』

「あーなるほど」

 

 点と点がだんだんつながってきたね。でもここで新たな点が発生。

 

「じゃあなんでハクビとは契約できたの?」

 

 私ハクビのことボコボコにした記憶ないけども?

 

『代償を払ったからだ、ご主人』

「ほう?」

 

 代償? でも、あの時四肢がなくなったのはハクビのせいじゃないし、私何か献上したか?


 

『ご主人が俺に払った代償は四肢を動かす権利だ』

 

「……え?」

 

 

 そんな権利あげた覚えないけど?? いや、待てよそういえばあの時、あの謎空間でハクビと話した時、

 

 

 ――――ご主人は代償を払った


 

 っとかなんとか言ってたなぁ! 動揺してて思いっきり聞き流してたわ。

 

「でも私今自由に手足動かせるけど?」

『それは俺が合わせてやっているだけだ。その気になれば俺はいつでもお前の首をこの手で絞め殺すこともできる』

「まじかよ」

 

 こっわ。かなりの代償支払ってんな私。

 

『まぁ、そういうわけだ。四肢の制御権はどの代償がなければ俺たちとは契約できない。今ご主人に残っているものでそのレベルの価値があるものは、脳か心臓だが』

 「いやあげれないでしょ死ぬじゃん」

 

 代償払った瞬間死ぬとか笑えないから。

 

『つまり、そういうことだ』

 

 今の私では中ボスと契約できないと。

 そして、この流れでなんとなくわかったなぁ。主人公の家族皆殺しにする訳。

 

「……ねぇ」

 

 これが最後の足掻き。楓を殺さないための最後の代替案だ。


 

「楓が主人公になるんじゃだめなの?」


 

 

 楓以外を殺して、楓を主人公にすればいいんじゃないの。


 

 

「あー。それは無理かな」

 

 答えたのはハクビではなく楓。

 

「私はだめなんだよ。家族を家族と思ない。椿のことも、弟じゃなくて主人公って認識だし、お父さんとお母さんも、物語序盤で死ぬ主人公の家族って認識だから」

 

 そうか。楓にとってこの世界はただの物語に過ぎないのか。だから、


 

「私にとって家族は価値が低い。支払う代償としては不十分だと思うよ」


 

 もう、逃げ道は無くなった。私は楓を殺さなきゃならなくなった。世界を救うため、そして私自身が生きるため、そして……


 

「樹ちゃん、ラスボスになってよ。私ラスボスの風坂樹が大好きだからさ」


 

 ラスボスになるために。


 

「……楓」

「なに? 樹ちゃん」

 

 高一の時から3年間、ずっと仲良くしてきた。恥ずかしくて口にしたことはないけど、間違いなく親友だと思ってる。


 

「帰り、クレープ付き合ってよ」

「もちろん! 樹ちゃんからお誘いなんて珍しいね」

「たまにはいいでしょ」





 

 今日がきっと、最後になるだろうから。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

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