王子の心配
「ららーらー」
「こら!何歌ってるの!サボってないで真面目に掃除しなさい!」
「も、申し訳ありません!」
この日、主人公のリリスは城の窓拭きをしていた。
「だからそう言っただろ!?」
すると、どこからともなく第1王子ウィムの怒鳴り声が、響き渡った。
「クローディアが軍人?!そんなの認められない!!」
「ですが……」
ウィムは使用人に怒鳴っていた。
「俺がゼストなど預けたばかりに……こんな……」
「良かったではありませんか?王子?」
「!叔母上……」
「貴方にとってあの娘は重荷でしか無かった。婚約解消は好機と捉えるべきですわ。」
「俺は……」
「ああ、それと、妹との婚約、これも破棄なさい。貴方には釣り合いません。」
「叔母上、これは父上からの命令です。故に公爵令嬢との婚約は破棄できない。」
「貴方には我が子のラスがお似合いだと常々思っているのだけど?」
「叔母上……」
そこに従兄弟のラスもやってきた。
「あら、嫌だお母様ったら!確かにラスとお兄ちゃんはお似合いだけどねー!」
「これ、ラス!口を慎みなさい。貴方はそういう所がダメなのですよ?」
「はーい!」
ラスは元気いっぱいにそう返事をした。
「では、私達はこれで……ごきげんよう。」
「ごきげんようー!」
「…………はぁ……」
「ウィム様、ため息をつきたい理由もわかります。ですが…」
「もし、クローディアに何かあったらどうするだ?!誰が責任をとる?!俺か?!」
「ウィム様……」
「やはり放置できない!クローディアに会いに行く!準備をしろ!」
「きょ、今日もですか?!昨日行かれたばかりで……」
「ああ!そうだ!」
「少し冷静になられた方が……」
それを窓拭きしながら聞いていたリリスも言葉を失っていた。あのクローディアが軍人になったことが信じられないなかったからだ。
「……クローディア……。」
★★★★★
「クローディア!!」
ウィムはクローディアに再び会いにきた。クローディアの部屋の扉か行き良いよく開く。
「!ウィム様?!今日もこられたのですか?」
「当たり前だろ!お前が怪我でもしたら誰が責任をとるんだ?!ゼストは返して貰おうと思う!!」
「いいえ、ゼストは返せません。」
「何を言う?!」
「今ゼストを失えば私は死にます。」
「?!」
「ゼストに心を食われた私はゼストから離れると死んでしまう。そのように感じています。」
「!?食わ、れた?!」
「はい。ゼストによって心を食われました。」
「なんて、こと、だ……。確かにゼストから離れるのは危険だ。魔剣に食われたものが魔剣から離れると死んでしまうことは伝説でもそう確かにある。」
「ですから……」
「……すまない!俺のせいで!!」
ウィムは頭を下げて謝った。
「謝る必要など……」
「俺も今日からここで暮らす!」
「お、王子?!無茶なことはやめてください!国王陛下が許されるわけがっ……!」
使用人は困った顔でそういいながらウィムをなだめる。
「うるさい!俺はっ……!」
「ダメです。」
「?!」
「ダメです!!ウィム様は王城に住んでいなければっ!世継ぎなのですから!」
「クローディア……わかった。」
「さっきから廊下にまで聞こえているぞ。」
「クラウス。すまない。」
クローディアがクラウスに謝る。
「いや、いい。気にするな。クローディア。」
「………………お前は?」
「俺はこいつの上司だ。」
「!この方は第1王子だぞ!口を慎め!下民!!」
使用人がクラウスにそう怒鳴りながら剣に手を添えた。ウィムは真面目な顔で
「いや、いい。クラウスと言ったな。聞いた事がある。この辺境の地で唯一死なずに永らえている男がいると、それがお前なのか?クラウス?」
「恐らくそうだな。無駄に生きながらえている男とは、俺の事だろう。」
「……そうか。それで」
「?」
「クローディアの上司、でいいんだな?」
「?他に何がある?」
「いや!構わんさ。気にするな。」
「王子の面倒など俺は見れんぞ?」
クラウスはそう言いながらため息を付いた。
「ウィム様……」
「わかった。また来る……。」
そのままウィムは入口へと哀愁漂う背中を見せて帰ってゆく。
「……クラウス。もしかして王子を止める為に出てきてくれたのか?」
「……偶然だ、気にするな。」
クラウスの顔には薄ら笑顔があった。
「そうか。」
「それより、クローディア。」
「?」
「仕事だ。」
「!」
新章開幕です。よろしくお願いします!




