失ったもの
「歌えない!!」
「何を馬鹿な事を、こうして話しているじゃないか?声が出ないわけないだろう?」
公爵は笑い飛ばす。
「声じゃないの……歌声が……」
「そんな馬鹿な!歌ってみなさい!クローディア!!」
公爵の怒鳴り声が響く。
「…………。」
「クローディア!!悪い冗談はやめなさい!」
母もそういうがクローディアの口から歌声は出なかった。
「…………クローディア。」
父は絶望した。そこに彼女がやって来る。
「お姉様!」
「み、ミィディー?!引きこもっていたはずじゃ……」
「お姉様が魔獣に襲われたと聞いてかけつけましたの!」
「!?」
「お姉様?お父様もお母様も、顔色が優れませんわよ?何かあったのですか?」
「それが……クローディアの歌声が……」
「クローディアの歌声が奪われたのよ。」
父も母も絶望しながらそう言った。
「ミィディー、貴方。誰から聞いたの?」
「?なんの事ですの?」
「とぼけないで!!なんで魔獣に襲われたと知っているのよ?!あの香水は何だったの?!答えなさい!!」
「お姉様!私は何も……」
「嘘よ!貴方ならリーデルファイト伯爵の封蝋をゴミ箱から取っておく事ができるわ!」
「嫌だ、お姉様。私がゴミ漁りなんてするはずなくてよ?」
「嘘よ!!嘘っ!……!?」
「黙らないか!」
父は怒鳴りながらクローディアをぶった。
「……お父、様!?」
「雨師でない女など人でないわ!!こうなったら妹のミィディーに大会に出てもらう!!クローディア!お前はこれから死んだものとする!!分かったな!!」
「そん、な……」
ミィディーはそれを聞いてほくそ笑んだ。数日後クローディアは退院した。だが……。
「クローディア。」
「…………」
「クローディア、いつまで塞ぎ込んでるの?」
「お母様……」
「そうよ、お姉様!元気を出して?うふふふふ。」
「ミィディー……!」
「あら怖い、睨まないでくださいません?ふふふふふふ。」
「クローディア、いつまでもミィディーをせめてないでこれからどうするか考え……」
母が妹のミィディーを庇うような言い方がクローディアには気に入らなかった。端的に言うとクローディアはキレた。
「黙ってください!お母様には関係ありません!!」
「クローディア!」
「2人に、死んだものと言われた私の心の内など分かるはずがありませんわ!!」
そう言ってクローディアは部屋へと籠もりにいった。ミィディーはクローディアが絶望する姿に歓喜していた。
「クローディア様、第1王子がお見えです。」
「…………ウィム様が?」
クローディアは嫌な予感がした。クローディアは恐る恐る、ウィムのいる応接間へと向かう。
「ウィム様、お待たせしました。本日はなんの御用でしょうか?」
「クローディア、…………君との婚約を破棄しに来た。」
「え……?」
「では……」
そのまま出入口へと向かおうとするウィムをクローディアは止めた。
「お待ちください!どういうことです?!婚約破棄?!」
「…………そのままの意味だが?」
「どうして?!どうしてです?!」
「お前は歌えなくなったそうだな。だから公爵から婚約を破棄したいと連絡があった。」
「そ、そんな……」
「俺としては婚約破棄はしたくはない。だが、……歌えなくなったお前を婚約者にして置けないと大臣達も言っているんだ。すまない。」
「ウィム様……」
「そういうことだから。じゃあ。」
「ウィム様?!ウィム様?!…………そんな!?」
去ってゆくウィム。クローディアの声だけが、その場にこだましていた。
「ミィディー!!」
「お姉様?」
「そんなにお急ぎでどうされたの?」
「貴方のせいで……」
「あ、そうだわ!言い忘れておりました!お姉様!私、ウィム様と婚約する事になりましたの!お祝いしてくださる?」
「………………え?」
クローディアは目の前が真っ暗になった。その場に倒れ込む。
「お姉様?!誰か!誰か来て!お姉様が!!ふふふっ」
ミィディーは誰かを呼びながら思わず笑っていた。
クローディアの意思はそこで途絶えた。




