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衝撃の告白その2

「……三人殺してまだ一体も吸収できてないんだけど」


 

 放課後の空き教室。こぼした愚痴に、自分で思わずちょっと引いてしまう。

 

 一般的な女子高生が言う愚痴じゃねぇなこれ。バイオレンスすぎるだろ。

 

『仕方ないだろう。登録済みの契約種を狙うのであれば複数契約者がいるのは当たり前だ。強い悪魔であればあるほど契約者の数は多い』

 

 その言葉にはぁっとため息が漏れる。腕から頭に響く声のトーンが少し上がった。

 

『どうした。殺すのがいやになったか』

 

 一週間過ごしてきたから分かる。このちょっと高めの声は私を煽ってきてる時のものだ。

 

「一応言っとくけど、ハクビが思ってるような理由でじゃないからね」

 

 煽りにそのまま頷くのが癪だったので軽く否定しておく。

 

『そうか? 殺すのに疲れたという理由だと思ったが』

「いや、それはそうだけどね」

『やっぱりそうじゃないか。まぁ、一週間に3人は精神的にもくるだろうな』

「だから違くて」

『何がだ?』

「疲れたんだよね」

『精神的にだろう?』

 

「いや肉体的に」


 

 精神は普通に通常運転です。

 

 私の言葉に呆れたように腕が沈黙する。


 

『…………はぁ?』


 沈黙の後に漏れた声も呆れを多く含んでいた。

 

「だってさぁ! 毎回殺すの夜中だよ? 次の日授業あるのに夜中に起きてさ、結構ハードな運動して、帰ってきてさぁ……」


 

 あと何よりもつらいのが……

 

「風呂掃除マジでめんどい」

 

 返り血ビッショビショの体洗って真っ赤っかのお風呂擦る時間が一番虚無。普通に眠いし。でもかと言って放置したら次の日とんでもない鉄の匂いとどす黒い赤に塗れてお風呂入ることになるし。


 

『…………どうやら俺はお前への認識を改める必要があるみたいだな』

「どういうこと?」

 

 ため息をつかんばかりのハクビはその声のまま続けた。

 

『もっと人間らしくなっていると思ったんだが』

 

 なんだその私が人でなしみたいな言い方。

 

「私は人間ですけど?」

『ガワはな。中身は違う』

「え、私人間じゃないの……?」

 

 衝撃の事実。最近こういうこと多すぎて反応薄くなってきた気がする。

 

『言ったろ。ご主人はこの世界で最上位の存在だ。人間如がそんな存在になれるわけないだろう』

「あぁ、そういやそんなこと言ってたね」

 

 なんかそこらへんもあんまし理解できてないけど。脳の処理速度を超えて衝撃情報ポンポン入ってきてるからなぁ。一々細かいとこまで理解してられないよね。

 

『だが、ご主人は今まで人として過ごしてきた。故にもっと人間に染まっていると思っていたが、俺が間違いだったようだ』

「……というと?」

『ご主人にとっての人間の価値は昔と変わっていない。ご主人にとって人間はただの塵芥に等しいということだ』


 いやいやまてまて。


 「そんなこと思ってないけど?!」

 

 命と塵芥が同等なわけあるかい。そこまで薄情じゃないから私。

 

『だが、そうでなくてはおかしいだろ? なぜなんの躊躇いもなく人を殺せる?』

「だからそれは、世界を救うためでしょうよ。結局人の命は平等なんだから、数が多い方をとってるだけで」

『そういうところだ』

 

 え、なにが?

 

『ご主人にとっての人間の命は量で推し量れる程度のものだということだ』

「程度って、量は大事な判断材料でしょ」

 

『……そうだな。そういうことにしておこうか』

 

 なんか、嫌なまとめ方されたなぁ。だんだんラスボスになっていってる気がするよ。いや、三人殺した時点でもうすでに悪者であることには変わりないんだけども。

 

「ていうか、今吸収しようとしてる契約種の能力ってなんなの」

 

 視線を腕から上げて、隣にやる。


 

「楓?」

「あ、はい何ごめん」

『何を惚けているんだ』

 

 頬杖をついてぼーっとこちらをみていた楓がにぱっと笑った。

 

「推しが尊いなぁと思って」

「もういいってそれ」

 

 目が怖いのよ目が。そのまっすぐこっち見てくる目の奥が。

 

「で、契約種の能力は?」

「んー。特に描写はされてなかったかな。精霊じゃなくて悪魔ではあるらしいけど」

 

 どうでもいいなその情報。

 

「てかそもそも悪魔と精霊の違いって何?」

 

 呼び方違うけどたいして変わんないよね。

 

『一応言っておくがご主人、悪魔と精霊は全くの別物だぞ』

「「え、そうなの」」


 

 ……ん?

 

「楓も違い知らないの?」

「うん。あーいや、多少の違いはわかるよ? 悪魔の能力は身体強化とか実態化とかで、精霊はなんか超能力系でしょ。でも、根本的な違いは描写されてなかったなぁ」

「またそれかい」

 

 描写されてないこと多過ぎやしないか?

 

「でも、そっか。じゃあやっぱり主人公って異質だったんだなぁ」

「なんでここで主人公?」

 

 今関係なくない?


 

「いやぁ、主人公が契約してた契約種がさ、()()()()()()()()()()って言われてて」

 

 

『……おい』

 

 地を這うような声が響いた。地獄の底から聞こえたかのような、静かに燃える炎のような。

 いや、実際は私の腕から聞こえているんだが。

 

『その主人公ってのはどこのどいつだ』

 

 なんか、すごい……。


 

「めっちゃキレてね?」

 

 なんでそんな怒ってるの? 怖いんだけど。ほら、楓も心なしかびっくりして……、


 

「ほわぁ」


 

 なかったわ。耳抑えてうっとりしてるわ。なんなんだよこいつ空気読めよ今そんな雰囲気じゃないじゃん。真面目な感じじゃん。

 

『おい、ガキ』

「あ、はいごめんなさい。主人公の情報ですよね」

 

 なんとか正気に戻った楓が居住まいを正す。

 そういや確かに、主人公が誰かまだ聞いてなかったな。私が家族皆殺しにしちゃうらしい可哀想な主人公の名前は果たしてどんなものなのだろうか。

 

 

「彼の名前は赤桐椿」


 

 

 …………ん? 赤桐??

 

 

「私の弟ですね」




 

 おいおい勘弁してくれって。

 


 

 

 

 


 

 

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