13:始動!
冒険者ギルドの前に着くと、玄関の扉を粉砕しながら男が二人、続けざまに外へとぶっ飛んできた。
さっとライムが俺の手を引いて、ぶっ飛ぶ男の射線から外してくれた。マナルマも危ない気配を感じ取っていたようで、さっと身を引いて難なくそれを躱す。
男達は呻きながら地面に転がった。
「ぐええっ!」
「申し訳ありませんが、冒険者同士は喧嘩ご法度です。禁を破ればこのように手痛い制裁が待っておりますのでどうか今後は慎むようにお願いします」
二人の男にペコリと頭を下げるギルドの受付嬢。
姿勢を正したその顔は、冷ややかな視線を隠そうともしない、エルさんだった。
ライムに折られた脚はもうすっかり完治したようだ。魔石の交換で毎日会ってるけど、いつもカウンターに隠れて下半身は見えないから、問題なく動けてるようで少し安心した。
ただ、彼女は最初に会った頃は、こんなクールな感じじゃなかった気がするんだけどな。もっとなんていうか、声も高くて、ブリっ子してたっていうか。
「エルさん、すっかり元気そうで」
「あら、ライトニングくん。すっかりどころか、なんだか前よりも調子がいいのよ。君の寄付金のおかげで良い治療が受けられたからかもね。……今なら、そのチビだって蹴り殺せるわ」
目を吊り上げて敵意を剝き出しに、エルさんはライムを睨み付ける。
そんな彼女を敵とも思わない余裕のライム。
「あはは、その冗談最高に面白いね。笑えないところが逆に」
「チッ」
そんなやり取りをしている間に野次馬がざわざわ集まり出してきた。
「エルちゃん、なんだかキャラ変わったよなあ。一皮むけたっていうか」
「あのワイルドなエルちゃんも俺は好みだけどなあエヘヘ」
「エルさん強ええな! さすが!」
裏の顔を知らない冒険者や他のギルド職員達は、けっこう彼女を快く思っているようだ。彼女の犯行を大事にしなくてよかったよ。俺もその人望を利用させて貰えたからな。
マナルナを探す時にエルさんにもその人望を駆使して手伝って貰って、ある程度範囲を絞って探すことが出来たんだ。感謝の印に魔石でも数個あげようかなって思ったけど、二十万もあげたんだからそりゃこれくらいしてくれて当然だよなと思い留まった。
「エルさん丁度良かった。冒険者登録したいんだけど、頼めるかな」
「別にいいけど、随分と今更な話ではあるわね。心境の変化は……彼女さんが原因? いい服も着て、あんた案外見栄っ張りなんだね。昨日も必死こいて駆けずり回る姿はなかなか面白かったわよ」
マナルナに視線を向けてから察したようにエルさんは茶化すが、見当違いなので笑って受け流す。
「まあそんなとこだよ。彼女も含めて、三人でパーティーを組むことにしたんだ」
「はいはい、どうぞご勝手に。それじゃあ手続きがあるから……」
「あ、それ、エルさんが適当にやってくれない?」
「……あ?」
まあでも、言われっぱなしは癪だから、意地悪を仕返すことにした。
「いや俺達、早くパーティーの試運転がしたいんだよね。ほらこれ。昨日気になってた依頼があるんだけど、平行してそれも受理してよ。お願いね、エルさん」
「こ、このガキ……」
拳をぶるぶる震わせて憤りを露わにするけど、エルさんにこれを断ることはできない。恩に恩を重ねてしまった彼女の束縛は想像以上にきついらしい。
俺も冒険者登録を面倒くさがる理由は全然ないのだけど、また舐められて前のようなことを繰り返したくはないのだ。
「エルさん、頼むよ。ね?」
「うぐぐ……わ、分かったわよ。チッ!」
「ありがとうエルさん! それじゃ!」
結果的に、エルさんと一番最初に出会えてよかったよ。他の普通に親切な受付嬢とはこんなやり取りはできないもんな。マナルマの件でも朝まで走り回ることになったかもしれないし、エル様様だ。
そんなわけで、いざ出発。
ゴーレムの討伐へ!
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