捨て子
ミリア目線で話が進みます。
あの出来事から早二年。
私は十九歳になった。
あの出来事で、兄を、私が好きだった人をなくしてしまった。
あのときから私の心は空っぽのままだ。
『迷宮化』、私たちが体験したあの事件はそう呼ばれるようになった。
安易な名前ではあるがそれだからこそ、王国に住む民には恐怖の種が植え付けられた。
いつどこでどんな条件でそうなるのかまだ知らないことばかりで不安が増していくばかりの王国。
私の人生は、暗く沈んでいた。
でも、今は新しい街にも慣れそして、私は先生になりました。
先生と言っても。学校に行くのではなく家で教えるような形で先生をしていた。
子供たちの笑顔のおかげで最初に比べればずいぶんと良くなっていた。
(あぁ、教師になってよかった。)
昔、
ミリアは、教え方が上手だ。といつもお母さんたちから褒められてこの職業に興味をもった。
今も教え子の母親に「先生は教えるのがお上手。」と褒められている。
今日は、仕事もないので買い物をすることにした。
買い物をしているとやはり思い出してしまう。
はじめはあの街で兄と二人で買い物をし、しばらくして兄が連れてきた私の憧れの人も加わり三人で買い物をしていたそんな日々。
ミリアは悲しくなり、
(今日は家で休もう。)
と思った。
買い物からの帰り道。私は何か気持ちを和らげてくれるものはないか探すために森付近に行き、少し遠回りをしていた。
(小鳥たちの鳴き声は可愛らしいなぁ。)
私の気分は、ほんの少しだけ明るくなった。
小鳥の他にも何かいないか探していると……腕で抱きか帰れるくらいの大きさの布があった。
(んっ!布?)
私は、怪しく思い謎の物体近づく。
もぞもぞっ!
(布が動いた!)
ますます怪しく不気味な布。もうよして帰ろうと思ったそのとき。
「うぎゃぁぁ。」
赤ん坊の鳴き声がした。
場所は、あの不思議な布の中からだ。
ミリアは布をめくった。どうやら捨て子のようだ。
まだ顔などはフード付きベビー服によって見えないがすぐに捨て子だと分かった。
「かわいそうに。捨てられたのね。家に連れていきましょう。」
ミリアはそう言うと赤ん坊を抱えた。
その時赤ん坊からフードが外れる。
ミリアは目を見開き驚く。
赤ん坊の顔に理由はあった。
赤ん坊は生後どれくらいだろう。まだ顔は成長と共に変化する。
この赤ん坊の顔は鼻は高くなく、目は黒いまた髪も黒い。
まるで…まるであの人のようだ。
ミリアは思った。
初めて会って半年しか一緒にいられなかった彼に。
そう、
笹木和樹に似ていると。




