ななの過去
「ここまでくれば……はあ、はあ。」
ななが来た場所は複数の魔獣が闊歩する危険地帯だった。ななは思う。もう死のうと……。
「最後に会いたかったかも……」
もちろん心に浮かぶのはクラウスその人である。
「あの日、出会わなければ、良かった、……」
クラウスとななが出会ったのは7年前である。まだこの地区が危険地域ではなかった時である。ななは普通の農民の少女だった。
「ママ!」
「なな。」
「見てみて!魔獣ごっこ!どしんっどしんっ!」
「こら!そんな事してたら本当に魔獣が出てきちゃうわよ?」
「大丈夫だよ!魔剣使いが助けてくれるもん!」
「そうかもしれないけど……」
「ははっ!ななは魔剣使いが大好きだな!」
「パパ!」
「ななは怖いものしらずだな!将来いい魔剣使いになるさ!」
「えへへ!」
なんてどこにでもある魔剣使いに憧れるただの少女だった。
そんな彼女の運命が反転するのはなな10歳の時である。そいつはきた。どしんっどしんっと地響きが鳴る。
「ぐああああ!!」
雄叫びと共に現れたのは魔獣だ。ななの住んでいる地区まで魔獣の魔の手が迫る。その理由は簡単だった。より強い魔獣が現れ、縄張り争いが始まり、そして、ななの住んでいる地区まで魔獣が縄張りを求め、闊歩するようになってしまったのだ。その日は来る。
「ママー!パパー!……どこ?」
どしんっ。
「はっ!?」
ななは咄嗟に小屋に隠れた。 そいつは真っ赤だった。村人達の血で真っ赤に染まっていた。ななは息を殺す。
「助けて……」
そう願う。その時である。何かがみえた。
「まま……?」
髪の長い死体を魔獣が食っていた。
「嘘だ……」
ななは嘘だと思いたかった。嫌だ嫌だ嫌だ!誰か!魔獣使いが助けてくれる!そう思った。だが、魔剣使い達は直ぐにこなかった。別の地区に魔獣狩りに行っていた為だった。魔獣は死体をバリバリと食べる。ななの目から涙がこぼれた。そして、逃げ遅れた男性がなんとか逃げようと走り回っていた。
「ぱ……ぱ?」
それは父親だった。父親は母親とななの名を叫びながら探して逃げていた。
「ぱっ……」
遅かった。父親は魔獣に踏みつぶされる。
「ぱ…………」
どうして、どうして誰も助けてくれないの?!魔剣使いは?!ななは絶望していた。そして、遂に、ななの隠れていた小屋に魔獣の足が向かってくる。ななは死を覚悟した。グシャと音がした。
「あ、ああ……」
「逃げろ、小娘。」
そこに現れたのはクラウスだった。クラウスは魔剣で魔獣の眼を潰していたのだ。しかし、魔獣には逃げられた。
「ま、剣……使い?」
なんとか保護されて助かったなな。だが、そのショックは大きかった。そんな、ななを助けたクラウスに出会った瞬間彼女は恋をした。彼女にとって彼は救いの神であり一目惚れした相手だったのだ。故に、故に今会いたいと思うなな。だが、同時にあの日、出会いたくはなかった。そう、平和だったなら出会うことは無かったからだ。
「ここで、死ねるなら……」
そこは故郷だった。ななは最後の場所を故郷で迎えようとしていた。
「クラウスに嫌われちゃったし、生きてても仕方ないし……」
ななは魔剣を手に取った。
「死に場所にはちょうどいい!」




