表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

14:わたしの疑問

 森の中は冷たい空気、ツンとしている空気に満たされていた。でもやっぱり、曇天のせいか、あるいはアルムテよりもずっと北方の、最果ての森のためか、少し寒くなって来た。ルカスが気を配ったように、革のマントを買っておいて良かった。わたしは首元まで、マントをかき抱く。ルカスはずっと旅慣れているためか、

『マントなんて着られるか。剣を抜く邪魔になるだけだ』

と言い、今までと同じ服装をしている。時折胸元の、青い宝石のペンダントが身を覗かせた。ルカスのお守りらしいけど、詳しいことは聞いていない。何か、魔道を封じたお守りなのかしら?

 いつか訊いてみようと思いながら、キッポ、ルカス、わたしの順で、だいぶ森の深くへ入って来た。小動物たちが時々、キッポじゃなくわたしとルカス、『人間』に驚いて姿を見せ、慌てて木々へと消えて行く。そっか。冬支度をもう、始めてるんだ。

 そう言えば。

 わたしは不意に疑問を抱いた。どうしてチップルは、キッポが探そうとしている、そして手に入れようとしている、『薫り高き宝珠』の存在を知っていたのかしら? 魔道士が口に出したのは、チップルから聞いていたためだと思うけど……。

 『どうしてチップルが知っていたのか』

 何か解せない。キッポはあの時、一度も自分からは言わなかった。それなのに、チップルの方から言って来た。何か。――何かとてつもない重要なことを、わたしたちは忘れているような気がする。忘れちゃいけないこと。何だったろう? 懸命に記憶の糸を手繰る。何かある。思い出さなきゃいけない何かが。

 確か、チップルはこう言ってた。

『今のうちにいろんな経験を積んで、『薫り高き宝珠』を手にしてください。それを私たちは待っています』

と。

 『私』じゃないんだわ。『私たち』が待っているって。チップルの正体。ルカスがつかんだ手がかり。そう。色の黒いフォクスリングは『死を弄ぶ者たち』だと言うこと。――彼らの本当の目標。それはキッポじゃなくて、『薫り高き宝珠』なのかもしれない。もちろん、

『経験を積んだキッポ』

も含まれるだろうけど……。何かを見落としている。一番大切な何かを。

「キッポ。森のことばは聞こえるのか?」

 わたしの取り留めない夢想は、ルカスの声で破られた。そうよ。しっかりしなさい、リムノ。今はそんなことを考えてないで、行動に集中するの! 『危険だ』って言われていたじゃない!

「うん。葉っぱがさっき教えてくれた。もうちょっと西の方だって」

「危険は無いのか?」

 キッポは視線を落とす。

「分からない。でもみんな、『怖い。痛い。助けて』って言ってるよ。急いだ方がいいと思う」

「近いんだな? よし、急ごう。そうだ、リムノ。前みたいにならないよう、守りの魔道、使えたらかけておいてくれないか?」

 わたしはうなずく。

「わたしもそう思ってたわ。白魔道に、『不可視鎧インヴィジュアルメイル』があるの。相手の攻撃が当りにくくなるから。心理・精神系のためにも、『守護盾(カウンターシールド)』もかけておくわね。『精神崩落(マインドブラスタ)』とかをかけられても、大丈夫なように。あとは……」

 防御だけじゃなく、攻撃系も。

「これは初めて使う魔道なんだけど。――『武器高攻(ウェポンマキシム)』も。相手に武器が当りやすくなるはずよ」

 わたしは、今出来る限りの魔道を使って、防御と攻撃を万全とまでは行かないまでも、高めておいた。これならルカスとキッポの攻撃も、力が増すというもの。わたしは魔道のの額冠にに手を当ててみた。少しだけ熱い。もしこの先、危険があったら、この前みたいにリミッターカットされるのかしら? そんな事態は避けたいけど……。でも、チップルがどんな動きを見せるか分からない。わたしも覚悟を決めておかなきゃ。

「ありがとう、リムノ。ハルバードが軽くなった気がする」

「そうだな。今まで以上に動体視力が高まった感じだ」

 キッポとルカスが言った。

「わたしが高められるのはここまで。額冠がリミッターカットされたら、もっと高度な魔道を使えるかもしれないけど、今はこれで限界よ。――頼むわね。わたしも攻撃系の魔道を使う覚悟は、出来ているから」

「分かった。オレには扱えない部類だ。信じてる」

 ルカスとキッポは、真剣な面持ちでうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ